中国の科学者がペロブスカイト太陽電池で新材料 半導体光伏に前進
中国科学院・長春応用化学研究所の研究チームが、新しい「ラジカル自己組織化分子材料」を開発し、ペロブスカイト太陽電池の課題を同時に克服したと発表しました。再生可能エネルギーと半導体光伏技術に関心の高い読者にとって、2025年の重要な国際ニュースと言えます。
ニュースの概要:何が起きたのか
今回の成果は、ペロブスカイト太陽電池の中でも特に重要な「ホール輸送層」と呼ばれる部分に関するものです。研究チームは、以下の2つの問題を一つの新材料で乗り越えました。
- 性能が十分に出ないという課題
- 大面積で、しかも均一なホール輸送層を作るのが難しいという製造上の課題
新しいラジカル自己組織化分子材料を用いることで、これらの問題を同時に解決し、高効率なペロブスカイト太陽電池を実現したとされています。
ペロブスカイト太陽電池とは?
ペロブスカイト太陽電池は、次世代の半導体太陽電池として注目されている技術です。シリコン太陽電池に比べて、
- 印刷のようなプロセスで作りやすい
- 理論的に高い変換効率が期待される
- 軽量で柔軟なパネルも作りやすい
といった利点があります。一方で、性能の安定性や大面積での製造プロセスなど、実用化に向けた課題も多く残っていました。
鍵となる「ホール輸送層」のブレイクスルー
太陽電池は、光を電気に変える「発電層」だけでなく、その電気をスムーズに取り出すための「輸送層」も重要です。ホール輸送層は、プラス側の電荷を運ぶ役割を持っており、その性能や膜の均一さが、太陽電池全体の効率と安定性を左右します。
これまでのペロブスカイト太陽電池では、
- ホール輸送層の材料が高価であったり、性能に限界があったりする
- 小さなセルでは高効率でも、大面積になると性能が落ちる
といった問題が指摘されてきました。長春応用化学研究所のチームは、新しい分子材料を「自己組織化」させることで、この層を大面積で均一に形成しつつ、性能も高めることに成功したとしています。
「ラジカル自己組織化分子材料」とは
今回のキーワードとなっているのが「ラジカル自己組織化分子材料」です。
- ラジカル:電子の状態が特徴的な分子で、高い機能性を持たせやすいとされています。
- 自己組織化:分子が自ら秩序ある構造をつくり、きれいな薄膜や層を形づくる性質のことです。
難しい条件や複雑な装置を使わなくても、分子自身の性質を利用して整った膜を作れるため、
- 製造プロセスの簡略化
- 大面積化への対応
- 性能の再現性向上
といった点でメリットが期待されます。ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けて、材料とプロセスの両面で前進したと言えるでしょう。
米国機関による効率認証と「Science」掲載
今回の技術は、米国の国家再生可能エネルギー研究所(National Renewable Energy Laboratory)によって効率認証を受けたとされています。第三者機関による認証は、太陽電池分野で国際的な信頼を得るうえで重要なステップです。
さらに、この成果は2025年6月27日付の科学誌「Science」に掲載されました。科学誌「Science」は、世界的に影響力のある学術誌の一つであり、そこに論文が載ること自体が、研究の独創性と重要性を示すシグナルとなります。
エネルギー転換と私たちの暮らしへの意味
2025年12月現在、世界各国で脱炭素やエネルギー安全保障への関心が高まる中、太陽光発電の高効率化と低コスト化は重要なテーマです。今回の中国の研究成果は、次のような可能性につながると考えられます。
- 高効率かつ大面積のペロブスカイトパネルの実現
- 都市部のビル外壁や窓など、設置場所の多様化
- 新興国を含む世界各地での導入コスト低減
もちろん、研究段階から実際の市場に出るまでには、長期の信頼性評価や量産プロセスの確立など、乗り越えるべきハードルもあります。それでも、今回のように材料と製造の両面で課題を突き崩す成果は、エネルギー転換を前に進める重要なピースとなり得ます。
これから注目したいポイント
今後フォローしておきたい論点としては、
- この新材料を使ったモジュール(パネル)レベルでの性能と安定性
- 産業界との連携や実証プロジェクトの動き
- 他国・他地域の研究との組み合わせによる技術進化
などが挙げられます。半導体光伏や再生可能エネルギーに関心のある読者にとって、今回の研究は、これからのニュースの流れを読むうえでも押さえておきたいトピックです。
ペロブスカイト太陽電池をめぐる国際競争と協力のなかで、中国科学院・長春応用化学研究所の成果がどのような位置づけを占めていくのか。2026年以降の動きも視野に入れながら、継続的に追いかけていきたいテーマです。
Reference(s):
Chinese scientists achieve breakthrough in semiconductor photovoltaics
cgtn.com








