電力いらずで建物を冷やす新素材 Greater Bay Area発の一層コーティング video poster
2025年現在、世界各地で猛暑や都市のヒートアイランドが課題となる中、電気を使わずに建物を冷やすことができる新素材が注目されています。中国南部のGreater Bay Areaの強みを生かして研究から実用化まで一気に進んだこのコーティング技術は、地球規模の熱問題に対する新しい選択肢になりつつあります。
電気を使わずに冷やすという発想
今回紹介するのは、建物に塗るだけで冷却効果が期待できる新しい素材です。特徴は、空調設備のような電力を必要としない点にあります。建物の外壁や屋根に一層コーティングするだけで、表面温度の上昇を抑え、室内環境をより涼しく保つことを目指しています。
従来の省エネ対策では、高効率エアコンや断熱材の導入など、設備や構造の大きな変更が必要になることが多くありました。一方、この新素材は塗布するだけというシンプルな形で導入できる可能性があり、既存の建物にも比較的容易に適用できる点が注目されています。
ヒントはサハラの銀アリ
この技術の着想源になったのが、サハラ砂漠に生息するサハラ銀アリです。過酷な直射日光の下でも体温の上昇を抑え、自らを冷やす能力を持つことで知られています。
研究者たちは、このサハラ銀アリの体の仕組みからヒントを得て、太陽光を効率的に反射し、熱のたまり方をコントロールする素材設計を進めてきました。その成果として生まれたのが、今回の一層コーティングによる冷却技術です。
自然界の生き物の生存戦略を工学に応用するアプローチは、バイオミミクリーと呼ばれます。今回の事例は、バイオミミクリーが都市の暮らしや建築の省エネにも直接つながり得ることを示す象徴的な例と言えそうです。
Greater Bay Areaの強みが実用化を後押し
この素材を生み出した企業は、Greater Bay Areaの強みを背景に、研究成果を短期間で実用化につなげました。Greater Bay Areaは、研究機関、製造拠点、スタートアップ企業などが密集し、試作から量産、市場投入までのプロセスを素早く回せるエコシステムが特徴とされています。
具体的には、次のような点が、新素材の実用化を後押ししたと考えられます。
- 大学や研究機関による基礎研究と企業の製品開発が近い距離にあること
- 試作品を迅速に作れる製造インフラが整っていること
- 都市開発や不動産分野での実証フィールドが確保しやすいこと
研究段階のアイデアを社会実装まで持っていくには、技術そのものだけでなく、実験の場や協力パートナーが欠かせません。今回の新素材は、地域のこうした強みがうまくかみ合った事例だと見ることができます。
一層のコーティングがもたらす現実的メリット
この冷却素材の特徴は、「一層のコーティングで効果を狙える」というシンプルさにあります。複雑な多層構造や特殊な施工を必要としないため、理論上は次のようなメリットが期待されます。
- 既存の建物にも後から塗布しやすい
- 大規模な改修工事を伴わずに導入できる可能性
- 電力に依存しないため、停電時や電力料金高騰時のリスク軽減につながる
もちろん、実際の効果は建物の構造、気候条件、塗布面積などによって変わります。それでも、「塗るだけで冷やす」というコンセプトは、住宅、オフィスビル、工場、倉庫など、さまざまな用途での応用を想像させます。
地球規模の熱問題への新しいアプローチ
近年、世界各地で高温の日が増え、熱波による健康被害や電力需要の急増が課題になっています。エアコンに頼るだけの対策では、電力消費や温室効果ガス排出の増加という新たな問題も生まれます。
その中で、電力を使わずに建物自体を「冷えやすくする」素材は、次のような意味を持ち得ます。
- エアコンの使用量を減らし、電力需要のピークを抑える助けになる
- 電力インフラが脆弱な地域や新興国でも導入しやすい可能性
- 高齢者や子どもなど、暑さに弱い人たちが暮らす住宅の安全性向上につながる
一つの素材で地球の熱問題がすべて解決するわけではありませんが、建物を「冷やす側」から「熱くなりにくくする側」へと発想を転換する技術として、重要なピースになりそうです。
私たちがこれから注目したいポイント
今回のGreater Bay Area発の新素材は、研究アイデアが実際の建物に届き始めていることを示す象徴的なニュースです。今後、次のような点に注目すると、この技術の意義がより見えてきます。
- どのような地域・気候で、どの程度の冷却効果が報告されるのか
- コストや耐久性など、長期的な運用面での評価
- 他の省エネ技術や再生可能エネルギーとの組み合わせ方
サハラ銀アリから着想を得た一層コーティングの物語は、自然の知恵と都市のテクノロジーが出会うことで、新しい暮らし方の選択肢が生まれることを示しています。建物を「どう冷やすか」を超えて、「そもそもどう熱くさせないか」を考えるきっかけとして、この技術の動向を追っていきたいところです。
Reference(s):
Life in the Land of Opportunities: No Power Needed? A New Way to Cool!
cgtn.com








