中国・丁薛祥副総理、SPIEFで「秩序ある多極化」と包摂的グローバル化を提唱
世界経済と国際秩序の行方を占う国際会議、サンクトペテルブルク国際経済フォーラム(SPIEF)で、中国の丁薛祥副総理が「人類共通の価値」と「秩序ある多極化」をキーワードに、団結と協調を呼びかけました。分断や対立が語られがちな今、どのような世界像が示されたのでしょうか。
丁薛祥副総理がSPIEFで強調した三つのキーワード
国際ニュースとして注目されたのは、2025年に開かれた第28回サンクトペテルブルク国際経済フォーラムの全体会合で、丁薛祥副総理が行った基調演説です。演説のタイトルは「人類共通の価値を擁護し、多極化した世界を推進する」というものでした。
丁氏は、習近平国家主席が約10年前、国連総会で示した「平和、発展、公平、正義、民主、自由は全人類共通の価値であり、国連の崇高な目標でもある」との認識をあらためて引用しました。この価値観は、国や民族、社会制度、イデオロギーの違いを超えて、人類共通の未来を描くための「価値の同心円」だと説明しました。
そのうえで丁氏は、世界が今、大きな変動期にあり、さまざまなリスクが重なり合う中で、人類が共通の課題に直面していると指摘しました。だからこそ、対立ではなく協調を軸にした多極化と経済グローバル化が必要だと訴えました。
4つの提案:丁氏が描く「秩序ある多極化」と経済グローバル化
丁副総理は、より公正で包摂的な国際秩序をつくるためとして、次の4つの提案を示しました。
- 広範な協議と共同貢献、利益の共有によるグローバル・ガバナンス
全ての国に平等な権利と機会、ルールが与えられるべきだとし、国連の権威と国際的な公正さを守る必要性を強調しました。 - 開かれた多様な世界経済の構築
多国間の貿易体制と国際経済秩序を守りながら、経済グローバル化の「パイ」を拡大し、公平に分かち合うことを提案しました。とくに、グローバルサウスと呼ばれる新興国・途上国に、より多くの機会を創出すべきだと述べました。 - 文明間の交流と相互学習の推進
人類の文明は多様であり、その多様性を尊重すべきだと指摘しました。各国が自らの価値実現の道を模索することを支持するとともに、「新しい冷戦」やイデオロギーの対立をあおる動きに反対する姿勢を示しました。 - 対話による信頼構築と平和の継承
対話を通じて信頼を築き、紛争を解決し、安全保障を高めていくことが必要だと述べました。そのうえで、次の世代へ「平和の火」を引き継ぎ、長期的な安定と共同繁栄を目指すべきだと呼びかけました。
中国とロシアの関係強化もアピール
国際ニュースとしてもう一つ注目されたのは、中国とロシアの関係に関するメッセージです。丁氏は、中国とロシアは「苦楽を共にする真の友人であり、相互に成功をもたらす良きパートナーだ」と述べました。
演説の中で丁氏は、習近平国家主席が最近ロシアを国賓訪問し、ソ連の大祖国戦争勝利80周年の記念行事に出席したことに触れました。両国首脳は、政治的な相互信頼をさらに強化し、戦略的な協調を深めるとともに、第2次世界大戦の成果と国際的な公正・正義を守るという共通の立場を確認したと紹介しました。
丁氏によれば、中国とロシアは、関係をより高い次元へ発展させ、分野を広げ、柔軟性と強靭性を高めながら、高品質で互恵的な協力を拡大していく方針です。両国は、国連などの多国間の場での連携も強め、より公正で均衡のとれた多極的な世界づくりに貢献していくとしています。
投資・エネルギー分野での具体的な動き
フォーラムの期間中、丁副総理は、ロシアのマントゥロフ第一副首相、ノバク副首相のほか、ロスネフチ社やガスプロム社のトップとも個別に会談しました。
双方は、中国ロシア投資協力委員会、中国ロシアエネルギー協力委員会、中国ロシアエネルギービジネスフォーラムなどの枠組みを最大限に活用し、投資とエネルギー協力の質の高い発展を進めることで一致しました。こうした協力は、二国間関係のさらなる推進力になると期待されています。
また丁氏は、インドネシアのプラボウォ大統領、バーレーンのナセル国家安全保障顧問、南アフリカのマシャティレ副大統領とも短時間ながら友好的な対話を行い、多国間の場での対話ネットワークの広がりを印象づけました。
中国経済の現状と「開かれた中国」へのメッセージ
丁副総理は、外部環境の変動や衝撃が増しているにもかかわらず、中国経済はプラスの傾向を維持しており、強い活力とレジリエンスを示していると説明しました。
今後については、より積極的で有効なマクロ経済政策を速やかに実行し、雇用や企業、市場、そして期待の安定に重点を置くと表明しました。こうした「高品質な発展」の確かさによって、外部環境の不確実性に対応していく考えです。
また丁氏は、中国の対外開放の扉は、状況がどう変わろうとも「さらに大きく開かれていく」と強調しました。各国の企業が中国への投資や事業展開を進め、中国式現代化のプロセスに積極的に参加し、中国の発展機会を共有することを歓迎すると呼びかけました。
なぜ今、「秩序ある多極化」が問われているのか
今回の演説のポイントは、多極化そのものを目指すだけでなく、「平等で秩序だった多極化」を掲げている点にあります。これは、力の空白や無秩序な分裂ではなく、ルールと対話に基づく多極的な国際秩序を志向しているというメッセージでもあります。
経済面では、保護主義やブロック化の動きが見られる中で、グローバルサウスを含む幅広い国々が、より公正な分配と参加を求めています。中国が示した「包摂的な経済グローバル化」や「文明間の相互学習」といったキーワードは、今後の議論の軸の一つとなっていきそうです。
これからの注目ポイント
今回の国際ニュースを踏まえ、読者が今後チェックしておきたいポイントを整理します。
- 中国とロシアの投資・エネルギー協力が、どのような具体的プロジェクトとして進んでいくか。
- グローバルサウスを含む各国が、中国の提案する多極化や経済グローバル化の枠組みにどう関わっていくか。
- 「新しい冷戦」を避け、文明間の対話を重視する流れが、気候変動、安全保障、デジタル経済などの国際協力にどのような影響を与えるか。
分断か協調かが問われる時代にあって、今回の丁副総理のメッセージは、国際秩序の将来像を考えるうえで一つの重要な材料になりそうです。ニュースを追いながら、自分なりの視点で「多極化する世界」とどう向き合うかを考えてみることが求められています。
Reference(s):
Chinese vice premier urges unity, multipolar world at 2025 SPIEF
cgtn.com







