香港・啓徳スポーツパークの熱気 2025年全国運動会へウォームアップ
朝のランナーの笑顔、自転車で滑るように進む通勤者、ピンポン玉が弾む軽快な音、そして啓徳スポーツパークをつくり上げてきた建設チームの誇らしげな表情。こうした日常の一場面が重なり合い、香港のエネルギーは2025年の第15回全国運動会(National Games)に向けて静かに熱を帯びています。
香港の日常が「ウォームアップ」に
香港では今、早朝のジョギングやサイクリング、街角の卓球スペースなど、身近なスポーツの風景そのものが大会へ向けたウォームアップのようになっています。大規模イベントの準備と聞くと、派手なセレモニーやスタジアム建設に目が向きがちですが、実際に熱を生み出しているのは、こうした市民のささやかな運動習慣です。
「Hong Kong Warms Up」という言葉のとおり、都市全体が同じリズムで動き出しているように感じられます。ランナーやサイクリストの一歩一歩が、全国運動会へと向かう香港のストーリーを刻んでいるとも言えます。
唯一の新設メイン会場・啓徳スポーツパーク
その日常の熱気を受け止める象徴的な存在が、啓徳(Kai Tak)スポーツパークです。第15回全国運動会のメイン会場の中で、唯一の新設となるこの施設は、香港の活力と ambition(野心)を体現するプロジェクトとして注目されています。
かつて工事現場だった場所には、今、完成に向けて磨き上げられたスタジアムやアリーナが姿を現しつつあります。建設に携わってきた人たちにとって、スポーツパークの完成は単なる「仕事の終わり」ではなく、「都市の未来を形にした瞬間」として大きな誇りにつながっています。
開かれた「都市のスタジアム」というコンセプト
啓徳スポーツパークは、大会期間中だけ選手が使う施設ではなく、普段から市民が立ち寄れる「街の公園」としての役割も意識して設計されています。広い歩行空間や緑地、周辺の商業エリアとつながる動線など、日常生活の延長線上にスポーツがある姿をイメージしたつくりになっているのが特徴です。
こうした発想は、世界各地の都市で進む「スタジアムの公共空間化」とも重なります。巨大施設を閉じた空間として扱うのではなく、朝はランナーのコース、昼は家族連れの憩いの場、夜はイベントや試合の舞台と、時間帯ごとに顔を変える場所として活用していく狙いがうかがえます。
選手の情熱と建設チームの粘り強さが重なり合う
全国運動会は、各地から集まるトップアスリートにとって、自らの実力を示す重要な舞台です。一方で、その舞台を支えるのは長期間にわたって建設や準備を進めてきた人たちの粘り強さです。香港では、選手の情熱と建設チームの perseverance(忍耐力)が、ひとつの物語として語られ始めています。
啓徳スポーツパークの周辺では、次のような人々の思いが交差しています。
- 毎朝、スタジアムの外周を走りながら、自分も大会の一部になったように感じるアマチュアランナー
- 工事の進捗を横目に通学し、スポーツへの憧れをふくらませる子どもたち
- 完成した施設でプレーする日を思い描きながらトレーニングを続ける選手たち
巨大なスポーツイベントというと、華やかな開会式やメダル争いに目が行きがちですが、その裏側には数えきれないほどの「日常」が積み重なっています。香港の物語は、その日常を可視化している点で、都市とスポーツの関係を考えるうえで示唆に富んでいます。
都市としての狙い:スポーツがつくる新しい香港の姿
啓徳スポーツパークが全国運動会のメイン会場として位置づけられたことは、香港が「スポーツ都市」としての顔を強めていこうとする流れとも重なっています。スポーツイベントは、単に観光客を呼び込む装置ではなく、都市のブランドや暮らし方を形づくる要素でもあります。
たとえば、次のような変化が期待されています。
- 若い世代を中心に、スポーツやフィットネスに関わるライフスタイルが広がる
- 大会運営やボランティアを通じて、多様な人が地域コミュニティに関わる機会が増える
- スポーツテックやデジタル観戦など、新しいサービスやビジネスの実験の場になる
日本から見ても、こうした動きは「スポーツをどう都市のインフラと結びつけるか」という問いとして参考になります。スタジアムや競技施設を、いかに日常の延長線上で使いこなすか。その成否は、イベント後の街の姿を大きく左右します。
一過性のイベントで終わらせないために
大規模スポーツイベントには、終了後に施設が十分に活用されないまま残ってしまう「レガシー問題」という課題もあります。香港にとっても、啓徳スポーツパークをどう日常の場として根付かせるかは重要なテーマになります。
鍵になるのは、次のような視点です。
- 大会前から市民が使い慣れた場所にしておくこと
- プロスポーツだけでなく、市民イベントや文化イベントにも開くこと
- アクセスや料金設定を含めて、さまざまな層が利用しやすい仕組みを整えること
こうした工夫が進めば、全国運動会が終わった後も、啓徳スポーツパークは香港の人々にとって「誇りの場所」であり続けるはずです。
2025年全国運動会に向けて、これから注目したいポイント
2025年に開かれる第15回全国運動会に向けて、香港はすでにウォームアップを終え、本格的な準備段階に入っています。今後、私たちがニュースや現地の声を追いかけるうえで、注目したいポイントを整理しておきます。
- 啓徳スポーツパークの「使われ方」:大会前後で、市民利用のあり方がどう変化していくか。
- デジタル観戦体験:チケット購入や配信、スタジアムでの演出などに、どのような新しい仕組みが導入されるか。
- 地域とのつながり:近隣エリアの商業施設や公共交通との連携が、どこまでスムーズに機能するか。
笑顔で走るランナーや、完成した施設を見上げる建設チームの姿からは、香港がこの大会を単なる一度きりのイベントではなく、自分たちの物語を前に進めるきっかけとして捉えていることが伝わってきます。
「Hong Kong Warms Up」。2025年の第15回全国運動会が幕を開ける頃、啓徳スポーツパークは、すでに多くの人の日常と記憶が折り重なった場所になっているかもしれません。そこに、スポーツと都市がともに成長していく未来のヒントが見えてきます。
Reference(s):
cgtn.com








