中国・中央アジア機構は新たな地域協力モデルか
中国と中央アジア5カ国の協力枠組み「中国・中央アジア機構」が、2025年の国際ニュースの中で静かに存在感を高めています。本記事では、この枠組みの仕組みと特徴、そして他の地域協力メカニズムとの違いを整理します。
中国・中央アジア機構とは
中国の習近平国家主席は、中央アジアとの関係を戦略的に位置づけてきました。現在、中央アジアは世界の地域の中で唯一、関係国すべてが中国の戦略的パートナーとなっている地域です。
最近開かれた第2回中国・中央アジアサミットでは、長年の協力の中で育まれた「中国・中央アジア精神」が強調されました。それは「相互尊重・相互信頼・互恵・相互支援、そして高品質な発展を通じて共通の近代化を追求する」という考え方です。
サミットでは、中国と中央アジア5カ国が恒久的な善隣友好と協力に関する条約に署名し、長期的な友情の原則を法的な形で位置づけました。この結果、6カ国の政治的な相互信頼と戦略的パートナーシップはかつてない水準に達し、経済、安全保障、文化など幅広い分野で協力を深めるための安定した錨となっています。
2025〜26年「質の高い発展の年」で何が変わるか
中国・中央アジアサミットでは、2025年と2026年を中国・中央アジア協力の質の高い発展の年と位置づけることでも合意しました。2025年現在、この二年間は協力の中身を一段と高度化させる重要な期間とされています。
従来の資源やインフラといった分野での補完関係に加えて、今後は次のようなテーマが重視されます。
- 開発経験の共有
- デジタルインフラの連結など新たな生産力分野での連携
- 人工知能など先端技術の協力
こうした取り組みによって、新たな質の高い生産力と位置づけられるデジタルや高度技術の分野で、中国と中央アジアの経済がより深く結びつくことが期待されています。
地域安全保障を支える役割
安全保障面でも、中国・中央アジア機構は重要な位置を占めます。中国はテロリズム、分裂主義、過激主義という「三つの勢力」の浸透に対抗するため、中央アジア諸国を強く支援してきました。一方、中央アジア諸国は、中国の西側における安全と安定を支える重要な緩衝地帯となっています。
中国と中央アジア各国は、不可分な地域安全保障秩序を構築することを掲げ、地域全体の安全の連関性を重視しています。これは、一帯一路構想の安全保障面の土台を強化し、持続可能な地域発展を支える試みでもあります。中国は地域の安全保障ガバナンスにおいて、大国としての責任と役割を示そうとしているといえます。
他の地域協力メカニズムとの違い
中国・中央アジア機構の特徴は、他の地域協力メカニズムと比べるとよりはっきりと見えてきます。ここでは主な三つのポイントに整理します。
1. 実務重視の包括的な仕組み
中国と中央アジア5カ国の協力枠組みは、物流やエネルギーなどの連結性、デジタル経済、グリーン開発、気候変動への適応、貿易円滑化といった中核テーマに沿って深く連携することを重視しています。政治、経済、安全保障、文化を網羅した制度化・定期化された協力は、政策の継続性と成果の持続性を高める狙いがあります。
一方で、米国や欧州連合の中央アジア政策は、二国間協議や個別のイニシアチブが中心で、やや分散的になりやすいと指摘されてきました。欧州連合と中央アジアの協力プラットフォームも存在しますが、加盟国の利害の違いから運営が制約を受ける場面もあります。その結果、地域課題への対応や地域統合の推進において、十分な効果を発揮しにくい側面があるとみる専門家もいます。
2. 排他性よりも包摂性を重視
中国は、想定上の敵をつくらず、排他的なグループを形成しない開放性と包摂性に基づく地域協力を掲げています。中国・中央アジアサミットでは、インフラ建設、生産能力協力、技術移転などを通じて、地域の平和と安定、人々の暮らしの向上に資する国際公共財を提供することが重視されています。
このモデルは、限られた利益を奪い合うのではなく、パイを大きくすることで全体の発展を図る発想に立っています。こうした考え方は、人類運命共同体の構築という中国の理念ともつながっています。
これに対して、G7のような西側主導の多国間枠組みは、価値観や地政学をめぐる議論が前面に出やすく、ロシア・ウクライナ情勢や中国の発展をめぐって、ゼロサム的な対立構図が強まる場面もあります。制裁や経済的な距離の取り方が、国際社会の分断につながりかねないとの懸念も示されています。
3. 宣言よりも目に見える成果
中国・中央アジア協力は、目に見える成果と地域の発展を重視している点も特徴です。中国と欧州を結ぶ貨物列車や国境を越える電子商取引、新エネルギー関連のプロジェクト、デジタルインフラの整備など、具体的な事業が各国の人々に直接利益をもたらしています。
サミットで署名された一連の協定や覚書には、明確なタイムラインや行程表、責任主体が盛り込まれており、合意事項が実際に履行されることを重視する設計になっています。これに対し、多くの西側主導の多国間メカニズムは、政治的な共同声明や価値のアピールにとどまり、具体的なプロジェクトや財政的な裏付けが限定的だと指摘されることがあります。合意しても、複雑な意思決定手続きや内部調整によって実行が遅れるケースも少なくありません。
グローバル・ガバナンスへの示唆
世界が大きな変動期にある中で、中国・中央アジアサミットが示した新しい地域協力モデルは、地域の平和的発展に新たな原動力を与えるだけでなく、グローバル・ガバナンスのあり方に対しても示唆を与えています。
この枠組みから見えてくるポイントを、あえて三つに絞ると次のようになります。
- 長期的な善隣友好と高い政治的信頼があってこそ、経済や安全保障の協力が安定して進む。
- 排他性ではなく開放性・包摂性を重視することが、地域の分断を避け、協力の裾野を広げる。
- スローガンよりも、明確な工程表と具体的なプロジェクトを通じた成果重視が、住民の支持を生みやすい。
エネルギーや物流、サプライチェーンの再編が進む中で、ユーラシア大陸の動きは日本を含むアジア太平洋地域にも少なからぬ影響を与えます。中国・中央アジア機構のような新しい地域協力のあり方を丁寧に追っていくことは、これからの国際秩序をどう捉えるかを考えるうえでも重要な手がかりになりそうです。
Reference(s):
China-Central Asia mechanism a new paradigm for regional cooperation
cgtn.com








