中国が30の最重要科学技術課題を発表 AI・宇宙資源・脳研究を網羅
中国の中国科学技術協会(China Association for Science and Technology、CAST)は、国家の発展にとって最も重要と位置づける30の科学・工学・産業技術の課題リストを公表しました。AIや宇宙資源、ブレインテックまで幅広く網羅した今回の発表は、中国の研究開発戦略の今を映し出しています。
中国が選んだ30の優先課題
CASTは第27回年次総会の場で、科学上の重要な問い、工学技術上の挑戦、産業技術のボトルネックを合わせた30の優先課題を発表しました。この種のリスト公表は2018年から続いており、今回は8回目にあたります。
80の学会と56人の戦略科学者が関与
今回のリストは、約80の国家レベルの科学団体が関わる厳格な選定プロセスを経てまとめられました。初期段階では、56人の著名な戦略科学者が、基礎科学や製造技術など10の主要分野にまたがる90の課題をノミネート。その後、議論と絞り込みを重ね、最終的に30の優先課題に整理されたとされています。
リストは次の3つのカテゴリーから構成されています。
- フロンティア科学に関する10の問題
- エンジニアリング技術の10の主要課題
- 産業技術の10のボトルネック問題
フロンティア科学:数学と宇宙をつなぐ問い
フロンティア科学のトップ10には、抽象的ながら基盤的なテーマが並びます。例えば、多様体と呼ばれる幾何学的な空間のトポロジーと幾何学的性質に基づく分類の問題が含まれています。これは、さまざまな形や空間を数学的にどのように整理できるかを問うもので、現代物理学や情報科学にもつながるテーマです。
また、ヒッグス粒子の質量の性質や起源も重要課題として挙げられました。ヒッグス粒子は、なぜ物質に質量があるのかという根源的な問いと関わる基本粒子であり、その質量の成り立ちをより深く理解することが、宇宙の始まりや物理法則の全体像を探る鍵になるとされています。
エンジニアリング技術:設計から製造までをデジタルで一体化
エンジニアリング技術の10大課題は、応用面でのブレークスルーをめざす内容が中心です。代表例として、複雑なモデルの設計、シミュレーション、製造プロセスを一体として最適化する統合アルゴリズムの開発が挙げられています。設計から試作、量産までをデジタルに結びつけることで、開発期間の短縮や品質向上をねらう方向性です。
さらに、通信と知能を一体化させたAI駆動のネットワークシステムも重点テーマです。ネットワーク自体が人工知能によって自律的に制御・最適化されることで、高度な通信インフラや次世代の情報サービスを支える基盤技術となることが想定されています。
産業技術のボトルネック:宇宙資源とブレインテック
産業技術に関するトップ10の課題では、製造や応用面でのボトルネックをどう乗り越えるかが焦点となっています。CASTは、深宇宙における資源利用のための自律型採鉱技術を優先分野の一つとして挙げています。人が直接到達しにくい環境で、ロボットなどが自律的に資源を探査・採掘することを想定した技術です。
もう一つの注目テーマは、脳機能の評価と、閉ループ型のブレイン・コンピュータ・インターフェースによる知能的な介入を組み合わせる技術です。脳の状態を継続的に計測し、それに応じてコンピュータ側からフィードバックを与えることで、医療やリハビリテーション、認知機能のサポートなどへの応用が期待されます。
国家戦略としての科学技術リストの意味
今回の30の課題リストは、基礎科学、工学、産業応用を一体として位置づけている点が特徴的です。抽象的な理論から具体的な製品・産業課題までを連続的にとらえることで、研究開発の優先順位を明確にし、長期的な投資や人材育成の方向性を示す狙いがうかがえます。
こうしたリスト化は、研究者にとっては自分の研究テーマが社会や産業とどのようにつながるのかを考える手掛かりとなり、企業や行政にとっては、中長期的な技術戦略を描く際の参照点にもなります。
国際社会と日本への示唆
中国が科学技術の重点課題を明確に示したことは、国際的な研究協力や競争の文脈でも重要です。AI、宇宙資源、ブレインテックといったテーマは、多くの国や地域が関心を寄せる共通のフロンティアでもあります。
日本を含む各国の研究者や企業にとっても、中国の優先課題は、今後どの分野で連携や競争が強まるのかを読み解くヒントになります。国境を越えた共同研究や標準づくりの場で、今回のリストに含まれるトピックが議論の軸の一つとなっていく可能性もあります。
科学技術の課題は、一度決めて終わりではなく、社会や産業の変化に応じて更新されていきます。今回示された30の課題が、中国の研究開発の方向性にどのような変化をもたらすのか、そして国際的な科学技術の地図をどう塗り替えていくのか、今後の動きが注目されます。
Reference(s):
cgtn.com








