ブラジルBRICS首脳会議の焦点 貿易とグローバルサウスの優先課題
2025年7月にブラジル・リオデジャネイロで開催が予定されていたBRICS首脳会議は、拡大BRICS体制の下で初めての首脳級会合として、世界の注目を集めていました。テーマは「グローバル・サウス協力の強化と、より包摂的で持続可能なガバナンス」。いま振り返ると、その優先課題は2025年末の現在も国際秩序を考える手がかりになります。
2025年リオBRICS首脳会議の位置づけ
BRICSはブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5カ国からスタートし、現在は正式加盟国11カ国とパートナー国10カ国を含む拡大体制となっています。世界人口のほぼ半分を抱え、世界GDPの3割超を占める存在へと成長してきました。
2025年1月1日から議長国を務めるブラジルは、BRICSの議論を次の二つの柱に沿って進める方針を打ち出していました。
- グローバル・サウス各国の協力強化
- 国際ガバナンス(世界のルールづくり)の改革
そのうえで、首脳会議に向けて次の六つのコア分野が整理されています。
- グローバルヘルスと保健システムの協力
- 貿易・投資・金融協力
- 気候変動への共同対策
- 人工知能(AI)のガバナンス
- 国際安全保障アーキテクチャの改革
- BRICSの制度・機構の発展
このうち、とりわけ世界経済に直結するのが、貿易・投資協力の議論でした。
世界的な貿易摩擦の中で迎えた首脳会議
会議が準備されていた当時、世界では貿易摩擦が激化していました。トランプ大統領の下で、米国は関税を外交・経済政策の手段として多用し、世界貿易機関(WTO)を中心とする多角的貿易体制に前例のない揺さぶりをかけていたのです。
米国の相互主義関税と90日猶予
とりわけ注目されたのが、米国が導入したいわゆる相互主義関税です。2025年7月9日に期限を迎える90日間の猶予期間が終わりに近づく中、各国はこの措置がどのような影響を及ぼすのか、そしてBRICS首脳会議がどのような貿易ガバナンス案を打ち出すのかを注視していました。
米国が4月初めに大規模な関税措置を導入して以降、BRICSはこれをWTOルールに反する一方的な保護主義だとして批判してきました。4月下旬に発表された議長声明で、BRICSの外相らは、相互主義関税のような恣意的な関税措置が世界のサプライチェーンを混乱させ、世界経済の不確実性を高めると警告しました。
声明はまた、現在の貿易上の課題に対処し、新興国や開発途上国にとっても有利な貿易・投資環境を整える必要性を強調しています。世界人口のほぼ半分を抱えるBRICSがこのメッセージを発することは、国際世論に無視できない重みを持ちます。
PartNIRと2030年経済パートナーシップ戦略
こうした問題意識の延長線上で、BRICSは新産業革命パートナーシップ(PartNIR)や、2030年BRICS経済パートナーシップ戦略といった長期構想の前進も掲げています。これらの枠組みは、加盟国同士の貿易と投資を厚くし、一方的な関税や世界的なサプライチェーンの混乱といった外部ショックへの脆弱性を減らすことを狙ったものです。
言い換えれば、拡大BRICS内の結びつきを強めることで、特定の大国の政策に振り回されにくい経済基盤をつくろうとする試みだと言えます。
貿易以外の優先課題:AI、気候、グローバルヘルス
貿易・投資協力と並んで、リオの首脳会議では次のようなテーマも優先課題として位置づけられていました。
- グローバルヘルスと保健システム:感染症や公衆衛生危機に備え、医療体制をどう強化し、各国間で支え合うか。
- 気候変動対策:温室効果ガスの削減だけでなく、気候変動の影響に脆弱な国々への適応支援をどう設計するか。
- AIガバナンス:人工知能の急速な発展を踏まえ、公平で安全なルール作りにグローバル・サウスとしてどう関与するか。
- 安全保障とBRICSの制度づくり:国際安全保障アーキテクチャの見直しと、BRICS自身の制度・枠組みをどのように発展させるか。
これらはいずれも、一部の先進国だけではなく、より多くの国と地域の声を国際ルールに反映させられるかという、ガバナンスの根本に関わる論点です。
なぜBRICSの議論は2025年末の今も重要か
2025年も終わりに近づく今、リオでのBRICS首脳会議に向けて整理されたこれらの優先課題は、依然として国際秩序を考えるうえで有効なレンズになっています。
- 米国の関税政策を含む貿易摩擦が続く中で、自由貿易と多角的貿易体制をどう再構築するか。
- AIや気候変動、グローバルヘルスといった新たな課題のルールメイキングに、グローバル・サウスがどう関わるか。
- 世界人口の半分を占める国々の連携が、サプライチェーンや物価、働き方にどのような形で波及するか。
日本から見るとBRICSは距離のある枠組みに見えがちですが、その決定やメッセージは、貿易ルール、エネルギー価格、デジタル経済などを通じて私たちの日常とも密接につながっています。リオ会議で示された優先課題を押さえておくことは、これからの国際ニュースを読み解くうえで、静かながら重要なヒントになるはずです。
Reference(s):
What to expect from BRICS summit in Brazil: A preview of priorities
cgtn.com








