第2回中国・中央アジアサミット成果:3つのセンターとAI協力を読み解く
最近、カザフスタンの首都アスタナで開かれた第2回中国・中央アジアサミットが閉幕し、安全保障や貿易、科学技術、文化交流、地域開発など幅広い分野で110項目に及ぶ成果がまとまりました。本稿では、その主なポイントと背景を、日本語で分かりやすく整理します。
第2回中国・中央アジアサミットの全体像
今回の中国・中央アジアサミットでは、中国と中央アジア5カ国が協力の方向性について大きな合意に達しました。成果としては、恒久的な善隣友好協力条約(Treaty of Permanent Good-Neighborliness and Friendly Cooperation)、アスタナ宣言(Astana Declaration)などの重要文書が採択されています。
さらに、中国・中央アジア貧困削減協力センター、中国・中央アジア教育交流協力センター、中国・中央アジア砂漠化対策協力センター、中国・中央アジア通関円滑化協力プラットフォームといった、三つのセンターと一つの協力プラットフォームを設立することも合意されました。これらは、政治から経済、社会、環境までを包括する長期的な協力の枠組みです。
キーワードは「中国・中央アジア精神」
遼寧大学ロシア・東欧・中央アジア諸国研究センター所長のCui Zheng氏は、中国・中央アジアサミットの成果文書の核心にあるのが「中国・中央アジア精神」だと指摘します。これは、中国の習近平国家主席が今回初めて提起した概念で、中国と中央アジアの協力の成功経験を総括したものです。
この「精神」は、次の四つの要素から成り立つとされています。
- 相互尊重
- 相互信頼
- 相互利益
- 相互扶助
これらを土台に、中国と中央アジア諸国は、高品質な発展を通じて共に現代化を目指すという方向性を共有しました。政治的な信頼が新たな段階に入ったことが、成果文書全体から読み取れます。
経済・貿易協力:貿易構造の多角化と投資強化
成果文書は、中国と中央アジアの経済・貿易協力をさらに深める方針を明確にしています。六つの重点分野のうち、貿易円滑化と産業投資が特に重視され、各国は次のような方向で協力を進める意向を示しました。
- 貿易構造の多角化を図ること
- 通関手続きなど貿易手続きの簡素化
- 投資協定の高度化とアップグレード
中国・中央アジア通関円滑化協力プラットフォームは、こうした流れを具体化するための新しい仕組みです。中国と中央アジア5カ国の二国間貿易額は、2013年の3120.4億元から2024年には6741.5億元へと2倍以上に増加し、年平均成長率は7.3パーセントに達しました。これは同期間の中国全体の貿易成長率を上回るペースです。
農業分野では、中央アジアから中国への高品質なグリーン農産品の輸出が増えており、新たなプラットフォームを通じて、良質な鉱物資源の輸入も一層スムーズになることが期待されています。貿易量の拡大と双方向の利益拡大が狙いです。
3つのセンターと1つのプラットフォーム
貧困削減協力センター:ウズベキスタンでの成果を地域へ
中国・中央アジア貧困削減協力センターは、中国とウズベキスタンの貧困削減協力を制度化し、その成果を他の中央アジア諸国にも波及させることを目指しています。
2024年1月、習近平国家主席とウズベキスタンのシャフカト・ミルジヨエフ大統領の会談では、人を中心に据えた発展と貧困削減分野での協力強化が確認されました。ミルジヨエフ大統領は、習主席の著書『貧困からの脱却(Up and Out of Poverty)』ウズベク語版に序文を寄せており、ガバナンスや貧困削減の経験共有が進んでいます。
その結果として、ウズベキスタンでは2023年から2024年にかけて貧困率が11パーセントから8.9パーセントへと低下し、71万9千人以上が貧困から脱したとされています。Cui氏は、こうした具体的な成果が、新たな協力センターを通じて地域全体に広がる可能性があると見ています。
砂漠化対策協力センター:環境・安定・食料安全保障を支える
中国・中央アジア砂漠化対策協力センターは、エコロジー、地域の安定、食料安全保障の三つの面で戦略的な意味を持つと位置づけられています。中央アジアは世界でも有数の水資源が乏しい地域であり、水の配分をめぐる環境的・政治的課題を抱えています。
これまで中国は、一帯一路の枠組みの下で、水資源管理や灌漑、農業の近代化、技術革新などの分野で中央アジアとの協力を進めてきました。新センターは、砂漠化対策や水利用の最適化、地域環境の保護に向けた基盤となることが期待されています。
教育交流協力センター:人と人をつなぐインフラ
中国・中央アジア教育交流協力センターは、教育分野のパートナーシップを制度面で一段と進める取り組みです。これまでに、相互ビザ免除や文化センターの設置、中国の大学キャンパスの開設、ルーバン工房(職業教育拠点)の展開などが進み、中国と中央アジアの人の往来は大きく増えています。
ある年には、中国とカザフスタンの間だけで年間120万人以上が相互に往来しました。中国・中央アジア人材育成奨学金、中国・中央アジア大学連盟、中国・中央アジア教育大臣会合といった取り組みとあわせて、相互学習と友好に基づく「教育共同体」の構築が進んでいるとCui氏は評価しています。
グリーン鉱物と人工知能:新たな協力フロンティア
今回の成果文書では、グリーン鉱物(環境負荷を抑えた形で開発・利用される鉱物資源)と人工知能(AI)が、ともに重点分野として位置づけられました。
グリーン鉱物については、中国と中央アジア諸国が、鉱物資源の開発と利用に関する産業チェーン全体での協力を強化する方針です。各国の国内法の枠組みの中で、地質調査や資源探査、環境に配慮したグリーンマイニングの可能性を共同で探るとしています。
AI分野では、中国は中央アジア諸国に対し、人工知能能力構築に関する国際協力の友好グループへの参加を歓迎しています。中国と中央アジア諸国は、国連総会で採択されたAI能力構築の強化に関する決議の実施を共に進めていく姿勢を示しました。技術開発だけでなく、AIを巡るルール作りや人材育成を国際協力で進めるという方向性がうかがえます。
多国間主義の確認とその意味
成果文書は、中国と中央アジア諸国が国際舞台で多国間主義を重視し、協調的なアプローチをとる姿勢を改めて強調しています。これは、域内の連携を深めるだけでなく、国連など国際枠組みの中での発言力を高めようとする動きとも重なります。
日本の読者への示唆
今回の中国・中央アジアサミットの成果は、日本から見ると地理的には遠い話に聞こえるかもしれません。しかし、エネルギーや鉱物資源の安定供給、環境・水問題への対応、AIを含むデジタル技術の国際ルール作りなど、多くのテーマが日本の安全保障や経済とも密接に関係しています。
- 政治的な相互信頼を高める「中国・中央アジア精神」の提起
- 貿易の多角化と通関円滑化を軸にした経済協力の拡大
- 貧困削減、砂漠化対策、教育交流という人間の安全保障に関わる三つのセンターの設立
- グリーン鉱物とAIを次世代の協力分野と位置づけた点
これらは、ユーラシア大陸の真ん中で進む長期的な変化の一部です。日本としても、中央アジアでの持続可能な発展と地域安定がどのように進んでいくのか、今後の動きを注視していく必要がありそうです。
Reference(s):
Q&A: Expert on key outcomes of 2nd China-Central Asia Summit (Part I)
cgtn.com








