BRICS首脳会議で李強首相が提案 平和とグローバルガバナンス改革の3本柱
第17回BRICS首脳会議の全体会合「平和と安全保障とグローバル・ガバナンス改革」で、中国の李強首相が演説し、揺れる国際秩序の中でBRICSとグローバルサウスが果たすべき役割を3つの柱で示しました。世界の平和、経済発展、文明間の対話をどう両立させるのかという、2025年の国際ニュースの焦点が凝縮された内容です。
最初に押さえておきたいポイント
- 世界の「変化の世紀」を背景に、国際秩序と多国間主義の揺らぎに警鐘
- 習近平国家主席が2015年に提唱した「協議・共建・共有」のガバナンス構想を、10年越しに再確認
- BRICSがグローバルサウスの先頭に立ち、平和・開発・文明対話の3分野で改革を主導すると強調
世界の秩序が揺れる中で開かれた第17回BRICS首脳会議
李強首相は、現在の世界は「百年に一度の大きな変化」が加速していると指摘しました。地政学的な対立や経済・貿易摩擦、各地で続く武力衝突、国際ルールと秩序への挑戦、多国間の枠組みの機能低下などが重なり、ガバナンス改革の必要性と緊急性が高まっていると強調しました。人類は同じ地球村に暮らし、各国は運命共同体になりつつあるという認識も示し、一国主義ではなく連帯による対応を訴えました。
そのうえで、各国がそれぞれの思惑でガバナンス改革を進めるのではなく、国際社会全体の共通利益を守り、常に歴史の正しい側に立つことが不可欠だと述べました。これは、改革の名の下に対立が深まる誤った方向や、進歩が後退する事態を避けるべきだというメッセージでもあります。
「協議・共建・共有」のガバナンス構想を再確認
李首相は、習近平国家主席が2015年に打ち出したグローバル・ガバナンスのビジョン「広範な協議、共同建設、利益の共有」をあらためて紹介しました。提唱から10年が経ち、この理念は国際社会での影響力を増していると評価し、現在の混乱した国際情勢だからこそ、その価値が一層高まっていると位置づけました。
信頼と対話の不足が紛争の根に
対立や紛争の根底には、相互不信とコミュニケーション不足があるとし、「力による政治」やいじめのようなやり方では問題は解決しないと強調しました。全ての国の安全と発展が尊重されるべきであり、傲慢や偏見を減らし、誠意と理解を増やすことが必要だと訴えました。平等な立場での友好的な協議を通じてこそ、すべての当事者の利益にかなう最適解を見いだせるという考え方です。
グローバルサウスの先頭に立つBRICS
李首相は、近年グローバルサウス諸国が力をつけ、グローバル・ガバナンス改革の推進役になりつつあると評価しました。その先頭に立つ存在としてBRICSを位置づけ、独立性を堅持し、責任感を持ってコンセンサスと協調を広げ、改革を牽引する先導役になるべきだと呼びかけました。
さらに、今回のサミットでインドネシアが新たに正式メンバーとして加わったことにも触れ、枠組みの広がりを歓迎しました。新興国・途上国が結束を強めることで、国際社会の議論により多様な声を反映させようとする狙いがうかがえます。
李強首相が示した3つの優先課題
演説の後半で李首相は、BRICSがグローバル・ガバナンス改革を進めるうえで重視すべき3つの方向性を提示しました。キーワードは、公正な平和、開発優先、文明の対話です。
- 1. 公正と正義を守り、世界の平和と安定を支える
国際ルールが揺らぎ、いわゆるいじめのような行動が目立つなかで、BRICSは正しいことのために声を上げる存在であるべきだと李首相は指摘しました。紛争の解決にあたっては、武力ではなく平和的手段を優先し、問題の本質に向き合う解決策を模索する必要があるとし、世界に安定をもたらす前向きで信頼できる力としての役割を強調しました。 - 2. 開発を最優先し、新たな成長エンジンを育てる
中国の改革開放の経験を踏まえ、李首相は、多くの問題の根本的な解決には開発がカギになると述べました。これは中国だけでなく、他のグローバルサウス諸国にも当てはまると強調します。市場規模や資源、産業基盤などに強みを持つBRICSは、デジタルやグリーン、先端製造など新たな分野での協力をリードし、互いに利益を分かち合う関係を広げるべきだとしました。具体策として、中国は今年、中国・BRICS新質生産力研究センター(China-BRICS New Quality Productive Forces Research Center)とBRICS新産業ゴールデンエグレット優秀人材奨学金(BRICS New Industry Golden Egret Excellence Scholarships)を設立し、産業や通信などの分野で人材育成とイノベーションを支援すると表明しました。他国の成長を脅威ではなく機会として受け止める発想の転換を促した形です。 - 3. 包摂性を重んじ、文明間の対話と相互学習を促す
文明の対話は平和と友好の橋をかけ、共通の発展の知恵を生み出すと李首相は語りました。多様な歴史と文化を持つBRICS諸国は、文明の一体化ではなく共存と相互学習を重視すべきだとし、世界の文化的多様性を尊重しながら、互いに刺激し合い、ともに繁栄する関係を築くよう呼びかけました。
2025年の国際秩序を見通すうえでの意味
李首相は演説を、より公正で効率的で秩序あるグローバル・ガバナンスをともに築こうという呼びかけで締めくくりました。BRICSとグローバルサウスの台頭は、2025年の国際秩序を考えるうえで避けて通れないテーマです。
日本にいる私たちにとっても、どの国がどの価値観や優先順位を掲げているのかを丁寧に読み解くことが、これからの世界を理解する手がかりになります。今回の演説は、中国とBRICSが自らを改革を進める側と位置づけ、平和・開発・文明という三つの要素を一体で捉えようとしている姿勢を示すものだと言えそうです。
Reference(s):
Full Text: Li Qiang's remarks at BRICS session on peace, governance
cgtn.com








