中国の科学者が超長寿命ペロブスカイトLEDを開発 明るさ116万ニトの衝撃
中国の研究チームが、ペロブスカイトと呼ばれる新しい材料を使った発光ダイオード(LED)で、明るさと寿命の両立という長年の課題を大きく前進させました。2025年に科学誌Natureに掲載されたこの成果は、高級ディスプレイや超高輝度照明の分野で将来の実用化が期待される国際ニュースです。
研究の概要:116万ニトと18万時間のブレークスルー
この研究は、中国のUniversity of Science and Technology of ChinaのXiao Zhengguo教授が率いるチームによるものです。研究チームは、全無機ペロブスカイト薄膜に独自の工夫を加え、従来より大きな結晶粒と高い耐熱性を持つ材料を作り出しました。
その結果、このペロブスカイトLEDは、光の明るさを示す指標である輝度が116万ニトを超え、かつ理論的な動作寿命が18万時間を上回ると報告されています。発光効率も22%を超え、市場に出回る商用ディスプレイと同程度の水準に達しました。
ペロブスカイトLEDはもともと高い効率が期待されていましたが、効率を上げようとすると安定性が下がるという「トレードオフ」が大きな壁でした。今回の成果は、この技術的ボトルネックを乗り越えた点で注目されています。
どれくらい明るい?日常ディスプレイとの比較
研究によると、日常生活で使われるテレビやスマートフォンなどのディスプレイのピーク輝度は、一般的に数千ニトの範囲におさまります。これに対し、今回のペロブスカイトLEDは116万ニトという極端な明るさに到達しており、桁違いの性能だといえます。
もちろん、実際の製品として常にこの最大輝度で使われるわけではありませんが、余裕のある明るさを持つことは、屋外ディスプレイや特殊照明など、より過酷な環境での応用に有利になります。
18万時間の理論寿命とは
研究チームは、一般的な使用環境に近い明るさとして100ニト程度を想定し、その条件での理論寿命を計算しました。その結果、この新しいペロブスカイトLEDは18万時間を超えて動作しうると見積もられています。
18万時間という値は、連続点灯したと仮定すると約20年以上に相当します。商用LED製品に求められる耐久性の基準をすでに満たしているとされ、実用化に向けた大きな一歩といえます。
従来のペロブスカイトLEDが抱えていた課題
ペロブスカイトは、高い発光効率、低コスト、加工のしやすさが評価され、太陽電池やLED、光センサー(フォトディテクター)などへの応用が期待されてきた材料です。一方で、従来のペロブスカイト材料では、光を出す役割を持つ電子とホールと呼ばれる電荷が、十分に効率よく再結合できないという問題がありました。
この課題に対し、これまでの研究では、非常に小さなナノ粒子や極めて薄い層を作ることで発光効率を高める手法がよく用いられてきました。しかし、その場合はLEDとしての最大輝度を高めることが難しく、さらに寿命が数時間程度と短くなってしまうという欠点があり、実用的なディスプレイや照明への応用を妨げていました。
新しい材料設計:大きな結晶粒と高温処理
今回の研究チームは、従来とは根本的に異なるアプローチを取りました。ペロブスカイト材料の中に特定の化合物を加えたうえで、高温でのアニール(熱処理)を行うことで、新しいタイプの全無機ペロブスカイト薄膜を作製したのです。
こうして得られた薄膜は、従来よりも大きな結晶粒を持ち、内部の欠陥が少ないことが特徴です。材料内部の「並び方」がより整うことで、電子とホールが効率よく再結合しやすくなり、LEDの安定性と明るさが大きく向上したと説明されています。
その結果、このペロブスカイトLEDは22%を超える発光効率を実現しました。これは現在の商用ディスプレイ製品に匹敵する水準であり、高効率と高い安定性を同時に達成した点が、材料研究として大きな意味を持ちます。
ペロブスカイトが切り開くディスプレイと照明の未来
今回の成果についてXiao教授は、高効率と高安定性を両立したことで、今後、ハイエンドディスプレイや超高輝度照明分野での幅広い応用が期待できるとしています。
具体的には、より明るくダイナミックレンジの広いテレビやモニター、大型の屋外ディスプレイ、強い光が求められる特殊照明などで、ペロブスカイトLEDが選択肢の一つとなる可能性があります。高い輝度を持ちながら長寿命であることは、エネルギー効率の向上やメンテナンスコストの低減にもつながり得ます。
これから注目したいポイント
研究成果が科学誌で報告された段階から、実際に私たちの身の回りの製品に組み込まれるまでには、通常時間がかかります。今後の動きを見るうえで、次のような点が焦点になりそうです。
- 今回示された性能が、より大きな面積のパネルや量産プロセスでも再現できるか
- ディスプレイや照明として長期間使用したときの信頼性がどこまで確認されるか
- 既存のOLEDや無機LEDとのコストや性能のバランスがどのように評価されるか
ペロブスカイトLEDは、材料科学とエレクトロニクスの交差点にある技術です。今回、中国の研究チームが示した成果は、ディスプレイや照明のあり方を静かに変えていくかもしれません。国際ニュースとしての動きに注目しつつ、自分の身近なデバイスにもいつかこの技術が採用されるのか、長い目で見ていく価値がありそうです。
Reference(s):
cgtn.com








