樹木の「幹の呼吸」が気候予測を冷やす?中国本土主導の国際研究
樹木の幹が行う「呼吸」が、地球温暖化の予測を静かに変えるかもしれません。中国本土の科学者が主導する国際研究チームが、幹の呼吸の熱的適応を説明し予測する初の理論モデルを提示し、その存在が世界中の森林で広く見られることを示しました。研究成果は、科学誌Scienceにオンライン掲載されています。
幹の呼吸の適応が「予測を冷やす」
今回の研究は、樹木の幹が気温の変化に合わせて呼吸のしかたを変える「熱的適応」に着目しています。この適応を考慮すると、将来の地球温暖化に関する一部の気候予測は、従来のモデルよりも控えめな温度上昇を示す可能性があると指摘されています。言い換えれば、幹の呼吸のふるまいをより現実的に組み込むことで、気候予測が「冷やされる」方向に修正されうるということです。
中国本土主導の国際チームが理論モデルを構築
研究を率いたのは、中国本土の科学者を中心とする国際研究チームです。チームは、樹木の幹の呼吸がどのように気温に適応していくのかを説明し、将来の変化を予測できる理論モデルを初めて提案しました。これにより、幹の呼吸と気温との関係を、経験則ではなく理論に基づいて扱うための基盤が整ったかたちです。
そもそも幹の呼吸とは、樹木が生きるために幹の内部で行っているガス交換のことで、二酸化炭素の放出とも深く結びついています。気温が上がると呼吸が活発になり、二酸化炭素の放出が増えると考えられてきましたが、実際には樹木が長期的に環境へ適応する過程があり、その結果として呼吸の強さが変化しうるとされています。
世界規模データベースで熱的適応を検証
チームは理論をつくるだけでなく、植物の幹の呼吸に関する世界規模のデータベースも構築しました。さまざまな地域や森林タイプから集めた観測データを整理し、比較可能な形にまとめたことで、幹の呼吸における熱的適応が、特定の地域に限られた現象ではなく、世界中の森林で広く見られるプロセスであることを確認したとされています。
理論モデルとグローバルな観測データを組み合わせることで、幹の呼吸が温暖化にどう反応しうるかを、これまでより精密に扱える可能性が開けてきました。これは、地球規模の炭素循環や気候システムを理解するうえで重要な一歩といえます。
気候予測と私たちの見方に与える静かな揺らぎ
幹の呼吸の熱的適応を考慮すると、森林から大気中へ放出される二酸化炭素の見積もりが変わり、その結果として気候モデルが示す将来の温度上昇が「冷える」方向に調整される可能性があります。ただし、それは地球温暖化のリスクがなくなるという意味ではなく、予測の不確実性の一部が新たなかたちで整理されるということでもあります。
今回の国際研究は、気候変動という大きなテーマの裏側で、樹木の幹という一見地味な存在が重要な役割を担っていることを思い出させます。気候モデルの精度を高めるには、こうした細かなプロセスを一つひとつ理解し、更新していく作業が欠かせません。新しい理論モデルと世界規模のデータベースが、これからの気候予測と森林研究にどのような変化をもたらしていくのか、静かな注目が集まりそうです。
Reference(s):
Study finds tree trunk breathing adaptation cools climate predictions
cgtn.com








