中国の月探査「嫦娥7号」、2026年打ち上げへ 月震観測と南極の水探し
中国の月探査機「嫦娥7号(Chang'e-7)」が2026年ごろの打ち上げを目指し、月震を観測する地震計や月の南極で水氷を探す新型探査機を搭載する計画が進んでいます。将来の人類の長期滞在を視野に入れた一歩として、国際的にも注目されるミッションです。(2025年12月時点)
嫦娥7号、2026年ごろ月の南極へ
中国科学院の研究者によると、月探査ミッション「嫦娥7号」は2026年ごろの打ち上げを目標として準備が進められています。探査機には地震計が搭載され、月震と呼ばれる月の揺れを観測し、月の内部構造を詳しく調べる計画です。
中国科学院地質与地球物理研究所の呉福元研究員は、中国メディアのインタビューで、嫦娥7号の地震計によって月の内部構造、とくに地球から見える近側と見えない遠側で構造が異なるのかを調べたいと語りました。この研究は、月の成り立ちを理解するうえで重要な一歩になるとされています。
月震観測で月の表と裏の違いを探る
月は地球に対して常に同じ面を向けて自転しているため、私たちが地上から見ることができるのは近側だけです。一方、地球からは見えない遠側は、地形や地質の特徴が大きく異なります。この近側と遠側のはっきりとした違いは「月の二分性」とも呼ばれています。
中国科学院国家天文台の李春来研究員は、近側からサンプルを持ち帰った嫦娥5号と、遠側からサンプルを採取した嫦娥6号の試料を比較することで、地形や物質の分布が大きく違うことが分かり、月の二分性がより明確になったと説明しています。
嫦娥7号の地震計による観測は、こうした違いがどのようにして生まれたのか、内部構造の差とどのように関係しているのかを探る手がかりになると期待されています。
南極の水氷を狙うホッパー型探査機
嫦娥7号は、月の南極域を探査対象としています。南極は、一年中太陽光が当たらない「永久影」と呼ばれるクレーターが存在し、水の氷が残っている可能性が高いとされる地域です。
今回のミッションでは、水分子分析装置を搭載したホッパー型の小型探査機が導入されます。この探査機は、太陽光の当たる地点から永久影のクレーター内へと「ジャンプ」しながら移動し、詳しい観測を行う計画です。
ホッパーは、傾斜地にも着陸できるように能動的な衝撃吸収技術を備えており、安全に着地しながら複数の地点でデータを集められるよう設計されています。これにより、水氷の有無や分布をより精密に確認できると見込まれています。
自律航法と新型ソーラーパネル:極域探査を支える技術
嫦娥7号の着陸船には、中国として初となる深宇宙用のランドマーク画像航法システムが搭載される予定です。これは、着陸地点周辺の地形の画像を基準として自ら位置を認識し、高精度な着陸を実現する技術です。
探査機は着陸候補地の地形を自律的に解析し、運用全体の半分以上を地上からの介入なしに行うことが想定されています。通信に時間がかかる深宇宙探査では、自律制御の比重が高まっており、その実証の場にもなります。
また、月の南極では太陽が地平線近くを移動するため、太陽光が低い角度から差し込みます。嫦娥7号では、太陽電池パネルを縦に近い形で配置し、低い角度の太陽光でも効率よく発電できるよう最適化が進められていると、副主任設計者の譚玉華氏はインタビューで説明しています。
嫦娥5号・6号から7号へ:月探査は次の段階へ
嫦娥7号は、中国の月探査計画の中で、これまでの成果を踏まえた次のステップと位置づけられています。
- 嫦娥5号は月の近側からサンプルを採取し、地球に持ち帰りました。
- 続く嫦娥6号は、月の遠側から合計1935.3グラムのサンプルを採取することに成功し、2024年に地球へ持ち帰りました。
嫦娥6号の採取地点は、月で最大かつ最古とされる南極エイトケン盆地で、近側と遠側の物質の違いを明らかにするうえで貴重なデータを提供しています。
中国は2025年7月に、嫦娥6号が持ち帰ったサンプルの分析結果の一部を公表しました。こうした成果を踏まえ、嫦娥7号では、南極における水の存在や内部構造の違いなど、月の環境を立体的に理解することが目指されています。
なぜ今、月の南極と月震なのか
各国が月の南極に注目する背景には、将来の有人探査や長期滞在の拠点としての可能性があります。水の氷が大量に存在すれば、飲料水や酸素、さらには燃料の原料にも利用できるためです。
一方、月震や内部構造の理解は、安全な基地建設や着陸地点の選定に欠かせません。地震の起きやすい場所や、地殻の厚さの違いを知ることで、リスクを減らすことができます。
嫦娥7号のようなミッションは、単に一国の技術力を示すだけでなく、人類全体の月や宇宙に対する理解を深める国際的な知的基盤を広げる取り組みでもあります。2026年ごろの打ち上げに向けて、今後の計画や新たな発表にも注目が集まりそうです。
Reference(s):
China's Chang'e-7 to carry a seismograph, 2026 launch targeted
cgtn.com








