中国の新型有人宇宙船「夢舟」 月面ミッション向け緊急脱出試験に成功 video poster
中国の新型有人宇宙船「夢舟(モンジョウ)」が、打ち上げ前後の重大なトラブルを想定した緊急脱出システムの試験に成功しました。月面有人ミッションを見据える中国の宇宙計画にとって、安全性を確認する重要なステップです。
中国の新型有人宇宙船「夢舟」とは
夢舟は、中国が独自に開発している次世代の有人宇宙船です。地球と宇宙の間で宇宙飛行士を輸送することを主な役割とし、将来の月面有人探査にも使えるよう設計されています。
- 最大7人の宇宙飛行士を搭乗可能
- 用途に応じて構成を変えられるモジュール設計
- 宇宙ステーション向け運用と月面ミッションの両方に対応
夢舟は、中国の既存の有人宇宙船である神舟シリーズの後継となる存在であり、より高度なミッションに対応することが期待されています。
酒泉で実施された「零高度」緊急脱出試験
今回の試験は、中国北西部にある酒泉衛星発射センターで火曜日に行われ、中国中央広播電視総台(China Media Group)が中国有人宇宙工程弁公室の情報として報じました。
実施されたのは、地上にほぼ近い高度から宇宙船を緊急脱出させる「零高度脱出」飛行試験です。試験の流れは、わずか数分の間に次のように進みました。
- 12時30分、夢舟宇宙船に取り付けられた脱出エンジンが点火し、宇宙船と脱出塔の組み合わせが固体ロケットの推力で一気に上昇。
- 約20秒後、あらかじめ設定された高度に達すると、帰還カプセルが脱出塔から素早く分離。
- 続いてパラシュートが予定通りに展開し、降下を減速。
- 12時32分ごろ、帰還カプセルはエアバッグシステムにより衝撃を和らげながら、指定された試験区域に無事着地。
計画された通りのシーケンスが完了し、今回の零高度脱出試験は「完全な成功」と評価されています。
宇宙飛行士を守る「最後の砦」
緊急脱出システムは、有人ロケットの安全性を左右する重要な装置です。宇宙飛行士が乗り込んだ後、打ち上げ前後に危険が生じた場合、瞬時に作動して宇宙船をロケット本体から切り離し、安全な場所まで運ぶ「最後の砦」となります。
国際宇宙航行連盟の宇宙輸送委員会委員長であるヤン・ユグアン氏は、中国の英語メディアCGTNに対し、今回の零高度脱出試験について「発射台の上でロケット爆発のような重大な危険が発生した場合でも脱出できる能力を検証したものだ」と説明しています。
試験では、宇宙船と脱出塔の分離機構や、脱出経路を自動で制御する閉ループ制御(フィードバックに基づいて軌道を調整する仕組み)などが、設計通りに機能するかが確認されました。実際の飛行データを得られたことで、今後の改良や本格運用に向けた重要な基礎資料にもなるとされています。
神舟から夢舟へ:安全設計はどう変わったか
同様の本格的な緊急脱出試験が中国で行われたのは、既存の神舟宇宙船を対象とした1998年の試験以来で、今回はそれに続く2回目の取り組みです。四半世紀ぶりとも言えるこの試験は、新世代の有人宇宙船への移行を象徴するものでもあります。
今回の発表によると、夢舟では、緊急脱出とその後の救助の機能を担うシステムが統合され、全体として脱出と救助の両方に責任を持つ設計になっています。従来は分かれていた役割を一体化することで、システム全体の整合性を高めつつ、運用手順の簡素化や信頼性向上が期待されます。
月面有人ミッションへ向けた全体計画
夢舟宇宙船は、地球と宇宙の間で宇宙飛行士を輸送する「乗り物」として設計されており、中国の将来の月面有人探査構想の中核要素の一つです。
中国は現在、夢舟と並行して、月面有人探査に必要な他の主要装置の開発も進めています。
- 宇宙船を地球低軌道や月へ送り出す「長征10号」運搬ロケット
- 宇宙飛行士を月面に降ろすための月着陸船
これらのシステムについても、今後、計画に沿って関連試験が実施されるとされています。夢舟、長征10号、月着陸船が組み合わさることで、月面に宇宙飛行士を送り出し、帰還させる一連のミッションが実現していく構図です。
これから何が見えてくるか
今回の零高度脱出試験の成功は、月面を目指す中国の有人宇宙計画にとって、安全面での大きな前進と言えます。今後、長征10号ロケットや月着陸船の試験が進み、各要素の信頼性が積み上がるにつれて、実際に月面に立つ中国人宇宙飛行士が登場する時期に、世界の関心がいっそう集まりそうです。
宇宙開発は国家間の競争であると同時に、人類全体の知見や技術を押し広げる営みでもあります。夢舟のような新しい宇宙船がどのような成果をもたらすのか、今後の続報に注目したいところです。
Reference(s):
China's new crewed spaceship for moon missions completes abort test
cgtn.com








