シルクロードがつないだ器 トルクメニスタンのリュトンが語る歴史 video poster
トルクメニスタンの古都ニサで見つかった角の形をした酒器リュトンが、古代シルクロードの広がりと、中国の新疆ウイグル自治区との意外なつながりを静かに語っています。2025年のいま、この小さな器にどんな物語を読み取ることができるのでしょうか。
ユネスコ世界遺産 古都ニサとパルティアの都
トルクメニスタンの古都ニサは、パルティア王国の首都として栄えた場所で、現在はユネスコの世界遺産に登録されています。古代のシルクロードの一角に位置し、かつては芸術や文化、交易の拠点として、多様な人と物が行き交っていました。
その都市が残した痕跡の中でも、とりわけ目を引くのが、角のような形をした酒器のコレクションです。発掘によって姿を現したこれらの器は、当時の宮廷や宗教儀礼の一場面を、いまに伝える貴重な手がかりとなっています。
角の形の酒器 リュトンとは何か
ニサで見つかったこれらの器は、リュトンと呼ばれます。名称は、流れるという意味を持つギリシャ語の語源に由来するとされ、液体を「流す」ための器であったことが名前からもうかがえます。
リュトンの特徴は、次のような点にあります。
- 全体として角や角笛のような細長い形をしている
- 下部には動物や神話的なモチーフなど、凝った装飾が施されていることが多い
- 上部から注いだ酒などの液体が、下部の先端から流れ出る仕組みになっている
こうした形状から、リュトンは日常の食卓というより、儀礼や祭祀、特別な宴などで使われたと考えられます。単なる容器ではなく、宗教的な意味や権威、豊穣への祈りなど、さまざまな象徴を担っていた可能性があります。
新疆ウイグル自治区でも見つかった「同じかたち」
興味深いのは、このリュトンとよく似た器が、中国の新疆ウイグル自治区でも見つかっているという点です。地理的には離れた地域で、同じような造形の器が出土していることは、古代の文化交流の広がりを強く示しています。
シルクロードは単なる交易路ではなく、技術や宗教、言語、そして美意識までもが行き交う文化の回廊でした。トルクメニスタンのニサと新疆ウイグル自治区で見つかったリュトンは、そのことを物静かに証言していると言えます。
異なる地域で、似たデザインの器が作られ、儀礼に用いられていたとすれば、人びとは互いの文化に触発されながら、自分たちなりの解釈を加えていったのでしょう。同じ形を共有しつつ、そこに込める意味や物語は、地域ごとに少しずつ違っていたのかもしれません。
古代の器が教えてくれるシルクロードの「つながり」
ニサのリュトンと新疆ウイグル自治区の類似した器を並べてみると、いくつかのポイントが見えてきます。
- 形や用途を共有しながらも、装飾や意匠には地域ごとの個性が表れている
- 交易品としてだけでなく、儀礼や信仰のあり方までがシルクロードを通じて影響し合っていた可能性
- 「どちらが一方的に広めたか」という単純な図式ではなく、双方向的な交流があったと考えられること
国境や言語によって世界が分けられて語られがちな現代とは対照的に、古代のシルクロード世界は、もっと重なり合いやにじみ合いの多い空間だったことが、こうした遺物から浮かび上がってきます。
2025年のいま リュトンに注目する意味
2025年を生きる私たちにとって、角の形をした古代の酒器リュトンは、一見すると遠い世界の話に思えるかもしれません。しかし、その名が「流れること」に由来するように、リュトンはまさに、人や物、思想や信仰が「流れた」歴史の象徴でもあります。
トルクメニスタンの古都ニサから、新疆ウイグル自治区へと響き合う器のかたち。その背後には、顔の見えない無数の職人や商人、祈りを捧げた人びとの営みがありました。
スマートフォン越しに世界のニュースを追う私たちにとって、この小さな器が投げかける問いは、素朴ですが重みがあります。
- 私たちはいま、何をどのように「共有」し合っているのか
- 文化の違いを線引きとしてではなく、重なり合いとして見ているだろうか
- 過去から流れてきた物語を、これからどのように次の世代へ手渡していけるのか
古代のリュトンが再び注目されるいまこそ、シルクロードが育んだ「つながりの感覚」を、改めて静かに見つめ直すタイミングなのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com







