Synchron CEOが語るBCIの未来:中国の急成長とアップル連携、2040年代展望 video poster
脳とコンピューターをつなぐ「ブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI)」が、国際ニュースの注目テーマになっています。2025年に中国・天津で開かれた世界経済フォーラムの夏季ダボス会議で、米BCI企業Synchron(シンクロン)のトム・オックスリーCEOは、中国がこの分野で「非常に速いスピード」で前進していると語りました。アップルとの連携やAI活用の構想など、BCIを巡る最新動向が一気に浮かび上がっています。
2025年夏季ダボスで見えたBCIの現在地
オックスリー氏は、2025年に中国の天津市で開催された世界経済フォーラムの夏季ダボス会議に参加し、会場でCGTNの取材に応じました。脳とコンピューターを接続するBCI技術について、最新の取り組みと国際的な動向を語っています。
同氏は、BCI企業Synchronの最高経営責任者(CEO)兼創業者として、技術だけでなく、規制や国際競争も含めた「業界全体の行方」を見据えていることがうかがえます。
アップルと進める新インターフェース規格とは
インタビューで最も具体的に語られたのが、アップルとの協力です。Synchronは、アップルとともに「ヒューマン・インターフェース・デバイス(HID)」と呼ばれる新しい仕組みを活用しようとしています。これはBluetooth(ブルートゥース)の一種の通信プロトコルで、業界標準としてBCI企業が利用できるようにする構想だといいます。
この仕組みを使うことで、BCIデバイスは「脳からの制御信号」を直接、コンピューターやスマートフォンに送ることができるようになるとされています。これまでは、脳の信号をあたかもキーボードやマウスの入力であるかのように装置をだまして解釈させる必要がありましたが、今後はより自然な形で脳信号を扱えるようになるというわけです。
オックスリー氏は、このネイティブな統合によって、人と機械のインターフェースがよりシームレスで直感的なものになるとの見方を示しています。
ChatGPTとBCI、AIの「自然なシナジー」
Synchronは昨年、対話型AI「ChatGPT」を自社のBCIシステムに統合する計画も公表しています。オックスリー氏は、人工知能(AI)はBCIの未来において重要な役割を果たすと強調しました。
同氏によれば、BCIとAIの間には「自然なシナジー(相乗効果)」があります。特に、教師なし学習と呼ばれる手法を使うことで、未整理のままの脳データから意味のある信号を取り出すことが可能になると見ています。膨大で複雑な脳の活動パターンを、AIが自動的に読み解いていくイメージです。
BCIが脳から信号を取り出し、AIがそれを解釈して行動や意思に結びつける――こうした組み合わせが、次世代インターフェースの重要な柱になる可能性を示していると言えます。
中国で加速するBCI開発
国際的なBCI開発の状況について問われると、オックスリー氏は中国の動きに注目していると明かしました。同氏は「中国は非常に速いスピードで成長している」と述べ、BCI分野で企業の台頭が相次いでいると指摘します。
さらに、中国では複数のBCI企業が生まれつつあり、政府もこの技術について明確な戦略的ビジョンを持っているように見えると評価しました。BCIという新しい産業分野が、中国で「非常に速く」動いているように感じているとしています。
BCIはまだ黎明期にある技術ですが、こうした発言からは、中国を含む各国・地域が次世代インターフェースをめぐる主導権を意識し始めていることがうかがえます。
商用化は2040年代?まずは麻痺などの患者から
一方で、BCIが広く使われるようになるまでには、まだ時間がかかりそうです。オックスリー氏によると、埋め込み型BCIについては、現時点でいずれの企業も商用利用のための規制当局の承認を得ていません。
最初の応用先として同氏が想定しているのは、重度の麻痺や神経疾患を抱える人びとです。BCIを使って、日常生活のコミュニケーションやデジタル機器の操作を支援することが期待されています。
より大規模な普及については、2040年代ごろに始まる可能性があるとの見通しも示しました。Synchronが開発するカテーテルを用いた方式のように、体への負担が比較的小さい手法が発展すれば、「数万人」ではなく「数百万人」がBCIを受けられるようになるかもしれないとしています。
医療の先にあるBCIの未来像
オックスリー氏は、医療用途を超えたBCIの可能性についても楽観的な見方を示しています。同氏は、BCIが安全で使いやすいものになれば、「私たちが自分の脳を、いまよりもずっと良いかたちで使えるようになる」と述べています。
とはいえ、そうした世界がすぐに訪れるとは考えていません。「これがごく近い将来に起きると考える人もいるが、自分はそうは思わない」と述べつつ、技術が一定の水準に達した段階では、普及が一気に加速する可能性を示唆しました。
BCIが一般にも広がるとすれば、仕事のしかたや学び方、コミュニケーションのスタイルまで、大きな変化をもたらすことが考えられます。どのような場面で使うのか、プライバシーや安全性をどう守るのか――社会全体で考えるべき問いも、これから増えていきそうです。
- 脳信号を直接扱う新しいインターフェース規格の行方
- ChatGPTをはじめとするAIがBCIにもたらす役割
- 中国を含む各国・地域でのBCI研究・産業政策の動き
- 医療用途から一般利用へと広がるタイミングと条件
2025年の時点では、BCIはまだ実験段階にありつつも、国際的な取り組みが広がりつつある段階にあります。今回の発言は、その変化を象徴する一つのシグナルだと言えるでしょう。
Reference(s):
Synchron CEO: China's moving very quickly in brain-computer interface
cgtn.com








