国連専門家「新たな干ばつの時代」 世界をおびやかすシステミックリスクとは
国際ニュースとして注目される「干ばつ」のリスクが、いま新たな段階に入っていると指摘されています。国連砂漠化対処条約(UNCCD)のプログラムオフィサー、ダニエル・ツェガイ氏は最近のインタビューで、人類はすでに「新たな干ばつの時代」に入り、世界はエスカレートするシステミックな干ばつリスクに直面していると述べました。
国連専門家が警告する「新たな干ばつの時代」
ツェガイ氏によると、干ばつはこれまでのような「一時的な自然災害」ではなく、社会全体の仕組みを揺るがすシステミックリスクとして捉える必要がある段階に来ています。UNCCDでプログラムオフィサーを務める同氏が「新たな干ばつの時代」という表現を用いた背景には、世界が広範囲で、そして長期的に水不足や土地の乾燥化に悩まされている現状があります。
2025年の今、水や食料、エネルギーの安全保障は、多くの国や地域で重要なテーマとなっています。その中で「干ばつ」がどう位置付けられるのかを考えることは、私たちの暮らしや仕事とも無関係ではありません。
「システミックな干ばつリスク」とは何か
ツェガイ氏が言う「システミックな干ばつリスク」とは、単に一つの地域で雨が降らない、川が干上がるといった現象にとどまりません。社会や経済、国際関係など、さまざまな仕組みがつながり合っている現代において、干ばつは連鎖的な影響を引き起こし得るという考え方です。
1. 食料・エネルギー・水が同時に揺らぐ
干ばつが長期化すると、農作物の収量が落ちるだけでなく、水力発電や工業用水、都市の水道供給にも影響が広がる可能性があります。これらは相互に関係しているため、
- 食料価格の高騰
- エネルギー供給の不安定化
- 都市部を含む広い範囲での水不足
といった形で、社会全体の安定に波及するおそれがあります。
2. ローカルな問題がグローバルなリスクに
現在の世界は、貿易やサプライチェーンを通じて密接につながっています。そのため、一見すると遠く離れた地域の干ばつが、
- 輸入に頼る食料や原材料の不足
- 企業活動や雇用への影響
- 国際市場の不安定化
といった形で、他地域の経済や暮らしに波及しやすくなっています。これもまた、干ばつがシステミックリスクと呼ばれる理由の一つです。
3. 社会の「弱い部分」を広く突くリスク
干ばつは、もともと脆弱な立場にある人びとに、より大きな負担を強いる傾向があります。例えば、
- 農業や畜産など、天候に左右されやすい産業に依存する地域
- 蓄えや保険の仕組みが十分でない家庭
- 水や食料の供給網が限られている地域
では、干ばつが生活の基盤そのものを揺るがしかねません。ツェガイ氏の警告は、このような脆弱性を放置したままでは、干ばつが社会全体の不安定さを押し広げる可能性が高いという問題提起とも言えます。
なぜ今、この警告を真剣に受け止めるべきか
ツェガイ氏が「新たな干ばつの時代」と表現したのは、単に干ばつの発生頻度が増えたから、というだけではありません。ポイントは、私たちの経済や生活の基盤が、かつてよりも水や土地の状態に敏感になっていることです。
デジタル化が進んだ現在でも、
- 食料の生産は土と水に依存していること
- 工場やデータセンターなど、多くの産業が大量の水を必要としていること
- 都市のインフラが安定した水供給を前提としていること
といった現実は変わりません。その土台の一つである「水」が不安定になることは、社会のシステム全体の不安定化につながりかねないのです。
UNCCDという国際枠組みの意味
ツェガイ氏が所属する国連砂漠化対処条約(UNCCD)は、土地の劣化や砂漠化、干ばつへの対策を進めるための国際的な枠組みです。各国や地域が協力し、土地と水を持続的に利用するための政策や取り組みを後押ししています。
同氏の発言は、こうした国際的な場で議論されている問題が、もはや専門家や政策担当者だけのテーマではなく、私たち一人ひとりの生活にも直接関わる課題になっていることを示すものと言えるでしょう。
私たちの暮らしと「新たな干ばつの時代」
「干ばつ」と聞くと、日本を含む多くの読者にとっては、自分の生活から遠い出来事に感じられるかもしれません。しかし、ツェガイ氏の指摘するシステミックな干ばつリスクを踏まえると、次のような形で私たちの日常とも結びついています。
- 食料価格の変動として家計に現れる
- 企業の調達コストや生産計画に影響し、働き方や雇用にも波及する
- 水やエネルギーの安定供給について、新たな投資や政策が求められる
こうしたつながりを意識することで、「遠くのニュース」だった干ばつが、自分のライフスタイルや将来設計にも関わる問題として見えてきます。
いまから考えたい3つの視点
では、ツェガイ氏の警告を聞いた私たちは、何から考え始めればよいのでしょうか。すぐに世界を変えることはできなくても、視点を変えることはできます。
- 水の使い方を「インフラ前提」から見直す
水は「いつでも蛇口をひねれば出るもの」という前提で暮らしていると、システミックリスクのイメージは掴みにくいかもしれません。身近な節水や、地域の水源への関心を通じて、水の価値を考え直す入口が見えてきます。 - ニュースを「干ばつ」と「価格」「仕事」で結びつけて見る
国際ニュースで干ばつが報じられたとき、それが食料価格や企業活動にどう影響し得るか、少し立ち止まって考えてみることで、システミックリスクの感覚が具体的になります。 - 国際的な枠組みにも関心を向ける
UNCCDのような国際条約や会議は、一見すると自分とは遠い世界の話に思えます。しかし、こうした場での合意や目標は、中長期的には各国の政策や企業の方針を通じて、私たちの暮らしにも影響していきます。
「考えるニュース」としての干ばつ
ダニエル・ツェガイ氏が語る「新たな干ばつの時代」という言葉は、不安をあおるためのスローガンではなく、世界が直面している構造的なリスクをどう共有し、どう向き合うかを問うメッセージでもあります。
干ばつをめぐる国際ニュースを、自分の生活や仕事、地域社会とつなげて考えること。それ自体が、システミックな干ばつリスクに対する、最初の一歩になるのかもしれません。
このニュースをきっかけに、水や土地、そしてそれに支えられた経済や暮らしの仕組みについて、身近な人と話してみてはいかがでしょうか。
Reference(s):
cgtn.com








