中国出身の若手がEPOヤング発明家賞初受賞 船舶のCO2回収技術とは
欧州特許庁(EPO)が実施する国際賞ヤング・インベンターズ・プライズで、中国出身の若手研究者 温柔佳(Wen Roujia)さんが初の受賞者となりました。既存の船舶に後付けできるCO2回収システムが評価され、海運の脱炭素と国連の持続可能な開発目標(SDGs)に向けた若者のイノベーションとして注目されています。
- 中国出身の温柔佳さんがEPOヤング・インベンターズ・プライズを初受賞
- 既存の船に取り付け可能なCO2回収システムで海運の排出削減に挑む
- SDGs達成に向け、世界各地の若手発明家の取り組みが表彰された
温柔佳さん、中国出身として初の栄冠
温柔佳さんは、水曜日に行われた欧州特許庁(EPO)の授賞式で、ヤング・インベンターズ・プライズの受賞者として名前を呼ばれました。同賞で中国出身の発明家が選ばれるのは初めてです。
温さんと協働するアリーシャ・フレドリクソンさんは、船主が既存の船隊を入れ替えることなく排出量を減らせるようにする船舶向けのCO2回収システムを開発しました。2人のチームは、5大陸から450人以上が応募した2025年ヤング・インベンターズ・プライズの上位10人に選ばれ、その中から受賞者となりました。
温さんは授賞式前に「船舶は世界のCO2排出量のおよそ3%を占めています。私たちには、船からCO2が大気中に放出されるのを止める多くのチャンスがあります」と語り、海運分野での排出削減の余地の大きさを強調しました。
既存船を生かすCO2回収システム
今回評価されたのは、すでに運航している船に後付けできるCO2回収システムです。温さんは「海上の環境は陸上よりもずっと厳しく、天候や塩害など多くの要素を考慮しなければなりません。だからこそ、材料には高い耐食性が必要で、波で船体が揺れても動かないように甲板にしっかり固定できる装置を開発する必要があります」と説明しています。
温さんとフレドリクソンさんが共同設立したスタートアップは、カルシウム系の材料を用いて二酸化炭素を固体として固定する仕組みを採用しています。排ガス中のCO2を捕集し、石灰石のような固体ペレットに変えることで、安定的かつ安全に扱える形にするのが特徴です。
- 船舶の排ガスを取り込み、カルシウム系材料にCO2を吸収させる
- 吸収したCO2を固体の石灰石ペレットとして固定する
- ペレットを再生して再利用するか、建設材料などの産業用途に転用する
こうした手法により、海上という過酷な環境でも安定的に運用できるだけでなく、既存の船舶を活用しながら排出削減を進める現実的な選択肢が生まれます。大量の船舶を一度に新造船へ置き換えるのではなく、今あるインフラを生かしながら脱炭素化を図るという発想が、この技術の大きな特徴です。
SDGsを支える世界各地の若手発明家
2025年のヤング・インベンターズ・プライズでは、CO2回収以外にも多様な分野のイノベーションが表彰されました。受賞者やファイナリストたちは、電子ごみ(e-waste)やレアアースのリサイクル、航空、人工知能(AI)、ナノテクノロジー、食料安全保障、環境保護など、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に直結する課題に取り組んでいます。
例えば、ウガンダの起業家サンドラ・ナンブーゾさんとサミュエル・ムイタさんは、果物の熟成を遅らせ腐敗を防ぐ天然成分を放出する生分解性サシェを開発し、コミュニティ・ヒーラーズ賞を受賞しました。マリー・ペランさんは、水やエネルギー、持続可能なインフラなどの基本的な資源へのアクセスを持続可能な形で広げる取り組みが評価され、ワールド・ビルダーズ賞に選ばれました。
ニーカ・マシューフさんとレイラ・マシューフさんは、気候変動や海洋環境、野生生物の保全など、自然環境と生物多様性を守る取り組みでネイチャー・ガーディアン賞を受賞しました。いずれのプロジェクトも、地域社会の課題と地球規模の課題を同時に見据えたものとなっています。
若手イノベーションを後押しするEPOの狙い
審査員を務めたフィリパ・デ・ソウザ・ロシャさんは「10人のファイナリストは、私たちやこれからの世代に新しいアイデアを生み出す勇気を与えてくれます」と述べ、若手発明家たちの多様な挑戦が次世代への刺激になっていると話しました。
自身も2023年に同賞を受賞したロシャさんは「若い発明家同士がつながり、支え合えることが素晴らしいです。分野もアイデアもこれほど違うのに、それぞれが社会に変化を生み出していることに本当に感動します」と語りました。
EPOのルイス・ベレンゲル広報担当は、今回の受賞者たちについて「現実の課題に科学と技術で挑む若いイノベーターの存在を、公の場でしっかり評価することが目的です」と説明しました。さらに「こうした若い才能は、より良く、安全で、賢く、そして持続可能な世界のための解決策を探しています。その重要性について、社会の認識を高めたい」と話しています。
ヤング・インベンターズ・プライズは、2022年に欧州特許庁が創設した、30歳以下を対象とする賞です。若い世代が主導するイノベーションの力を可視化し、持続可能な未来づくりに貢献する優れた発明を称えることを目的としています。今年からは、同賞が隔年で独立して授与される方式となりました。国際ニュースとしての側面だけでなく、科学技術やキャリアに関心のある読者にとっても、気候変動や社会課題にどう向き合うかを考える手がかりになる出来事と言えそうです。
Reference(s):
Chinese entrant wins EPO Young Inventors' Prize for the first time
cgtn.com








