中国が世界初のスマート洋上養殖船「Suhai-1」を引き渡し
中国が世界初のスマート洋上養殖船「Suhai-1」を引き渡し
中国南部の広東省広州市で、世界初となる自航式の密閉型サーモン洋上養殖船「Suhai-1(スーハイ1)」が引き渡されました。養殖から水揚げ、船内加工までを一体化した「動く魚の工場」として、海の食料生産のあり方を大きく変える可能性があります。
「動く養殖場」兼「最新鋭の加工工場」
「Suhai-1」は、高付加価値の魚種を対象にしたスマート洋上養殖設備です。船体そのものが洋上の養殖場であると同時に、近代的な水産加工工場として機能します。
具体的には、サーモンなどの魚を船内の養殖キャビンで育て、水揚げから処理、加工までを船上で完結させる設計になっています。これにより、陸上の加工施設まで長距離輸送する必要が減り、時間とコストの面で効率化が期待されます。
航空母艦2隻分に匹敵する巨大船体
「Suhai-1」の排水量は13万2,000トンとされ、これは中型の航空母艦2隻分に相当する規模です。船内には15の養殖キャビンが設けられ、総水量は8万3,000立方メートルに達します。
この水量は、国際標準の競泳用プール約33面分にあたります。イメージしにくい海上のスケールを、身近な「プール何個分」で換算できるのは、洋上養殖の規模感を考えるうえで分かりやすい指標と言えるでしょう。
集中自動給餌システムで「スマート」管理
この洋上養殖船の大きな特徴が、給餌(えさやり)を自動化した集中管理システムです。船内には、飼料の保管、輸送、つり上げ、開封、搬送、配分といった一連のプロセスを担う設備が備わっています。
これらは中央システムで一括管理され、「知能化された給餌判断」に基づいて運用されます。魚の状態や環境データなどに応じて、いつ・どれだけエサを与えるかを決定することで、ムダな給餌を抑えつつ、安定した成長をめざす仕組みです。
従来の固定いけすから「走る養殖」へ
従来の洋上養殖は、海に設置した固定式の網いけすで行うのが一般的でした。これに対し、「Suhai-1」は最大時速約18キロで航行しながら生産を続けることができます。
移動できることには、次のような利点があります。
- 安全性の向上:台風や高波の進路を避けてより安全な海域へ移動し、設備や魚を守りやすくなります。
- 環境リスクへの対応:赤潮(プランクトンの異常増殖による海の変色)などの発生時にも、被害の少ない水域へ比較的短時間で移動できます。
- 操業の安定性:天候や海況の急変に対応しやすく、長期的な操業計画の安定につながります。
固定された「場所に魚を連れてくる」養殖ではなく、「魚にとって良い環境を求めて船ごと動く」発想への転換だと言えます。
サーモンが最も育ちやすい水温を追いかける
深い海域にすむサーモンは、一般的に低めの水温を好みます。「Suhai-1」は運用開始後、より冷たい水塊が存在する黄海の海域へ向かう計画とされています。
サーモンの成長に適した水温は、およそ10〜18度とされています。この範囲を保てる海域を求めて船が移動することで、魚がストレスを受けにくい環境を維持しながら育てることができます。
言い換えれば、「Suhai-1」はサーモンの好む環境を追いかけて海を移動し、成熟したサーモンを満載して戻ってくる「旅する養殖場」として構想されています。
海の食料生産のかたちをどう変えるか
世界初のスマート洋上養殖船の登場は、いくつかの点で注目されています。
- 食料安全保障への一歩:陸上の限られた養殖スペースに依存せず、広大な海を活用して高付加価値の水産物を安定供給する新たな選択肢になり得ます。
- テクノロジーと水産業の融合:自動化・データにもとづく運用は、漁業や養殖をより高付加価値な産業へと押し上げる可能性があります。
- 海洋環境との付き合い方:移動することで環境リスクを避けつつ、海の変化にどう適応していくかというモデルケースとしても注目されます。
日本を含むアジアの多くの地域にとって、水産物は重要なタンパク源であり、経済にとっても大きな分野です。中国で始まったこの大規模な試みが、今後の洋上養殖や海洋利用の議論にどのような影響を与えるのか、国際ニュースとして引き続き注目していく必要があります。
Reference(s):
China delivers world's first smart offshore aquaculture vessel
cgtn.com








