AIが守る絶滅危惧キンシコウ 中国・秦嶺山脈で進む保全プロジェクト
絶滅危惧種のキンシコウ(黄金の毛並みを持つサル)を含む野生動物の保護に、人工知能(AI)を活用した最新の個体識別技術が導入されています。中国本土の秦嶺山脈で進むこの取り組みは、「野生生物の遺伝子銀行」とも呼ばれる地域の生物多様性を守る新たな試みとして注目されています。
AIが支えるキンシコウ保全の現場
国の第一級重点保護動物に指定されているキンシコウは、個体数の把握や行動の追跡が難しいことで知られています。そこで活躍しているのが、AIを用いた個体識別の技術です。特定の種ごとに顔つきや体の模様などの特徴を学習し、カメラで撮影された映像などから、どの個体かを自動で見分ける仕組みです。
このAI技術は、キンシコウだけでなく、同じ秦嶺山脈に生息し「危急種」とされるタキンの保全にも活用されています。人が森に長時間入り続けなくても、長期的かつ広範囲なモニタリングが可能になることが期待されています。
「中国の遺伝子銀行」秦嶺山脈とは
秦嶺山脈は、中国本土の中でも多様な野生生物が生息する地域として知られ、「中国の野生生物の遺伝子銀行」と呼ばれています。標高や気候が変化に富み、多くの固有種や希少種が暮らしているため、そこでの保全活動は国際的にも重要な意味を持ちます。
2025年6月、新生児調査の最盛期
キンシコウの赤ちゃんが生まれる数を数えるには、6月がもっとも適した時期とされています。2025年も、秦嶺山脈の一角にある陝西省・仏坪県の国家級秦嶺山脈科学観測研究ステーションでは、キンシコウの新たなデータ収集が行われました。
西北大学生命科学学院の研究者たちは、このステーションを拠点に、8つの家族に属する約100頭のキンシコウを対象に調査を進めています。AIによる個体識別を組み合わせることで、どの家族に何頭の新生児がいるのか、成長のペースや行動範囲はどう変化しているのか、といった情報をより正確に把握しようとしています。
AI導入で変わる調査のスタイル
- 従来は研究者が現地で長時間観察し、目視で個体ごとの特徴を記録していました。
- AI導入後は、カメラなどで得られた画像や映像をデータとして蓄積し、自動で個体識別や出現頻度の分析が可能になります。
- 人手では追い切れない膨大なデータを扱えるため、長期的な変化や細かな行動パターンも見えやすくなります。
生物多様性とAI、三つのポイント
秦嶺山脈でのキンシコウ保全プロジェクトは、テクノロジーと環境保護の関係を考えるうえで、次のようなポイントを示しています。
- 「見えなかった変化」をとらえる力
AIは、膨大な画像データから微妙な変化を検出するのが得意です。わずかな体格の変化や行動パターンの違いを捉えることで、健康状態や生息環境の変化を早期に察知できる可能性があります。 - 現場の負担軽減と安全性の向上
険しい山岳地帯での長時間の調査は、研究者にとって負担が大きく、安全面のリスクも伴います。AIを活用した遠隔・自動の観測は、こうした負担を和らげ、より持続的な調査体制づくりに役立ちます。 - データに基づく保全戦略
個体数の推移や繁殖状況が定量的に把握できれば、保護区の設定や人間活動との調整など、保全政策をより科学的に検討しやすくなります。
日本からこのニュースをどう読むか
国際ニュースとして見たとき、このキンシコウ保全の取り組みは、AIを環境や生物多様性のためにどう使うかという、より広い問いにつながります。日本でも、希少種の保護や里山保全、都市部の生物多様性調査などにAIやセンサー技術を取り入れる動きが進んでいます。
一方で、テクノロジーだけに頼るのではなく、地域コミュニティや研究者、行政がどのように役割を分担し、協力していくのかも重要な論点です。秦嶺山脈で進むAIと野生動物保護の試みは、アジア全体、そして日本の取り組みを考えるうえでも、参考になる事例と言えそうです。
Reference(s):
AI enhances protection of endangered golden snub-nosed monkeys
cgtn.com








