中国のグリーン成長:自然が支えるエネルギー効率と低炭素社会
今年6月、中国で実施された2025年全国省エネ宣伝週間(6月23〜29日)と全国低炭素日(6月25日)は、エネルギー効率向上と低排出型の成長に向けた同国の姿勢を改めて示すものとなりました。本記事では、その中心にある自然の力と大規模プロジェクトの動きを整理します。
省エネ宣伝週間と全国低炭素日が映し出すもの
2025年の全国省エネ宣伝週間と全国低炭素日は、エネルギーをいかに効率よく使うか、そしていかに排出を減らすかに焦点を当てたキャンペーンとして実施されました。これらの取り組みは、中国の低炭素戦略の方向性を国内外に発信する場にもなっています。
注目されるのは、こうした取り組みの土台に自然生態系が据えられている点です。森林、草原、湿地などの自然は、二酸化炭素を吸収・貯蔵する巨大なカーボンバンクとして位置づけられています。
森林・草原・湿地という巨大なカーボンシンク
中国では、森林や草原、湿地といった生態系が、低炭素戦略の核心として活用されています。カーボンシンクとは、二酸化炭素を大気から吸収し、貯蔵する炭素の受け皿のことです。
2024年の調査によると、中国の森林と草原は、毎年12億トンを超える二酸化炭素相当量を吸収しているとされ、その規模は世界で最も大きい水準にあります。エネルギー効率化や再生可能エネルギーの導入とあわせて、自然による吸収力が低炭素成長を支える柱になっています。
2022年から始まったカーボンシンクの実証地域
こうした自然の力を政策として生かすため、2022年には、中国の National Forestry and Grassland Administration(林業と草地を所管する当局)が、森林カーボンシンクのパイロット都市・県18カ所と、国有の森林カーボンシンク実証拠点21カ所を立ち上げました。
これらの地域では、次のような試みが進められているとされます。
- 森林や草原が吸収した二酸化炭素量を科学的に評価する仕組みづくり
- 吸収量をカーボンクレジットとして可視化し、取引につなげる制度設計
- 生態系の保全と地域の産業・雇用を両立させるビジネスモデルの模索
パイロットや実証拠点の成果は、高品質なカーボンシンク開発の道筋を示すものとして位置づけられています。
自然の力と並走する大規模エネルギープロジェクト
自然のカーボンシンクを補完する存在として、大規模インフラプロジェクトも重要な役割を担っています。その一つが、西部の電力を東部へ送る西電東送に代表される送電プロジェクトです。
再生可能エネルギーが豊富な地域から、人口や産業が集中する需要地へ電力を送り届けることで、全国レベルでのエネルギー効率を高めながら、排出削減も同時に進める狙いがあります。自然による吸収とエネルギーシステムの効率化が、二つの車輪として組み合わさっている構図です。
評価と取引で進む「生態系×低炭素成長」の統合
各地の実証プロジェクトでは、生態系のカーボンシンク機能を評価し、取引につなげる仕組みづくりが進められています。政策主導で進むカーボンシンク評価と取引は、おおまかに次のような流れを想定したものです。
- 森林や草原、湿地が吸収した二酸化炭素量を測定・算定する
- その吸収量をカーボンシンクとして認証し、クレジットとして登録する
- 企業や地域がクレジットを購入し、自らの排出削減やオフセットに活用する
こうした仕組みによって、生態系の保全がコストではなく価値として認識され、低炭素成長と自然保護の一体的な推進が図られています。
日本の読者への問いかけ
2025年の全国省エネ宣伝週間と全国低炭素日は、中国が自然を前面に押し出した低炭素戦略を進めていることを示す象徴的な出来事となりました。2025年12月の時点で振り返ると、自然生態系の活用とエネルギー効率化が同時並行で進められていることが見えてきます。
日本でも、森林や農地、湿地といった自然をどう評価し、地域の成長戦略や企業の脱炭素と結びつけていくかが重要なテーマになりつつあります。中国のカーボンシンクの実証や、西部から東部への送電プロジェクトは、自然を起点とした低炭素成長を考えるうえで、一つの参照事例と言えるでしょう。
自然を守りながら、どのようにしてエネルギー効率を高め、成長モデルを更新していくのか。国際ニュースとしての動きを追いつつ、自分たちの足元に引き寄せて考えてみるタイミングが来ているのかもしれません。
Reference(s):
Greening China: Nature drives energy efficiency, low-carbon growth
cgtn.com







