中国が国際深宇宙探査協会を設立 途上国と宇宙をつなぐ新プラットフォーム
中国で、深宇宙探査に特化した初の国際学術組織「国際深宇宙探査協会(IDSEA)」が今週発足しました。安徽省合肥市に拠点を置き、月や火星など深宇宙の探査で各国の研究者をつなぐ新しいプラットフォームを目指します。
IDSEAとは何か 中国初の国際宇宙アカデミー組織
国際深宇宙探査協会(IDSEA)は、深宇宙探査に関する研究と国際協力を進めるために設立された協会です。拠点は中国東部の安徽省合肥市に置かれ、中国の宇宙分野では初めての国際的な学術組織とされています。
中国の月探査計画を設計してきた専門家の呉偉仁氏は、今後10年ほどの間に、海外の研究機関500団体と、個々の科学者10万人の参加を目標にしていると述べています。大規模な国際ネットワークをつくることで、月や火星、小惑星など深宇宙の科学研究を加速させたい考えです。
途上国に開かれた宇宙協力プラットフォーム
IDSEAの設立には、合肥にある深空探査実験室など5つの機関が関わっています。同実験室の国際協力センターを率いる王中民氏は、この協会を「とりわけ開発途上国に利益をもたらす包摂的な学術プラットフォーム」にしたいと語っています。
具体的には、次のような小さくても影響力のあるプロジェクトを想定しています。
- 超小型衛星キューブサットの設計支援
- 若手研究者や技術者のトレーニング
- 観測データや研究成果の共有
これまで高額な資金、高度な技術、人材が必要とされてきた深宇宙探査は、ごく少数の国に限られてきました。王氏は、多くの国が「技術へのアクセスが限られた状態」にあると指摘し、深宇宙技術を「小さな輪から解き放ち、人類全体の利益につなげるべきだ」と強調しています。
なぜ今、深宇宙での国際協力なのか
協会の設立イベントに参加した各国の研究者からは、IDSEAが宇宙協力のハブとして機能することへの期待が語られました。イタリア国立核物理学研究所の研究者で設立メンバーの一人であるシモーネ・デル・アニェッロ氏は、「多くの国がそれぞれ得意分野を持っている。だからこそ、互いに協力することに大きな意味がある」と話しています。
また、トルコの深宇宙科学技術の専門家で、同じく設立メンバーのアフメト・ハムディ・タカン氏は、「この協会があれば、一つのプラットフォーム上で世界中のパートナーや科学者とつながることができ、進行中や計画中のミッションの情報を共有しやすくなる」と述べました。
宇宙関連の技術やデータは、一国だけで完結させるよりも、複数の国や地域が共同で活用した方が効率も高く、リスク分散にもつながります。IDSEAは、各国の宇宙機関や研究者を束ねることで、その橋渡し役を担おうとしています。
月・火星探査で広がる中国の国際協力
中国は、深宇宙探査の分野では後発ながら、近年は存在感を高めており、各国との協力にも積極的な姿勢を見せています。ことし4月には、探査機「嫦娥5号」が採取した月のサンプルについて、フランス、ドイツ、日本、パキスタン、イギリス、アメリカの6か国・7機関に対し、研究目的での貸し出しを認めると発表しました。
さらに、中国は火星探査でも国際パートナーを募っています。火星サンプルリターン計画「天問3号」については、2028年ごろの打ち上げを目指しており、火星に生命の痕跡があるかどうかを探ることが主な科学目標とされています。火星から岩石や土壌を直接地球に持ち帰る試みは、人類史上初の挑戦であり、アポロ計画以来で最も難度の高い宇宙探査ミッションとみられています。
私たちにとっての意味 宇宙から広がる選択肢
深宇宙探査は、一見すると遠い宇宙の話に聞こえますが、その過程で生まれる技術や国際協力の枠組みは、私たちの暮らしにも影響を与えます。高精度の観測技術や通信技術、新素材やエネルギー技術などは、地上の産業や防災、環境観測にも応用される可能性があります。
途上国を含む多くの国が深宇宙探査にアクセスできるようになれば、宇宙開発の成果をどう分かち合うのかという議論も、これまで以上に重要になります。IDSEAの動きは、宇宙をめぐる国際協力の形が「少数の国中心」から「より多くの国と地域が参加する形」へと変わっていく一つのサインと言えるかもしれません。
今後、どの国や研究機関がこの新しい協会に参加し、どのような共同プロジェクトが立ち上がるのか。深宇宙探査のニュースは、国際政治や経済、技術革新を読み解く上でも、引き続き注目していく価値がありそうです。
Reference(s):
China sets up 1st international association on deep-space exploration
cgtn.com








