楚帛書が80年ぶりに中国へ返還 シカゴ大学教授が語る意義 video poster
約80年にわたり海外に所在してきた古代の絹文書「Chu Silk Manuscripts」(楚帛書)の第2巻と第3巻が、今年5月、中国に返還されました。シカゴ大学のドナルド・ハーパー教授は、この歴史的な瞬間の意味を語り、長年の研究者たちの努力を振り返っています。
Chu Silk Manuscriptsとは何か
古代中国文化に関わるとされるChu Silk Manuscripts(楚帛書)は、その名の通り絹に書かれた貴重な文書です。今回返還されたのは、第2巻と第3巻の2点です。
これらの文書は、Zidankuと呼ばれる長沙の墓から出土し、1940年代に中国から不法に持ち出されました。その後、約80年にわたりアメリカ各地の機関を転々とし、最終的にはスミソニアン協会のNational Museum of Asian Artに収蔵されていました。今回の返還は、この美術館から中国への里帰りとなりました。
80年ぶりの帰還が意味するもの
ハーパー教授は、この返還を歴史的な節目として捉えています。1940年代に不法に国外に持ち出された文化財が、約80年を経て出土した国に戻ることは、単にモノの移動にとどまりません。
- 出土した土地とコミュニティが、自らの歴史資料を自国の言語や視点で解釈できるようになること
- 長年の研究成果が、改めて現地の研究者や市民と共有されること
- 博物館や研究機関同士の信頼関係が、具体的な形で可視化されること
長年、海外でこの文書を研究してきたハーパー教授にとっても、今回の返還は感情的な意味を持つ出来事だとされています。研究対象である資料が本来あるべき場所に戻ることで、研究者自身も大きな転機として受け止めているとみることができます。
Li Ling教授の長年の研究が果たした役割
ハーパー教授が特に強調しているのは、Li Ling教授による数十年にわたる研究の蓄積です。Chu Silk Manuscriptsをめぐる学術的な研究を長年率いてきたことで、文書の重要性や来歴が丁寧に明らかにされ、今回の返還を支える土台となりました。
文化財の返還は、政治的・外交的な判断だけで決まるものではありません。資料がどのように発見され、どのような歴史的文脈を持つのかを丹念に示す学術研究があってこそ、関係者の間で共通理解が育まれていきます。Li Ling教授のような研究者の粘り強い取り組みが、静かに大きな役割を果たしたといえるでしょう。
文化財返還をめぐる世界的な議論の中で
近年、世界各地で、植民地支配や戦争などの歴史の中で海外へ流出した文化財を、出土・由来の地域へ返還すべきかどうかをめぐる議論が続いています。Chu Silk Manuscriptsの返還は、その流れの中で注目される事例のひとつです。
このニュースから考えたい三つのポイント
- 文化財は「誰のもの」かだけでなく、「どこで、どのように語られるべきか」が問われていること
- 長期にわたる地道な研究が、国際的な合意形成や返還の前提条件になりうること
- 海外の大学や美術館の研究者が、出土地の研究者と協力しながら新しい関係を築きつつあること
オンラインで世界中の博物館の所蔵品画像を簡単に見られる時代だからこそ、文化財が「どこにあるか」「誰が語るか」という問いは、より身近なテーマになっています。
これから注目したいポイント
今年5月の返還から半年あまりが過ぎた今、Chu Silk Manuscriptsの第2巻・第3巻が中国でどのように保存・研究されていくのか、今後の動きが注目されます。
断片的なニュースだけでなく、その背後にある80年の時間の流れや、ハーパー教授やLi Ling教授をはじめとする研究者たちの協力の歴史に目を向けることで、国際ニュースはより立体的に見えてきます。今回の返還は、文化財と向き合うときに何を大切にすべきかを、静かに問いかけているようです。
Reference(s):
University of Chicago professor on return of Chu Silk Manuscripts
cgtn.com








