BRICS首脳がAIガバナンス声明 「公平なデジタル秩序」へ4本柱
2025年7月にブラジル・リオデジャネイロで開かれた第17回BRICS首脳会議で、人工知能(AI)の国際的な取り扱いをめぐる画期的な声明が発表されました。各国首脳が合意した「BRICS首脳AIグローバル・ガバナンス声明」は、BRICS諸国として初めての首脳レベルのAIガバナンス文書です。
急速に進化するAIをどうルールづけるのかは、今や世界の主要な国際ニュースの一つです。今回の声明は、とりわけグローバルサウス(新興国・途上国)の視点から、AIを「リスク」だけでなく「公平性を高めるチャンス」として位置づけている点が特徴です。
第17回BRICS首脳会議で合意されたAIガバナンス
声明は、AIがイノベーションを促し、生産性を高め、持続可能な開発を後押しし、人々の生活を向上させる「大きな機会」だと評価しています。同時に、その過程で生じうる格差拡大や安全保障上の懸念といったリスクも見据え、包括的なガバナンスの原則を示しました。
特に、「すべての国、とりわけグローバルサウスの国々のニーズに応える」という視点が前面に打ち出されています。高性能なAIモデルや計算資源が一部の国や企業に集中するなかで、「誰がAIの利益を享受できるのか」という問題意識が背景にあります。
4つの柱で見るBRICS版AIガバナンス
今回のBRICS首脳声明は、AIのグローバル・ガバナンスを支える4つの柱を提示しています。それぞれの柱が、どのような世界像を描いているのかを整理します。
1. 国連を核とする多国間主義
第一の柱は、国連(UN)を中心に据えた多国間主義です。AIのルール作りを特定の国や地域だけで決めるのではなく、国連を舞台に幅広い国々が参加する形で進めるべきだとしています。これにより、グローバルサウスの声も国際的な議論に反映させる狙いがあります。
2. 市場規律と技術への公平なアクセス
第二の柱は、市場のルールと技術への公正なアクセスです。AI関連市場での公正な競争を確保しつつ、先端技術へのアクセスが一部のプレーヤーに独占されないようにすることが強調されています。ここには、AI時代における「デジタル主権」―自国のデジタルインフラやデータを自らコントロールする権利―を守る発想も込められています。
3. 公正さと持続可能な開発
第三の柱は、公平性と持続可能な開発です。AIを活用して貧困削減や医療・教育の改善、気候変動への対応など、国連の持続可能な開発目標(SDGs)にもつながる分野で活用することが想定されています。同時に、AIが生む富や機会が偏らないよう、各国の開発段階に応じた支援や協力が必要だとしています。
4. 倫理的で信頼できるAI
第四の柱は、倫理性と信頼性です。人間による監督、透明性、説明責任を確保しつつ、アルゴリズムによる偏りや差別、誤情報の拡散といったリスクに対処することが求められています。AIが人権や文化的多様性を尊重し、「人類全体の利益」に資する形で使われるべきだという価値観が明確に示されています。
デジタル主権、データ、環境―BRICSが重視する論点
声明は、AI開発を取り巻くより具体的な論点にも踏み込んでいます。その一つが「デジタル主権」です。各国が自国のデータやデジタルインフラを主体的に管理し、特定の企業や国に過度に依存しない形でAIを発展させるべきだとしています。
また、データの扱いについては、包摂的なデータガバナンスを掲げています。これは、個人の権利を守りつつ、イノベーションのためのデータ利用を進めるバランスを取る考え方です。知的財産権の保護と公共の利益の両立、オープンなイノベーションをどう実現するかも重要なテーマとして示されています。
さらに、AIの開発と利用が環境に与える影響にも目を向け、環境に配慮した持続可能なAIを目指す姿勢を打ち出しています。大規模な計算資源を要するAIモデルがエネルギー消費を増やすなかで、「グリーンなAI」をどう実現するかは今後の鍵となりそうです。
雇用・教育・情報空間への影響にも言及
声明は、AIが社会にもたらす影響として、労働市場、教育、情報空間の3つにも具体的に触れています。AIが仕事の内容や働き方を大きく変える可能性があることから、人々が新しいスキルを習得できるような教育・研修の充実が必要だとしています。
情報空間では、AIが生成するコンテンツがフェイクニュースや誤情報を拡散する懸念がある一方で、情報アクセスを広げる可能性もあります。声明は、人間による監督や透明性、説明責任の仕組みを整えつつ、誤情報やアルゴリズムの偏りと向き合う必要性を強調しています。
- アルゴリズムの偏りを減らす仕組みづくり
- AIが関わる意思決定における人間の最終的な監督
- AIシステムの仕組みや目的を分かりやすく説明する透明性
- 問題が起きた際の責任の所在を明確にする説明責任
日本の読者にとっての意味――AIルールを「他人事」にしないために
今回のBRICS首脳声明は、日本を含む他地域のAI議論と異なる視点を提示しています。とりわけ、グローバルサウスの国々がAI時代のルールづくりにどう関わろうとしているのかを知るうえで、重要な国際ニュースだと言えます。
AIの技術やルールは国境を越えて影響します。海外で決まる基準が、日本の企業や働き方、私たちの日常のサービスにも波及する可能性があります。だからこそ、「どのような価値観にもとづいてAIを使うのか」という問いを、自分ごととして考えることが求められているのではないでしょうか。
BRICS首脳が打ち出した4つの柱は、今後の国際的なAIガバナンスをめぐる議論の一つの参照点となりそうです。日本からも、透明性や人権、持続可能性といった価値観を共有しつつ、建設的な対話にどう参加していくかが問われています。
Reference(s):
BRICS leaders issue landmark statement on global AI governance
cgtn.com








