空飛ぶクルマ「陸上空母」は移動をどう変えるか Zhao DeliとOwenの10年の夢 video poster
少年時代にラジコン飛行機で遊んでいた一人の少年は、いまやフライングカーを開発するテック起業家に。もう一人は戦闘機パイロットから転身し、低空経済をテーマに発信するインフルエンサーに。過去10年にわたって「空をもっと自由にしたい」という同じ夢を追い続けてきた2人が、モジュール式フライングカー『陸上空母(Land Aircraft Carrier)』の過去と未来を語ります。2025年のいま、日本語で国際ニュースやテック動向を追う私たちにとっても、移動の概念が変わるかもしれない話題です。
ラジコン少年からフライングカー起業家へ──Zhao Deliの歩み
XPeng AEROHT(エックスペン・エアロート)の創業者・Zhao Deli(ザオ・デリ)氏の原点は、地面すれすれを飛ばすラジコン飛行機でした。手のひらサイズの機体を操る感覚は、そのまま「人が乗るフライングカー」への憧れにつながっていきます。
やがて彼はテクノロジー分野で起業し、「空飛ぶクルマ」を現実のプロダクトとして形にする挑戦に踏み出しました。単なる趣味の延長ではなく、都市の移動を変えるモビリティとして捉え直した点に、テック起業家らしい視点があります。
タイトルに掲げられた Embracing Adversity(逆境を抱きしめる)という言葉は、試行錯誤を恐れず、困難そのものを学びの源に変えていく姿勢を示しているように見えます。地上から空へ――Zhao氏の歩みは、まさに「Ground to Sky」という表現がぴったりです。
戦闘機パイロットから低空経済インフルエンサーへ──Owenの転身
一方のOwen(オーウェン)氏は、かつて戦闘機パイロットとして空を飛んでいた人物です。高度な訓練と経験を積んだパイロットが、いまはソーシャルメディアで低空経済を分かりやすく伝えるインフルエンサーとして活動しています。
軍事や訓練のための「空」から、日常の移動やビジネスに開かれた「空」へ。Owen氏のキャリアは、空域の使われ方そのものが変わりつつある流れを象徴しています。専門的な飛行経験を、一般の人にも届く言葉に翻訳して発信している点が特徴です。
低空経済とは何か──地面と空のあいだに広がる新しい市場
2人が注目しているキーワードの一つが「低空経済」です。これは、地上と高高度の航空機のあいだにある、比較的低い高度の空域を活用することで生まれる産業やサービス全体を指す言葉として使われています。
イメージしやすい例としては、次のようなものがあります。
- 都市や観光地を短時間で結ぶエアタクシー
- 人や荷物を運ぶ小型の電動機体
- インフラ点検や災害時の支援に使われる飛行ロボット
XPeng AEROHTが取り組むフライングカーも、この低空経済を支える存在として位置づけられています。「空をもっと身近に」というビジョンは、テック企業や航空関係者だけでなく、都市計画や観光、物流など、さまざまな分野につながるテーマです。
『陸上空母』モジュール式フライングカーとは
今回のインタビューの中心にあるのが、『陸上空母(Land Aircraft Carrier)』と呼ばれるモジュール式フライングカーです。名前の通り、陸上での移動と空中での飛行を一体的に考えたコンセプトモデルとされています。
詳細な仕様はこれから明かされていく段階ですが、「モジュール式」というキーワードからは、次のような方向性が読み取れます。
- 地上ユニットと飛行ユニットを組み合わせる設計
状況に応じて、クルマのように道路を走ったり、飛行ユニットを使って空に上がったりできる構成が想定されています。 - 用途に合わせた柔軟なカスタマイズ
通勤・観光・物流など、目的に応じてモジュールの組み合わせを変えられる設計思想がうかがえます。 - 低空経済の「インフラ」の一部という発想
一台の乗り物というより、地上と空をつなぐ移動インフラの一要素として設計されている点が特徴です。
Zhao氏とOwen氏は、この『陸上空母』を通じて、日常の移動と空の技術をどう結びつけるか、そのビジョンを共有しています。
10年越しの「自由な飛行」という夢
2人は過去10年にわたり、「誰もがもっと自由に空を使える世界」を共通の目標として追い続けてきました。背景もキャリアも違う2人が、同じ方向を見ている点が印象的です。
テック起業家は、技術とビジネスの言葉で未来の空を描きます。元戦闘機パイロットは、安全性や運用の現実を踏まえながら、人々に空の可能性を伝えます。視点の異なる2人が組むことで、技術的な理想と、実務的なリアリティのバランスが取りやすくなります。
Embracing Adversity というタイトルに込められたメッセージは、技術開発やキャリアの選択に限らず、変化の時代を生きる多くの人に共有できるテーマでもあります。逆境を避けるのではなく、そこから新しいアイデアを引き出す姿勢が、フライングカーという挑戦的な領域を支えていると言えるでしょう。
移動の未来はどう変わるのか──私たちへの問い
フライングカーや低空経済が広がれば、通勤や旅行の選択肢は大きく変わるかもしれません。渋滞に悩まされずに都市間を移動できる日常や、山間部や離島など、これまでアクセスしづらかった地域との距離が縮まる可能性もあります。
一方で、安全性、ルールづくり、騒音や環境への配慮など、社会全体で考えるべき課題も少なくありません。新しい技術が使われる「空」は、個人の夢だけでなく、公共空間としての性質も持っているからです。
だからこそ、いまの段階から「どんな空の使い方なら、私たちは受け入れられるのか」「どのような条件が整えば、安心して利用できるのか」を考えることが重要になってきます。
読み終えたあとに残る、小さな視点の変化
2025年のいま、フライングカーはまだ一部の実験やプロジェクトの段階にあります。しかし、少年時代のラジコンから始まり、戦闘機パイロットのキャリアを経て、「空をもっと自由にする」という共通の夢に行き着いた2人のストーリーは、技術ニュース以上のものを私たちに届けてくれます。
自分の仕事や学びのなかで、「Ground to Sky」のような大きなギャップをどう乗り越えるか。逆境をどう受け止め、次のステップに変えていくか。Zhao Deli氏とOwen氏の挑戦は、空飛ぶクルマそのもの以上に、そんな問いを静かに投げかけています。
空をめぐる未来のモビリティは、遠いSFの物語ではなく、私たちが選ぶ現実の一つの選択肢になりつつあります。次に空を見上げたとき、「この空を、10年後はどう使っていたいか」と考えてみると、ニュースの見え方も少し変わってくるかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








