中国・四川に世界最高所の太陽観測所 2.5メートル望遠鏡「WeHoST」が新段階
中国南西部の四川省ダオチェン県で、世界最高所となる太陽観測所の建設が新たな段階に入りました。2.5メートル口径の太陽望遠鏡「WeHoST」の支援インフラ工事が始まり、高精細な太陽観測に向けた環境づくりが本格化しています。
標高4,700メートル、世界最高所の太陽観測サイト
今回整備が進むのは、中国南西部の四川省ダオチェン県にある標高4,700メートルの無名の山です。大気の安定性が高く、太陽観測に適した条件を備えていることから、観測拠点として選ばれました。
この地点には、広視野・高解像度太陽望遠鏡「WeHoST(Wide-field and High-resolution Solar Telescope)」が設置される予定で、完成すれば世界で最も高い場所にある太陽観測所となる見通しです。世界トップレベルの観測データを取得するための「土台」として期待されています。
国家プロジェクト「WeHoST」とは
WeHoSTは、2.5メートル口径の太陽望遠鏡です。中国の南京大学が中心となり、中国科学院傘下の南京天文光学技術研究所と雲南天文台が協力する、国家レベルの研究装置プロジェクトとして進められています。
望遠鏡本体の建設は2022年に正式に始まりました。現在は、山頂までの道路や電力・通信設備などの支援インフラ整備と望遠鏡の組み立てが段階的に進んでおり、2026年末までの完成を目指しています。その後、システム全体の試運転や調整が行われ、本格観測に入る計画です。
完成すれば、WeHoSTは世界最大の「軸対称型」太陽望遠鏡となる予定で、そのサイズと設計が、これまでにない精度の太陽観測を可能にするとされています。
高所×広視野×高解像度が生む「新しい目」
WeHoSTの特徴は、「広い視野」と「高い空間分解能(細かい構造を見分ける能力)」を同時に実現しようとしている点です。
- 太陽表面を広い範囲で一度にとらえる広視野
- 細かな磁場構造やプラズマの動きを詳細に追える高解像度
- 複数の波長で同時に観測できるマルチバンド撮像
- 太陽の磁場をとらえる観測機能
こうした機能を組み合わせることで、太陽表面から外層の大気までを立体的かつ連続的に観測できる「新しい目」が生まれます。これは、単一の望遠鏡ではこれまで難しかったアプローチです。
太陽フレアやコロナ質量放出の「なぜ」に迫る
WeHoSTが特に狙うのは、大規模な太陽現象の起源とエネルギー解放メカニズムの解明です。プロジェクトの説明によると、この望遠鏡は次のような研究に力を発揮すると期待されています。
- 太陽表面の活動領域がどのように生まれ、進化していくのか
- 太陽フレア(太陽表面で起こる大規模な爆発現象)の発生メカニズム
- コロナ質量放出(太陽の外層から大量のプラズマが放出される現象)の引き金となる磁場変化
こうした「太陽の暴れ方」を理解することは、基礎科学としての太陽物理学だけでなく、宇宙空間の環境変化を予測する上でも重要になりつつあります。
宇宙天気と地上社会への波及効果
太陽フレアやコロナ質量放出は、強い場合には地球周辺の宇宙環境を大きく変化させ、人工衛星や通信システムなどに影響を与える可能性があります。そのため、世界各地で太陽観測や宇宙天気の監視体制が強化されています。
標高4,700メートルの地点から得られる高精度の観測データは、太陽活動の理解を深めるだけでなく、将来の宇宙天気予報の高度化にもつながるかもしれません。中国で進むこの大型望遠鏡プロジェクトは、太陽のふるまいをめぐる国際的な研究の土台を広げる一つの試みといえます。
これから注目したいポイント
今後数年で、WeHoSTの建設はインフラ整備から望遠鏡本体の調整へと重心を移していきます。2026年末の完成とその後の試運転を経て、どのような初期成果が報告されるのかが注目されます。
また、得られた観測データをどのように国内外の研究者と共有し、太陽物理学や宇宙天気研究の発展につなげていくのかも重要なポイントです。世界最高所の太陽観測所から見えてくる太陽の姿は、私たちの「太陽観」にどんな更新をもたらすのか。2020年代後半の宇宙科学を語るうえで、覚えておきたいプロジェクトの一つになりそうです。
Reference(s):
China makes progress in building world's highest solar observatory
cgtn.com








