台湾と中国本土をつなぐ塩卵黄ちまき──月港の端午節ストーリー video poster
かつて台湾へ向かう渡し船が造られた港町・月港(漳州)。いまもここでは、オールで操る伝統的なドラゴンボートと、太陽と海を表す「塩卵黄ちまき」の物語が静かに受け継がれています。
月港と台湾を結んだ「船づくり」の記憶
月港は、漳州にある港町で、かつては台湾へ渡るフェリー(渡し船)の建造で知られていました。ここで造られた船は、海を越えて台湾へ向かい、人や物資、そしてさまざまな物語を運んでいたとされています。
台湾と中国本土側を行き来する船が出入りした港には、自然と「海とともに生きる」感覚が根づきます。月港には、そうした海の記憶が、いまも日常の中に息づいているようです。
オールで操る伝統的ドラゴンボート
月港では現在も、職人たちが手作業でドラゴンボートを作り続けています。このドラゴンボートは、舵ではなくオールで操る伝統的なスタイルです。
レース用の華やかなボートというよりも、海と川とともに生きてきた地域の技術と知恵の結晶。その形や色、そしてオールを漕ぐ動きには、かつて台湾へ向かって漕ぎ出した船の記憶が重なって見えてきます。
端午節前に欠かせない「塩卵黄ちまき」
ドラゴンボートと切り離せない年中行事が、端午節です。月港の職人たちは、端午節の前になると、必ず「塩漬け卵黄入りのちまき(zongzi)」を作るのだといいます。
ちまきは、包まれた中身が見えない分、「何を、どんな思いで包むか」が大事になります。月港の人びとは、その中心に塩漬けの卵黄をそっと忍ばせます。
黄身は太陽、米は海──一つのちまきに込められた意味
この塩卵黄ちまきには、地域の長老たちが語り継いできたシンボルがあります。
- 卵黄は「太陽」を表す
- ちまきを包む米は「海」を表す
ちまきを割ると現れる黄金色の黄身は、まるで水平線から昇る朝日そのものです。その黄身を包み込む米は、周囲を取り巻く海。月港に住む人びとの暮らしが、太陽と海に支えられてきたことを思い起こさせます。
塩気のきいた卵黄は、やさしい米の味と合わさって、シンプルでありながら忘れがたい味になります。その一口の奥に、「太陽の恵み」と「海の広がり」という二つのイメージが重ねられているのです。
海を挟んだ地域をつなぐ「食の記憶」
月港で作られた船が台湾へ渡り、いまも月港の職人たちがドラゴンボートを作り続け、端午節前に塩卵黄ちまきを用意する――こうした断片的なエピソードから見えてくるのは、「海を挟んだ地域どうしを、食と祭りが静かにつないでいる」という姿です。
特別な言葉がなくても、太陽を思わせる卵黄と、海を思わせる米。その組み合わせを毎年味わうこと自体が、月港の人びとにとって、自分たちの足元にある海と、その先に広がる台湾を思い起こす時間なのかもしれません。
「Taiwan Through the Ages(台湾の歩み)」という言葉の通り、台湾と向き合ってきた歴史は、国際政治のニュースだけでなく、こうした小さな港町の台所や祭りの準備の中にも刻まれています。塩卵黄ちまきをめぐる物語は、海の向こうにいる人びとを、少しだけ近くに感じさせてくれる静かな橋のような存在だといえるでしょう。
Reference(s):
cgtn.com








