尼山世界文明フォーラム開幕 文化多様性と近代化を孔子の思想から読み解く
中国・山東省曲阜で開幕した第11回尼山世界文明フォーラムで、研究者や専門家が文化の多様性と近代化の関係について議論しました。孔子の思想から人工知能(AI)まで、21世紀のグローバル課題をどう乗り越えるかがテーマになっています。
尼山世界文明フォーラムで交差する「伝統」と「近代」
第11回尼山世界文明フォーラムは、中国東部の山東省曲阜で現地時間水曜日に開幕しました。会場には、世界の文明や文化をテーマに研究する学者や専門家が集まり、文化多様性と近代化の「せめぎ合い」ではなく、その相互作用に目を向けた議論が行われています。
儒教は「伝統と現代」をつなぐ道具箱
歴史哲学を専門とするローマ・トル・ヴェルガタ大学のリッカルド・ポッツォ教授は、中国とヨーロッパの文化イノベーションについて語りました。中国のメディアCGTNのインタビューで、ポッツォ氏は、孔子の思想に代表される儒教は、伝統と現代の課題をつなぎ、今日の問題に向き合うための貴重な解決策を提供し得ると指摘しました。
ポッツォ氏は、人類の持続可能な発展に向けて「伝統から学ぶ」ことの重要性を強調しました。特に、環境をめぐるグリーンな転換と、社会全体のデジタル転換という二つの大きな変化に対応するうえで、過去の知恵をどう生かすかが鍵になると述べています。
さらに同氏は、中国の現在の繁栄によって、より多くの人々が新しいかたちで伝統的な思想や文化を体験できるようになっているとも語りました。古典が「遠い過去」ではなく、日常とつながる資源として見直されつつあるという見方です。
「仁」と「礼」が問うグローバル・ガバナンス
フォーラムでは、Ren and Li: Confucian Ethics for Global Governance(仁と礼:グローバル・ガバナンスのための儒教倫理)をテーマにした特別セッションも開かれました。孔子の倫理思想の中核である「仁」と「礼」は、他者への思いやりと、社会秩序や礼節を重んじる態度を示す概念です。
このセッションでは、グローバル・ガバナンス(地球規模の課題に取り組むためのルールづくりや協調のあり方)を考えるうえで、儒教の倫理がどのような示唆を与えられるかが議論されました。文化や制度が異なる国や地域が協力するためには、共通のルールだけでなく、互いを尊重する倫理的な基盤が重要になるという問題意識です。
AIと創造性:何が「人間らしさ」なのか
英国のUK Academy of Social Sciencesのフェローであるスティーブ・フラー氏は、人工知能と人間の創造性の関係について意見を述べました。フラー氏は、AIは人類から創造性を奪うものではないと強調します。
同氏によると、人間の創造性とは、完全なゼロから何かを生み出すことではなく、既に存在する人間の表現やアイデアを、新しい形で再統合する力にあります。多くの創造的な営みは、共通の知識やデータという土台から生まれているという見方です。
AIは、人間が蓄積してきた膨大な知識や表現を統合し、これまで見たことのない組み合わせを生み出す技術だとフラー氏は述べます。その意味で、AIは人間の創造性と競争する存在というよりも、人間がどのように表現や知恵を組み合わせてきたのかを別の形で可視化するツールだとも言えます。
「伝統」か「近代」かではなく、両者をどう組み合わせるか
尼山世界文明フォーラムの議論からは、「伝統文化を守るか、それとも近代化とテクノロジーを優先するか」という二者択一ではなく、両者をどのように組み合わせるかという視点が浮かび上がります。儒教の倫理を手がかりにしながら、AIやデジタル技術、環境問題にどう向き合うかという問いです。
- 伝統思想を「過去の遺産」ではなく、21世紀の課題を考えるための資源として捉え直す視点
- AIを、人間の創造性を奪う脅威ではなく、人間の知の蓄積を活用する新しい道具として見る可能性
- 文化の多様性を維持しながら、グリーン転換やデジタル転換といった大きな変化にどう向き合うかという課題
中国・曲阜で交わされているこれらの議論は、世界の多くの社会が直面している問いと重なります。日本に暮らす私たちにとっても、伝統とテクノロジーをどのように両立させるのかを考えるヒントになりそうです。
Reference(s):
Scholars discuss cultural diversity, modernization at Nishan Forum
cgtn.com








