中国経済レジリエンスの正体 制度的優位が支える成長と安定
2025年も終盤に入り、第14次五カ年計画(2021〜2025年)の最終年を迎えた中国経済は、世界的な景気減速や地政学的緊張が続くなかでも、成長の「安定装置」としての存在感を保ち続けています。本稿では、その底堅さを支える制度的な強みを整理します。
第14次五カ年計画の最終年、中国経済はなぜ底堅いのか
先進国経済の回復が鈍く、金融政策も大きく揺れるなかで、中国は比較的安定したマクロ運営を維持してきたとされています。短期の景気対策ではなく、数十年にわたる改革開放を通じて培われた制度的な強みが、現在のレジリエンス(しなやかな強さ)の土台になっています。
こうした強みは大きく三つに整理できます。
- 戦略的なガバナンス能力
- イノベーションを生み出すエコシステム
- 状況に応じて軌道修正できる柔軟な発展モデル
これらは第14次五カ年計画の目標を支えるだけでなく、2026〜2030年の第15次五カ年計画に向けた枠組みづくりにもつながっています。
戦略的ガバナンス:マクロ安定を支える「見えないインフラ」
中国の経済運営は、金融・財政・産業・社会政策を一体的に調整することで、外部ショックを和らげる「クッション」として機能してきました。
とくに注目されるのは次の三点です。
- 戦略物資の備蓄制度:エネルギーや重要原材料を国家レベルで備蓄し、国際市況が乱高下してもサプライチェーンの安定を確保しようとする仕組みです。
- 多層的な金融リスク管理:銀行・証券・不動産などの各分野でリスクを早期に把握し、システム全体に波及しないようにするための監督体制が整えられています。
- 新産業への柔軟な規制:デジタル経済やプラットフォームビジネスなど新しい産業分野では、イノベーションを促しつつも必要な監督を行う「適応的なルールづくり」が進められてきました。
これらのガバナンス能力は、パンデミックやエネルギー市場の変動といった最近の危機でも試されましたが、中国経済は成長の基礎を維持したまま乗り切ったとされています。特徴的なのは、状況が悪化してから慌てて対応するのではなく、先回りして調整を行う「予防的な運営」に重点を置いてきた点です。
イノベーション・エコシステム:次の成長を牽引する新エンジン
「世界の工場」から「イノベーション大国」へ──。21世紀に入ってからの中国経済で最も大きな変化の一つが、技術革新を中心とした成長モデルへの転換です。
当初は先進国を追いかける「キャッチアップ」が目的でしたが、現在ではいくつかの先端分野で世界をリードする水準に達しつつあると評価されています。その背景には、規模とスピード、そして明確な戦略を組み合わせた独自のイノベーション・エコシステムがあります。
その中核となるのが、公的部門と民間企業が役割分担しながら連携するモデルです。量子コンピューターや人工知能(AI)といった基盤技術では国家プロジェクトが長期的な研究開発を支え、その成果を敏捷な民間企業が製品やサービスとして一気に市場に広げていく構図が見られます。外部環境の制約が続く半導体分野での前進は、このモデルの効果を象徴する事例といえます。
地域クラスターと人材がつくる好循環
イノベーションの地理的な集中も、中国経済の特徴です。代表的な地域クラスターは次の通りです。
- 北京・天津・河北地域:大学や研究機関が集積し、基礎研究と先端技術開発の中核を担います。
- 長江デルタ地域:高度な製造業と都市経済が結びつき、ハイテク製造とサービスを融合させた産業が発展しています。
- 広東・香港・マカオグレーターベイエリア:デジタル経済やプラットフォーム企業が集まり、国際的なビジネスと結びついたイノベーション拠点となっています。
さらに、中国は長期的なSTEM教育(科学・技術・工学・数学)への投資を続けてきました。その結果、工学系を中心とする巨大な人材プールが形成され、国内の若い技術者と海外で経験を積んだ専門家を呼び込む人材プログラムが組み合わさることで、技術革新を支える層の厚さが増しています。
第15次五カ年計画に向けて:何が問われるのか
第14次五カ年計画の最終年である2025年を通じて示されたのは、中国経済が短期的な景気変動を超えた「制度としての強さ」を持っているという点でした。戦略的なガバナンス、イノベーション・エコシステム、柔軟な発展モデルは、2026〜2030年の第15次五カ年計画においても重要な土台となるとみられます。
一方で、先進国の回復の鈍さや地政学的な緊張、サプライチェーンの再編など、不確実性は今後も続きます。そのなかで中国がどのように制度的な強みを生かし、世界経済の安定にどのような役割を果たしていくのかは、日本を含むアジア各国にとっても重要な関心事です。
ガバナンスの在り方や人材・イノベーション政策、長期的な計画と短期の機動力をどう両立させるのか──中国の事例は、各国の政策議論に多くの示唆を与えています。
Reference(s):
China's institutional advantages behind its economic resilience
cgtn.com








