ファーウェイ開発者大会2025 HarmonyOS 6とエージェント戦略でエコシステム加速
中国・東莞市の松山湖で2025年6月20日に開幕したファーウェイ開発者大会2025(HDC 2025)では、HarmonyOS 6の開発者向けベータ版が発表されるなど、中国発スマートOSエコシステムが一段と加速し、世界のスマートOS競争の新たな局面が浮かび上がりました。
HarmonyOSエコシステム、なぜいま注目か
HDC 2025は、世界各地の技術者や企業関係者が集まる場として開催され、ファーウェイのスマートOSであるHarmonyOSエコシステムの現状と今後の方向性が示されました。ファーウェイは、HarmonyOSをオールシナリオ型インテリジェントOSと位置づけ、スマートフォンだけでなく、PCや日常生活のさまざまな場面をつなぐ基盤として強化しています。
HarmonyOS 6:ミリ秒レベルの応答とAI統合
コンシューマービジネスグループCEOのYu Chengdong氏は、基調講演でHarmonyOS 6の開発者ベータ版を正式に発表しました。今回のバージョンは、従来から一歩進んだ知能化OSとして、次のような特徴を打ち出しています。
- ミリ秒レベルの低遅延な操作レスポンス
- OSレベルでのAI機能の強化
- HarmonyOS Multi-Agent Framework(HMAF)の導入
HMAFは、複数のAIエージェント(特定のタスクを担うAI)をOSの中核に組み込み、人とデバイスの協調を高める枠組みです。ファーウェイは、この仕組みにより、デバイス側の主体性を高め、より自然なユーザー体験を実現できるとしています。
Tap-to-Shareとクロスデバイス作業の強化
HarmonyOS 6では、日常的な操作性を高める新機能も強調されています。代表的なのが、スマートフォンとPCの間でファイルをシームレスにやり取りできるTap-to-Shareです。対応機器同士をかざしてタップするだけで、ファイル共有が完了する形を想定しています。
さらに、端末をまたいだコンテンツ挿入も可能となり、たとえばスマートフォンでコピーした内容をPC側の文書にそのまま貼り付けるといった、マルチデバイス環境での作業効率向上が狙われています。
駐車・給油・プライバシー保護まで広がる日常利用
OSはデバイス内にとどまらず、生活インフラとも結びつきつつあります。HarmonyOS 6は、スマート駐車や給油時のスピード決済といった日常シーンにも対応するほか、プライバシー保護機能の強化も打ち出しています。ユーザーの利便性と安全性を同時に高めることがテーマとなっています。
HarmonyOS Agent Framework:アプリからエージェントへ
今回のHDC 2025では、OS本体だけでなく、新たな開発フレームワークとしてHarmonyOS Agent Frameworkも正式に発表されました。この枠組みのもとで、50以上のHarmonyOSエージェントが、まもなく登場する予定です。
エージェントは、特定の領域やシーンに最適化された賢いサービスの単位と位置づけられています。対象分野は、
- 電子商取引(JD.comなど)
- メディア(Sinaなど)
- 教育
- 医療・ヘルスケア
- 金融
など多岐にわたります。これらのエージェントがHMAFを通じてOSに深く統合されることで、ユーザーはアプリを個別に起動するのではなく、状況に応じて最適なサービスが前面に出てくるような体験を想定できます。
オープンソース基盤OpenHarmonyの急成長
HarmonyOSの土台となっているのが、オープンソースプロジェクトのOpenHarmonyです。Yu氏によると、OpenHarmonyはすでに1億3,000万行を超えるコード、約9,000人のコミュニティ貢献者、1,200種類以上のソフトウェア・ハードウェア製品を擁する規模に成長しています。
世界のオープンソースOSの中でも成長スピードが速いプロジェクトの一つと位置づけられ、幅広い機器への展開が進んでいます。
同氏によれば、現在HarmonyOS 5は40を超えるファーウェイ製デバイスで動作しており、260以上の新機能が追加されました。216万件を超えるユーザーからの要望にも対応したとされ、既存ユーザー向けの改善サイクルも回っています。
開発者800万人、3万のアプリとメタサービス
エコシステム拡大のもう一つの柱が、開発者コミュニティです。ファーウェイはHongfeiやYaoxingといった支援プログラムを通じて、HarmonyOS向け開発者の参加を積極的に呼びかけてきました。
ファーウェイによれば、登録開発者数はすでに800万人に達し、3万を超えるアプリやメタサービスが開発中とされています。メタサービスとは、単体アプリというよりも、複数の端末やシーンをまたいで機能するサービス単位とイメージすると分かりやすいでしょう。
企業利用:3,800万以上のビジネスに浸透
HarmonyOSは、コンシューマー向けだけでなく、企業分野にも広がっています。ファーウェイによると、すでに3,800万以上のビジネスでHarmonyOSが活用されており、オフィスの業務効率やセキュリティの向上に寄与しているといいます。
企業側にとっては、マルチデバイス環境を前提とした業務アプリケーションの構築や、エージェントを活用した業務フローの自動化など、新しい設計の選択肢が増えていく可能性があります。
ポストアプリ時代の伏線としてのHarmonyOS
HDC 2025で示された方向性からは、ファーウェイがHarmonyOSを単なるスマートフォンOSの枠を超えて、全場面・全デバイスをつなぐプラットフォームとして位置づけている姿が見えてきます。
ユーザーが一つひとつアプリを探して開くのではなく、OSとエージェントが状況を理解して、必要なサービスを前に出してくれる。こうしたポストアプリ的な発想は、グローバルなスマートOS競争の中でも、今後一つの潮流になるかもしれません。
日本の読者にとっての意味
日本から見ても、海外のOSエコシステムの動きは無関係ではありません。スマートデバイスが生活や仕事の前提となるなかで、どのOSがどのような形でAIと結びつき、エコシステムを拡大していくのかは、中長期的な産業構造にも影響しうるテーマです。
今回のHDC 2025で示されたHarmonyOS 6と関連技術の方向性は、
- AIをOSレベルでどう統合するか
- アプリ中心からエージェント中心へと発想を転換できるか
- オープンソースコミュニティと企業がどう共創するか
といった問いを投げかけています。オープンソース協力と開発者コミュニティを重視するHarmonyOSの戦略は、ポストスマートフォン時代のデジタル基盤を考えるうえで、一つの重要な参考事例になりそうです。
Reference(s):
cgtn.com







