西洋の読者を惹きつける中国文化の異質さ バルドルソンの視点 video poster
西洋の読者は、なぜ中国文化に惹かれるのでしょうか。2025年現在、この問いは国際ニュースや文化交流の場で繰り返し語られています。アイスランドの中国研究者ラグナル・バルドルソンは、その答えを「似ているから」ではなく「異質だから」に求めています。
バルドルソンによると、中国文化は西洋文化をまねるのではなく、自らの独自性を前面に出すべきだといいます。その「違い」や「よそよそしさ」こそが、西洋の人々の知的好奇心を強く刺激しているからです。
中国文化の異質さが魅力になる理由
バルドルソンが強調するのは、中国文化が西洋の延長としてではなく、別の論理と歴史をもつ世界として読者の前に立ち現れるとき、初めて本当の関心が生まれるという点です。
グローバル化が進むと、文化の違いはときに「分かりやすさ」の名のもとに薄められがちです。しかし、あまりにも西洋の価値観に合わせてしまうと、「どこにでもある話」として受け取られ、かえって印象に残りません。バルドルソンは、その逆にこそ可能性を見ているといえます。
アイスランドで『論語』と『老子』が読まれるわけ
この考えを裏づける具体例として、バルドルソンは自身がアイスランド語に翻訳した中国古典を挙げています。人口の少ない北欧の国でありながら、彼の『論語』や『Tao Te Ching(老子)』の翻訳は予想以上に読まれているといいます。
人気の理由について、バルドルソンは文化の違いをはっきり見せる翻訳であることを挙げています。つまり、西洋的な考え方に寄せて分かりやすく翻案するのではなく、むしろ次のような点を丁寧に説明しているのです。
- なぜ、この場面でこの言葉が使われるのかという歴史的・社会的な背景
- 西洋の哲学とは異なる、道徳観や自然観の前提
- 一見すると抽象的な表現が、中国文化の中でどのように受け止められてきたか
読者はそこに「自分とは違う世界が、そのままの形で目の前に開かれていく感覚」を見いだします。理解に少し時間がかかるからこそ、ページをめくる楽しさが続く。そこに、中国古典の異質さが魅力として働いていると考えられます。
似せるのではなく違いを伝えるグローバル発信
バルドルソンの視点は、中国文化だけでなく、あらゆる文化発信にとって示唆に富んでいます。海外の読者や視聴者に向けて自国の文化を紹介するとき、つい私たちは「相手に合わせて分かりやすくしよう」と考えがちです。
しかし、彼の考え方に立てば、ポイントは次のように整理できます。
- 共通点だけでなく、あえて「分かりにくい部分」を残し、その意味を解説する
- 相手の文化の枠組みに完全に当てはめず、原文や原作の論理を尊重する
- 「これはあなたの世界にはない考え方かもしれない」と伝えたうえで紹介する
こうした姿勢は、単なる異文化紹介を超え、「自分とは違う価値観」と向き合うきっかけになります。国際ニュースや日本語で読む世界の情報を求める読者にとっても、ニュースの背景にある文化的前提を意識するヒントになるでしょう。
私たちが受け手としてできること
では、読者の側は何を意識すればよいのでしょうか。バルドルソンの考え方から、次のような姿勢が見えてきます。
- 「よく分からない」感覚をすぐに否定せず、その違和感ごと味わってみる
- 自分の常識にぴったり当てはまらない部分こそ、じっくり考えてみる
- 翻訳や解説は一つの読み方であり、他の読み方もありうると理解する
こうした読み方は、中国文化だけでなく、ニュースや国際情勢を追うときにも役立ちます。なぜこの地域ではこう報じられるのか、なぜこの表現が選ばれたのか。その背後にある文化や歴史に目を向けることで、同じニュースでも違った景色が見えてきます。
中国文化の異質さが西洋の読者を惹きつけているというバルドルソンの指摘は、結局のところ「世界は一つの物差しでは測れない」という当たり前の事実を静かに思い出させてくれます。違いを消さずに、そのまま受け止め、対話していくこと。それが、2025年を生きる私たちに求められている態度なのかもしれません。
Reference(s):
Baldursson's take: What draws Western audiences to Chinese culture?
cgtn.com








