中国eスポーツ伝説Skyが語る「フロー状態」と1冊の本 video poster
中国の伝説的eスポーツ選手、Li Xiaofeng(ID: Sky)は、Warcraft IIIで世界トップに立った実績だけでなく、「フロー状態」と呼ばれる深い集中の感覚を武器に戦ってきました。中国国際メディアCGTNの番組「PAGE X」の独占インタビューで、Skyは自らを支えた1冊の本と、その一節から得た気づきを語りました。
Warcraft IIIのWCG王者として刻まれた名前「Sky」
Skyとして知られるLi Xiaofengは、Warcraft IIIを主戦場とする中国のeスポーツ選手です。世界規模の大会であるWCG(World Cyber Games)のWarcraft III部門で、2005年と2006年に連続優勝を果たしました。
この連覇は、中国のeスポーツ史のなかでも象徴的な出来事として語り継がれています。Skyの闘志と実績は、2025年の今もなお、多くの若いプレイヤーにとって「プロゲーマーとは何か」を考える際の一つの基準になっていると言えるでしょう。
Skyを支えた1冊『Flow: The Psychology of Optimal Experience』
CGTNの独占インタビューでSkyが紹介したのは、『Flow: The Psychology of Optimal Experience』という心理学の本でした。彼はこの本から、特に次の一節を印象的な言葉として挙げています。
- “For success, like happiness, cannot be pursued…”
このフレーズは、「成功も幸福も、それ自体を追いかけるものではない」というメッセージとして受け取ることができます。Skyは、eスポーツの経験と重ね合わせながら、この言葉に強く共感したと語りました。
結果だけを追い求めるのではなく、目の前のプレーや練習そのものに没頭する。その積み重ねの先にしか、本当の成功は現れない——。Skyにとって、この本はそうした感覚を言葉にしてくれた一冊だったようです。
「フロー状態」とは何か——Skyが語る集中の力
インタビューのなかでSkyは、「フロー状態」の力について詳しく触れました。フロー状態とは、彼の言葉をなぞるなら、次のような心の状態です。
- 雑念や外部からの邪魔が消えていく
- 注意が鋭く研ぎ澄まされる
- その瞬間の行動に完全に没頭している感覚がある
Skyは、このフロー状態に入ることで、練習や試合中に「ごく細かな変化や重要なディテールに気づける」と話しました。たとえば、相手のわずかな動きの癖や、ゲーム内での小さな変化を素早く察知し、最適な判断につなげることができるといいます。
こうした集中の質の違いが、「勝てる試合」と「勝ち切れない試合」の差になって表れる——Skyは、自らの競技人生のなかで、それを体感してきたと語りました。
eスポーツから学べる「集中のデザイン」
Skyの話は、ゲームの世界だけに限られるものではありません。勉強や仕事、クリエイティブな制作活動など、私たちの日常にも「フロー状態」と似た感覚があります。
例えば、
- 気づけば数十分、スマートフォンを触らずに作業に集中していた
- 難しい課題に取り組んでいるのに、不思議とストレスより「面白さ」のほうが勝っていた
こうした経験は、多くの人にとって心当たりがあるのではないでしょうか。Skyが紹介した『Flow: The Psychology of Optimal Experience』は、そうした「集中しているのに苦しくない時間」の意味を考えさせてくれる本でもあります。
eスポーツの世界で極限まで研ぎ澄まされたフローの感覚は、日常の仕事や学びの場でも、小さな形で再現できるのかもしれません。
PAGE X:一冊の本から世界をひらく試み
Skyがこの本を紹介したのは、CGTNの番組「PAGE X」です。PAGE Xは、さまざまな分野のゲストを招き、「自分に影響を与えた1冊の本から、たった一つの抜粋(エクサープト)を選んでもらう」というコンセプトのプログラムです。
ゲストたちは、自ら選んだ一節を手がかりに、本との出会いや解釈を語ります。視聴者はその語りを通じて、世界各地の知的な古典や現代の重要な本にオンラインで触れることができます。
番組の狙いは、次のような点にあるとされています。
- 多様な分野の専門家や実務家が、本をどう読み、自分の経験に結びつけているかを伝える
- 一節という小さなきっかけから、読者・視聴者が自分なりの読み方を見つける手助けをする
- デジタル時代のなかで、「読書の魅力」をあらためて思い出してもらう
Skyの回は、eスポーツというデジタルな競技と、心理学書というアナログな読書体験が交差する、象徴的な組み合わせと言えるでしょう。
デジタル時代だからこそ「一冊の本」と「一つのプレー」に集中する
2025年の今、SNSや動画、ニュースアプリなど、私たちの注意は常に細かく分散されがちです。そのなかで、Skyのように「一つの試合」「一冊の本」に深く入り込む感覚は、むしろ新鮮に映ります。
Skyが示したのは、次のようなシンプルな姿勢かもしれません。
- 成功という結果そのものより、「今やっている行為」に価値を見いだす
- 他人の評価より、「自分の集中がどこまで深まったか」に意識を向ける
- 本やゲームを、「時間つぶし」ではなく、自分の感覚を研ぎ澄ます場として使う
国際ニュースやeスポーツの情報を日本語で追いかけている読者にとっても、Skyの言葉は「どうやって自分なりのフロー状態をつくるか」を考えるヒントになりそうです。
私たちが今日から試せる小さな一歩
Skyのように世界大会で戦う必要はなくても、日常のなかでフローに近い時間を増やす工夫はできます。例えば、
- 30分だけスマートフォンの通知を切り、目の前のタスクだけに集中してみる
- 興味のある1冊を手に取り、心に残った一節をメモしておく
- ゲームや趣味の時間を、「ただの息抜き」ではなく「集中力を育てる場」として意識してみる
SkyがPAGE Xで語ったのは、「特別な才能」だけでなく、「集中の質をどう上げていくか」という、誰もが共有できるテーマでもありました。
中国eスポーツの伝説的プレイヤーが教えてくれたのは、結果を焦る前に「没頭できる時間」を大切にすること。その視点は、忙しい日々を送る私たちにとっても、静かに響くメッセージではないでしょうか。
Reference(s):
PAGE X: Complete focus, clear mind and entering a flow state
cgtn.com








