サマーダボスで気候データが「感情」に エコアートが開く新しい伝え方 video poster
今年6月、北部の天津市で開かれた世界経済フォーラム(WEF)の「第16回ニュー・チャンピオンズ年次総会(サマーダボスフォーラム)」で、気候変動のデータを「感情」に変えるアート作品が注目を集めました。オランダ出身のエコロジカルアーティスト、タイス・ビアステーカーさんの「Fungal Faculty」です。
サマーダボスで出会う、環境データの新しい顔
サマーダボスフォーラム2025は、2025年6月24〜26日に北部の天津市で開催されました。その会場で紹介された「Fungal Faculty」は、環境や気候のデータをもとにしたインスタレーション(体験型の作品)です。鑑賞者は、単にグラフや数字を見るのではなく、データが形や動き、空間として立ち上がる様子を体感します。
ビアステーカーさんは、複雑な科学データを、一般の人が直感的に理解できる「体験」に変えることで知られています。今回の作品でも、気候変動や環境の変化を示す数値を、その場で「感じられる」かたちに変換することを目指しました。
「人々はデータの意味を理解できていない」
ビアステーカーさんは、中国国際テレビ(CGTN)のインタビューで、現在の環境問題をめぐる「ギャップ」についてこう語りました。
「今、世界で最も重要なのは、環境がどうなっているかを示す大量のデータと、多くの解決策があるのに、人々が何が起きているのか、そしてそのデータが何を意味しているのかを理解できていないことです。」
さらに、「そこで私がしているのは、そのデータを生きた彫刻として立ち上げ、人々がデータを『感じられる』ようにすることなのです」と続けました。数字や専門用語だけでは届きにくい危機感を、アートという別のチャンネルで届けようとしていると言えます。
なぜ「データを感じること」が大事なのか
気候変動や環境問題については、これまでにも多くの国際ニュースや報告書が発表されてきました。しかし、私たちの日常の行動や社会の選択につなげるには、「知識」だけでなく「実感」が必要だと指摘されます。
- 科学的な気候データは専門的で、一般の人には理解しづらい
- ニュースで危機感は共有されても、「自分ごと」になりにくい
- 行動の変化は、頭で理解したときよりも、心が動いたときに起こりやすい
ビアステーカーさんの試みは、このギャップを埋めようとするものです。データをアートに変換することで、環境の変化が抽象的な数字ではなく、「いま目の前で起きている出来事」として感じられるようになります。
サマーダボスが映し出す、アートとテックの交差点
世界経済フォーラムのサマーダボスフォーラムは、テクノロジーやイノベーション、新興企業などに焦点を当てた会合として知られています。そうした場でエコロジカルアートが紹介されること自体、環境問題の「伝え方」が変わりつつあることを示しています。
環境データを扱うのは、研究者や政策担当者だけではありません。企業の経営、都市づくり、教育、そして私たち一人ひとりのライフスタイルにも関わってきます。ビアステーカーさんのようなアーティストが関わることで、
- 専門家と市民のあいだのコミュニケーションが滑らかになる
- 気候変動をめぐる議論に、感性や想像力の視点が加わる
- 「持続可能性」をめぐる新しいアイデアが生まれやすくなる
といった効果も期待できます。
日本の私たちにとってのヒント
日本でも、気候変動やエネルギー転換、生物多様性の保全などに関するデータは急速に蓄積されています。一方で、「それが自分の生活とどうつながるのか」が見えにくいという声も少なくありません。
ビアステーカーさんの取り組みは、次のようなヒントを与えてくれます。
- データの「正しさ」だけでなく、「伝わり方」をデザインする
- グラフや数字だけでなく、体験・物語・空間として情報を届ける
- アートやデザインの力を、環境コミュニケーションに積極的に取り入れる
学校教育や科学館、企業のサステナビリティ活動、自治体の環境施策など、さまざまな場面で応用できる視点です。データがあふれる時代だからこそ、「どう感じてもらうか」を考えることが、次の一歩につながるかもしれません。
「Fungal Faculty」が投げかける問い
サマーダボスフォーラム2025で紹介された「Fungal Faculty」は、単なる印象的なインスタレーションにとどまらず、私たちに静かな問いを投げかけています。
- 自分は、環境の変化を数字としてではなく、実感として捉えられているか
- 日々目にするニュースやデータを、行動や選択につなげられているか
- 社会として、科学とアートの協働をどこまで進められるか
環境危機が深刻化する中で、データをどう読み解き、どう伝え合うのか。サマーダボスでのこの小さなアート作品は、2025年の世界が直面する大きなテーマを象徴しているようにも見えます。
Reference(s):
Artist at Summer Davos: Turning climate data into public emotion
cgtn.com








