深圳-中山リンク開通から1年 大湾区インフラが変えた距離とビジネス
広東・香港・マカオ大湾区(GBA)の新たな海上インフラ「Shenzhen-Zhongshan Link(深圳-中山リンク)」が開通からの最初の1年間で、交通だけでなく経済統合や行政サービスのあり方まで大きく変えつつあります。本記事では、この国際ニュースのポイントを日本語で整理しながら、大湾区インテグレーションの姿を追います。
深圳-中山リンクとはどんなプロジェクトか
Shenzhen-Zhongshan Link は、海をまたいで都市同士を結ぶ「クロスシークラスター」と呼ばれる大型プロジェクトです。広東省の深圳市と中山市を結び、広東・香港・マカオ大湾区の交通ネットワークの要となるインフラとして位置づけられています。
主な特徴は次の通りです。
- 全長24キロメートル
- 橋2本と人工島2つ、海底区間を含むトンネルで構成
- 往復8車線(片側4車線)の道路を整備
- 深圳空港インターチェンジから出発し、中山市の馬鞍山島(Ma'anshan Island)に接続
これにより、深圳と中山の移動時間は、従来の約2時間からおよそ30分へと大幅に短縮されました。通勤や物流だけでなく、観光や日常の行き来の感覚も大きく変わりつつあります。
1年間で3,100万台超 交通量が示すインパクト
開通後の1年間で、このリンクを通行した車両は累計3,100万台を超えました。China Media Group(CMG)によると、1日の交通量の記録はこの1年で4回更新され、直近では5月1日に過去最高となる18万1,600台を記録しています。
さらに、ある月曜日の正午までに2万台以上が通行し、その時点で今年の累計交通量は1,600万台を突破しました。これは2024年後半と比べても明確な増加傾向であり、人やモノの流れが加速していることを示しています。
単なる新しい道路ではなく、地域全体の経済活動をつなぐ「動脈」として機能し始めているといえます。
行政サービスも「越境」で一体化
物理的なインフラ整備と同時に、深圳と中山の間では行政サービスの一体化も進んでいます。現在、両市にまたがる政府サービス項目は300件以上が利用可能になっており、住民や企業が片方の都市にいながらもう一方の行政手続きを進められる環境が整いつつあります。
一方、中山市では産業用地の再編も進み、これまでに4万8,000エーカー超の工業用地が統合されました。これにより、企業にとってはより広く、コスト効率の高い製造拠点を確保しやすくなっています。
インフラと行政サービスの両面で「都市境界をまたぐ」動きが進むことで、大湾区全体をひとつの大きな経済圏として捉える発想が現実味を増してきました。
企業の戦略も変化 本社は深圳、工場は中山
こうした変化は企業の立地戦略にも表れています。深圳市内の電子機器メーカーでマネージャーを務める廖磊(Liao Lei)さんは、China Media Group の取材に対し、次のように語っています。
「私たちは製造拠点を中山に移し、本社機能は深圳に残しました。将来に非常に自信を持っています。」
深圳のイノベーション環境と中山の広い製造拠点を組み合わせることで、研究開発と生産の最適な分業を目指す動きだといえます。
2024年には、深圳から中山への企業の純流入が168社に達し、その伸びは前年の3倍以上となりました。交通インフラの整備と産業用地の統合が、企業の新たな立地選択を後押ししていることがうかがえます。
大湾区インテグレーションの「実験室」として
Shenzhen-Zhongshan Link をめぐる1年の動きを見ると、インフラ建設が地域経済にもたらす影響が立体的に浮かび上がります。
- 移動時間の短縮による人の往来の活性化
- 物流の効率化によるサプライチェーン再編
- 企業の本社・工場機能の分散配置
- 行政サービスの越境提供によるビジネス環境の改善
広域経済圏の中で、都市ごとの役割をどう分担し、どのように結びつけていくのか。大湾区はその一つのモデルケースになりつつあります。
日本でも、大都市圏と周辺地域をどうつなぎ、どのように産業を配置するかは大きなテーマです。深圳-中山リンクを軸とした大湾区の試みは、首都圏や地方都市のインフラ政策、企業の拠点戦略を考えるうえでも参考になる視点を与えてくれます。
今後は、交通需要のさらなる増加にどう対応するか、環境負荷をどう抑えながら運用していくかといった課題も浮かび上がってくるでしょう。インフラが「地域のかたち」をどう変えるのか、その行方を引き続き注視していく必要があります。
Reference(s):
China's Shenzhen-Zhongshan Link deepens Greater Bay Area integration
cgtn.com








