心に国家公園をつくる:中国本土の生物多様性を撮り続けた写真家 video poster
生物多様性や国家公園づくりが国際ニュースで語られることが増えるなか、中国本土で約40年にわたり野生動物を撮影してきた写真家・奚志農(Xi Zhinong)さんの活動が、あらためて注目されています。絶滅の危機にあるYunnan snub-nosed monkeysから、ユキヒョウ、希少なgreen peafowlの鳴き声まで、そのレンズは中国本土の生物多様性の歩みを記録してきました。
40年カメラを向け続けた、生きものたちの「証言」
奚志農さんは、およそ40年にわたり、カメラを命を守るための道具として使ってきました。初めて絶滅危惧種のYunnan snub-nosed monkeysを撮影し、ユキヒョウを守る牧畜民の姿を記録し、Honghe River Valleyで希少なgreen peafowlの鳴き声を収めてきました。
この一連の記録は、中国本土が生物多様性を重視し、その保全を進めてきた歩みそのものでもあります。現場で出会った人びとと動物たちの姿からは、「人間の暮らし」と「野生のいのち」が対立ではなく共存の関係にあることが見えてきます。
ユキヒョウを守る牧畜民、希少な声を見守る谷
ユキヒョウを守る牧畜民の姿には、生活の場を野生動物と分かち合おうとするまなざしが映し出されています。また、Honghe River Valleyで収められた希少なgreen peafowlの鳴き声は、静かな谷に響く一本の「声」として紹介されます。姿を見つけることさえ難しい生きものの存在を、音として記録することで、私たちはそこにある生態系をより具体的に想像できるようになります。
110万平方キロメートルの国家公園というスケール
奚志農さんの活動は、約110万平方キロメートルにおよぶ国家公園の設立にも貢献してきたとされています。この広大な面積は、単なる数字以上の意味を持ちます。それは、野生動物の生息地を守ることはもちろん、人びとが自然との関わり方を見つめ直すための「物語」の舞台でもあるからです。
しかし、奚志農さんが強調するのは、地図の上に線を引いて保護区をつくることだけではありません。彼は「The ultimate means of conservation is to build protected areas and national parks in people's hearts(保全の究極の手段は、人びとの心の中に保護区や国家公園をつくることだ)」と語っています。
「心の中の国家公園」が意味するもの
では、「人びとの心の中に国家公園をつくる」とは、どういうことでしょうか。奚志農さんの言葉から、次のようなイメージが浮かび上がります。
- 野生動物やその生息地を、遠い世界の話ではなく、自分の生活とつながる存在としてイメージすること
- 開発や便利さを選ぶときに、その裏側で失われるかもしれない生きものや景色に思いを巡らせること
- 地域で暮らす人びとが、自然と向き合う知恵や文化を次の世代へ引き継いでいくこと
こうした心のあり方が広がっていけば、法律や制度だけでは守りきれない生物多様性を支える、目に見えない「保護区」が社会の中に生まれていきます。
2025年を生きる私たちへの問い
2025年のいま、気候変動や生物多様性の危機は、国際ニュースだけでなく日常の会話でも語られるテーマになりつつあります。奚志農さんの40年にわたる記録は、「自然保護は専門家や現場の人だけの仕事ではなく、私たち一人ひとりの心の中から始まる」という問いを投げかけています。
SNS時代に広がる「心の保護区」
スマートフォンで誰もが写真や動画を撮り、SNSで共有できる時代だからこそ、私たちは自然との向き合い方を自分ごととして考えることができます。
- 身近な自然や生きものの姿を、ただ「映える」風景としてではなく、その背景にある物語とともに伝える
- 野生動物や保護区に関する情報を、日本語のニュースや国際ニュースを通じて学び合う
- 旅先で訪れる国立公園や保護地域で、ルールを守り、生態系への影響を意識する
奚志農さんがカメラを通じて示してきたのは、「見て終わり」ではなく、「見たあとにどう生きるか」を考える視点です。
中国本土の広大な大地で110万平方キロメートルにもおよぶ国家公園づくりに関わりながら、奚志農さんは、最終的には一人ひとりの心の中にこそ本当の保護区が存在すると語ります。私たち自身の中に、壊されたくない風景や守りたい生きものの姿をどれだけ思い描けるか――それが、これからの生物多様性を左右する「心の国家公園」づくりの第一歩なのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








