人生の真ん中から生まれるアニメ Li Wenyu監督が語る創作の原点 video poster
アニメーションは最先端の技術や派手な演出から生まれる――そう考えがちですが、四川大学の芸術学院で教えるアニメーション監督 Li Wenyu さんは、まったく違う出発点を示します。オンライン番組 PAGE X の一編『Crafting animation from the heart of life』で、彼は本物の創作は、人生そのものへの深いまなざしからしか生まれないと語りました。ベルリン国際映画祭 Berlinale に選出されたアニメーション作品『Ran Bi Wa』の監督でもある Li さんの言葉は、創作に関わるすべての人にとって示唆に富んでいます。
タルコフスキーの言葉が投げかける問い
Li さんの心に響いたのは、映画監督アンドレイ・タルコフスキーの著書 Sculpting in Time 時間の刻印 の一節です。人生の意味を自覚していない芸術家は、自らの芸術の言語で首尾一貫したことを語ることはできないだろうという趣旨のこの言葉は、創作と人生の結びつきを鋭く突いています。
人生観があいまいなままでは、作品もどこか芯を欠いてしまう。Li さんはこの一節から、アニメーションも単なる娯楽ではなく、人生をどう見ているかを問われる表現なのだと受け取っているように見えます。
人生の詩人になることが、技術より先にくる
Li さんは、真正の芸術的な創作は、人生への深い関与から生まれると強く信じています。もっとも心を動かす作品は、作り手自身の経験から蒸留されたものであり、アニメーションであれ他の芸術であれ同じだと考えています。芸術の技術を本当に身につけるには、まず人生の詩人になるべきだというのが彼の立場です。
この考え方を踏まえると、創作のプロセスは次のようなステップとして整理できます。
- 日常の喜びや痛み、迷いや発見を、意識して味わう
- その経験を、自分なりの物語やイメージとして捉え直す
- 流行や見栄えよりも、自分の人生からにじみ出る正直な表現を大切にする
教育と創作をつなぐまなざし
四川大学の教員であり現役の監督でもある Li さんにとって、こうした信念は、教育と制作の両方を貫く軸になっていると考えられます。テクニックやソフトウエアの使い方を学ぶことは重要ですが、それだけでは作品の中身は生まれません。自分が何に心を動かされ、どのように世界を見ているのかを言葉にすることが、アニメーション表現の土台になるという視点です。
Ran Bi Wa が示す、個人的な経験の力
Li さんは、ベルリン国際映画祭に選出されたアニメーション作品『Ran Bi Wa』の監督としても知られています。ここで紹介されている情報からだけでは作品の詳細までは分かりませんが、彼がもっとも強い作品は作者の個人的な経験から生まれると考えていることを踏まえると、この作品もまた、人生から掬い取った感情や記憶をもとに形作られていると想像することができます。
PAGE X がつなぐ本と人生
Li さんが出演した PAGE X は、さまざまな分野のゲストを招き、それぞれが好きな本から選んだ一節を紹介するオンライン番組です。ゲストの解釈や語りを通じて、視聴者は世界の知的な名著にオンラインでアクセスし、読書の持つ時代を超えた魅力を再発見することができます。
2025年の今、短い動画や SNS の投稿が情報の中心になりつつある中で、一冊の本の一節をめぐってじっくり語り合う PAGE X のような企画は、思考のペースを少し取り戻し、自分の人生を照らし返すきっかけにもなりそうです。
自分の人生の一節を探す
タルコフスキーの一言に背中を押された Li さんのように、私たちも一冊の本の中から、自分の人生観を揺さぶる一節に出会うことがあります。創作に携わる人はもちろん、日々の仕事や人間関係に向き合う誰にとっても、次のような問いは有効かもしれません。
- 最近、心に残った言葉は何か。それはなぜ忘れられないのか
- 自分の体験とその言葉は、どのようにつながっているのか
- その視点を、仕事や表現の場でどう生かせるのか
Li Wenyu さんが語る人生から生まれるアニメーションという視点は、アニメーションという専門的な領域を超えて、私たちの生き方そのものに問いを投げかけています。人生を丁寧に見つめ、その実感から言葉やイメージを紡いでいくこと。そこから生まれた表現こそが、国境や世代を越えて人の心を動かすのだと感じさせます。国際ニュースとして世界の創作現場に触れることは、自分自身の物語を見つめ直すヒントにもなりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








