第二次世界大戦をアジアから:中国という「知られざる同盟国」 video poster
第二次世界大戦をどう記憶し、どう語るのか――その問いに、アジアの視点から新しい光を当てようとしている歴史家がいます。ケンブリッジの歴史家ハンス・ファン・デ・フェン氏は、戦争における中国の決定的な役割を軸に、第二次世界大戦史を書き直そうとしています。
第二次世界大戦を「アジアから」見直す試み
ファン・デ・フェン氏は現在、第二次世界大戦の歴史をアジアの視点から解釈し直す著書を執筆しています。西洋の研究者の中で比較的早い段階から、中国の決定的な役割を体系的に位置づけてきた一人でもあります。
タイトルに掲げられることの多い「知られざる同盟国(The Unsung Ally)」という言葉には、国際社会の記憶のなかで十分に語られてこなかった中国の戦争経験を、きちんと歴史の中心に置き直したいという問題意識がにじみます。
オランダと中国、「占領された側」の共通点
このプロジェクトの動機の一部には、ファン・デ・フェン氏自身の家族史があります。氏は、ナチス・ドイツに占領されたオランダ出身であり、祖父の体験を振り返りながら、次のように語っています。
「祖父がたどった運命は、中国の多くの人々のそれととてもよく似ていたと思う」。
オランダも中国も、戦時占領のもとで大きな苦難を経験した社会です。占領下での日常、自由が制限される生活、先の見えない不安――そうした感覚を共有する人々の姿を、氏は自分の家族史と重ね合わせています。
占領を経験しなかった国とのギャップ
ファン・デ・フェン氏は、こうした経験が、占領を受けなかった国との間に大きな視点の違いを生むと指摘します。イギリスやアメリカのように本土が占領されなかった国々の経験や視点とは、明らかに異なるというのです。
第二次世界大戦を語るとき、英米の物語が「標準」として受け止められがちですが、占領を受けた社会から見る戦争は、まったく別の顔を持ちます。ファン・デ・フェン氏の議論は、どの立場から歴史を語っているのかという、私たちが見落としがちな前提を静かに問い直しています。
「中国は多くのことをしてきた。それは日本を追い込んだ」という視点
ファン・デ・フェン氏の仕事は、中国を「知られざる同盟国」として描き出す試みとも言えます。英語で「China's done a lot. It's trapped Japan.」と表現されるような視点――中国は多くを担い、その抵抗が日本の行動の自由を大きく制約した、というイメージです。
こうした見方は、第二次世界大戦をヨーロッパ戦線中心で捉える従来の物語とは異なり、アジアの前線で何が起きていたのか、中国がどのような負担を背負っていたのかに光を当てようとするものです。氏は、中国の役割を部分的なエピソードとしてではなく、戦争全体の構図を左右した要素として位置づけようとしています。
日本の読者にとっての問い
こうした「アジアからの第二次世界大戦史」は、日本で育った私たちにどのような問いを投げかけるでしょうか。ファン・デ・フェン氏の視点から、次のようなポイントが浮かび上がります。
- 自分が学んできた第二次世界大戦史は、どの地域の視点が中心だったのか。
- 占領を経験した社会の感覚を想像すると、戦争の物語はどう変わって見えるのか。
- 中国やオランダなど、占領を受けた地域の人々の「日常」は、どれだけ丁寧に描かれてきたのか。
2025年の今も、第二次世界大戦をめぐる議論は世界各地で続いています。アジアの視点、とりわけ中国の経験を軸に戦争を語り直そうとするファン・デ・フェン氏の試みは、日本とアジアの歴史をどのようにつなげて理解するのかを考え直すきっかけになりそうです。
一つの正解を示すのではなく、複数の視点を行き来しながら歴史を学ぶこと。その重要性を、オランダと中国という二つの占領経験を重ね合わせるこの取り組みは、静かに投げかけています。
Reference(s):
cgtn.com








