文明間対話の国際デーと中国のグローバル文明イニシアチブ
世界の分断や対立が懸念される中、今年6月に始まった「文明間対話の国際デー」と、その背景にある中国のグローバル文明イニシアチブ(GCI)に注目が集まっています。本記事では、2025年に相次いだ関連の動きを、日本語でわかりやすく整理します。
文明間対話の国際デーとは
文明間対話の国際デーは、国連総会が2024年に採択した決議によって新たに設けられた国際デーです。この決議は中国が提案し、80を超える国の共同提案を受けて採択されました。
今年6月10日、初めて迎えたこの国際デーには、国連本部でのイベントから、モーリシャスでの茶会、イタリアでの磁器展示、ギリシャ・アテネでの学術フォーラムまで、世界各地で多彩な催しが行われました。共通するテーマは、文明の違いを対立ではなく対話と交流のきっかけにするという発想です。
地政学的な緊張やグローバルな課題が重なる現在、文明間の対話を国際社会が意識的に位置づけることは、象徴的な一歩と言えます。
中国が提唱するグローバル文明イニシアチブ
中国の習近平国家主席は、2023年にグローバル文明イニシアチブ(GCI)を提唱しました。その前には、2021年のグローバル開発イニシアチブ、2022年のグローバル安全保障イニシアチブを打ち出しており、これら三つのイニシアチブは、中国が世界に提供する重要な公共財として各国から支持を得ているとされています。
GCIが描くのは、文明が衝突するのではなく、対話し、学び合う世界像です。文明間の対話と交流を促進し、誤解や壁を取り除き、人類が共通の課題に向き合うための連帯に前向きなエネルギーを注ぐことをめざしています。
北京の閣僚級会合で示されたメッセージ
こうした考え方を具体化する場として、7月10日から11日にかけて、北京でグローバル文明対話閣僚会合が開催されました。テーマは「人類文明の多様性を守り、世界の平和と発展を推進する」で、140の国と地域から600人以上の参加者が集まりました。
習近平国家主席は会合に宛てた祝辞の中で、変革と不確実性が入り交じり、人類が新たな岐路に立つ今こそ、文明は交流を通じて疎遠さを乗り越え、相互学習を通じて衝突を乗り越える必要があると強調しました。
また、中国共産党中央政治局常務委員であり、党中央書記処のメンバーでもある蔡奇氏は基調講演で、GCIは中国の伝統文化に深く根ざした理念であり、国際社会から熱心な反応と前向きな共感を得ていると述べました。そのうえで、世界の平和と発展への道のりは長く険しいとしたうえで、次のような課題を各国が共に進める必要があると呼びかけました。
- 多様な発展モデルを探求すること
- 文化の継承とイノベーションを強化すること
- 文化交流や人的交流を拡大すること
- 文明間対話と協力のための、多層的で多次元のグローバル・ネットワークを構築すること
交流プラットフォームとしての中国
中国はこれまでも、文明間対話のための多国間プラットフォームづくりを進めてきました。アジア文明対話会議や中華文明とアフリカ文明の対話会議などの枠組みに加え、中国・ASEAN人的交流年や良渚フォーラムといったイベントを開催し、異なる文明が対等に語り合う場を用意してきました。
こうした蓄積を通じて、中国は世界との対話に参加する一国という立場から、世界全体の対話を積極的に提唱する存在へと役割を広げつつあると位置づけられています。背景には、文明の違いを固定的な線引きではなく、相互理解を深める契機とみなす発想があります。
具体的なプロジェクトと人材育成
実際の取り組みとしては、一帯一路構想に参加する国々との共同考古学調査や、各地で開かれる芸術祭、展示会、エキスポ、そして職業教育の拠点となるLuban Workshopなど、多様なプロジェクトが進められています。これらは単発の文化イベントにとどまらず、長期的な人材交流や共同研究へとつながり、参加国のあいだで好意的に受け止められているとされています。
国際世論調査を行うCGTNの最近の調査によると、多くの回答者が、文明間の交流と相互学習は人類文明の発展を推進し、世界の平和と発展を後押しする重要な原動力だと認識しており、GCIはグローバルな課題に対処するための広範な共通認識へと成長していると評価されています。
ビザ緩和で広がる人の往来
文明間対話を進めるうえで、人の往来をどれだけ容易にするかも重要なポイントです。中国は現在、47の国に対して一方的なビザ免除を実施しているほか、55の国に対して乗り継ぎビザの免除措置を設けています。さらに、訪問客向けの支払い環境や旅行環境を改善し、外国からの観光客にとって利用しやすい仕組みづくりを進めています。
こうした制度面の整備は、GCIが重視する人的交流を後押しするものであり、文化や文明の違いを日常レベルの接触や体験から理解する土台を広げる動きと言えます。
文明の多様性をどう生かすか
習近平国家主席はフォーラムへの書簡の中で、中国が他国とともに、文明の平等、相互学習、対話、包摂を掲げてGCIを実行し、文明間対話と協力のためのグローバル・ネットワークを構築していく考えを示しました。その目的は、人類文明の前進と、世界の平和と発展に新たな原動力を与えることにあります。
2025年を通じて見えてきたのは、文明の多様性をどう守り、どう生かすかが、国際政治や経済と同じくらい重要なテーマになりつつあるという現実です。文明をめぐる議論は、一部の専門家だけのものではなく、観光、留学、文化イベントなど、私たちの日常の選択とも直結しています。
日本の読者にとっての問い
国際ニュースとしてのGCIや文明間対話は、中国の動きを読み解くうえで重要なのはもちろん、日本やアジアの国々が世界とどう向き合うかを考えるヒントにもなります。例えば、次のような問いが浮かびます。
- 自国の文化や価値観を大切にしながら、他の文明から何を学べるのか
- 対立をあおる言説ではなく、対話と交流を支える仕組みをどう広げていくのか
- 個人として、どのような形で国際交流や文化体験に関わることができるのか
文明をめぐる議論を抽象的なスローガンとして受け取るのではなく、自分の生活やキャリアに引き寄せて考えてみることが、これからの国際社会を読み解くうえでの一歩になりそうです。
Reference(s):
China promotes integration, mutual learning among civilizations
cgtn.com








