上海国際映画祭ドキュメンタリー審査委員長キム・ロンジノットが語る「本物の映画」 video poster
第27回上海国際映画祭で、ドキュメンタリー部門の審査委員長を務めているのは、英国の映画監督キム・ロンジノットさんです。CGTNのインタビューで彼女は、なぜこの映画祭に惹かれたのか、そしてハリウッドで語られる「スーパーヒーロー疲れ」への見方、さらに観客の心に本当に響く映画とは何かについて語りました。
第27回上海国際映画祭とキム・ロンジノット
国際ニュースとしても注目される上海国際映画祭は、アジアを代表する映画イベントのひとつです。そのドキュメンタリー部門で今年、審査委員長を務めるのがキム・ロンジノット監督です。
ロンジノット監督は、社会の周縁に置かれた人々や、見えにくい現実を静かに見つめる作品で知られるドキュメンタリー作家です。そんな彼女が上海の映画祭を選んだ背景には、「観客と本気で向き合おうとする場」への期待があると語っています。
彼女を映画祭に惹きつけたもの
インタビューでロンジノット監督は、この映画祭が持つ「開かれた空気感」に惹かれたと話しています。映像表現の多様性を歓迎し、海外からの作品や声にも耳を傾ける姿勢を評価しているといえます。
- 新しい才能を積極的に紹介するプラットフォームであること
- ドキュメンタリーを「周辺ジャンル」ではなく、映画の中心に置こうとする姿勢
- 観客と作品、作り手が直接対話できる機会があること
こうした点が、経験豊かなドキュメンタリー監督にとっても「挑戦しがいのある場」になっていることがうかがえます。
ハリウッドの「スーパーヒーロー疲れ」をどう見るか
インタビューでは、近年よく語られる「スーパーヒーロー疲れ」についても話が及びました。ハリウッドでは、シリーズものや”ヒーロー映画”が続いた結果、観客の側に疲労感やマンネリ感が広がっていると言われています。
ロンジノット監督は、この現象を単に「ジャンルの飽き」としてではなく、観客が求めるものの変化として捉えているようです。つまり、どれだけ派手なアクションや映像技術があっても、そこに「自分とつながる何か」が見いだせなければ、心に残りにくいのではないか、という視点です。
「本物」に感じられる映画が心に響く
ロンジノット監督が強調したのは、映画が「本物」だと感じられるかどうかです。彼女によると、観客がスクリーンの中に自分の一部を見つけられたとき、その作品は強く響きます。
- 登場人物の感情や葛藤が、どこか自分の経験と重なる
- 物語が予定調和ではなく、驚きや発見を含んでいる
- 作り手の「こう見てほしい」という押しつけより、観客が自分で感じ、考えられる余地がある
こうした要素が重なったとき、観客は映画を「消費するもの」ではなく、「自分の人生と響き合う出来事」として受け止めやすくなります。ロンジノット監督は、ドキュメンタリーであれフィクションであれ、その核心は同じだと示唆しています。
ドキュメンタリーが持つ今の意味
2025年の今、国際ニュースや社会問題をめぐる情報は、SNSや動画プラットフォームを通じて瞬時に拡散します。そのなかで、ドキュメンタリー映画は「ゆっくり考えるためのメディア」として、独自の役割を持ち続けています。
ロンジノット監督が率いるドキュメンタリー部門は、派手な演出よりも、現実をどう丁寧に見つめるかという視点で作品を選ぶと考えられます。これは、スーパーヒーロー映画とは違う形で、人々が自分自身や社会を見つめ直す機会をつくる試みでもあります。
私たちへの静かな問いかけ
今回のインタビューから浮かび上がるのは、「どんな映画を観たいか」という問いと同時に、「どんな世界を生きたいか」という、より深い問いかもしれません。
忙しい日常のなかで、映画は一時の娯楽として消費されがちです。しかしロンジノット監督の言葉を踏まえると、こうした問いかけが残ります。
- スクリーンに映る物語のどこに、自分は共感を覚えるのか
- 「本物」に感じられる瞬間は、どんなときに訪れるのか
- エンタメとしての映画と、現実を映す映画を、私たちはどう行き来しているのか
第27回上海国際映画祭のドキュメンタリー部門は、こうした問いを静かに投げかける場になっているようです。ニュースとしての「映画祭情報」を追うだけでなく、自分がどんな作品に心を動かされてきたのか、あらためて振り返るきっかけにもなりそうです。
Reference(s):
One-on-one with SIFF documentary jury president Kim Longinotto
cgtn.com








