中国の研究チームが高精度な土壌水分推定法 BSSでリモートセンシング刷新
土壌の水分量をどれだけ正確に把握できるかは、農業、生態系保全、気候変動の監視などに直結する国際ニュース級のテーマです。中国の研究チームが、リモートセンシングによる高精度な土壌水分推定を可能にする新しい手法を提案しました。
ブラインドソース分離で土壌水分を「聞き分ける」新手法
今回の研究は、中国科学院(CAS)のNorthwest Institute of Eco-Environment and Resources(NIEER)の研究者を中心に、同じくCAS傘下のInstitute of Tibetan Plateau Research(ITP)、Shanxi Normal University、Beijing Normal Universityの研究者が共同で実施しました。成果は、リモートセンシング分野の学術誌 IEEE Transactions on Geoscience and Remote Sensing に掲載されています。
研究チームは、ブラインドソース分離(Blind Source Separation、BSS)という信号処理の技術を土壌水分推定に応用しました。BSSは、混ざり合った信号から、もとの成分を取り出すための手法です。
マイクロ波リモートセンシングで取得される「輝度温度信号」は、本来知りたい土壌水分だけでなく、さまざまな情報が混ざり合ったものです。具体的には、
- 土壌水分
- 土壌温度
- 地表面の粗さ
- 植生の被覆状態
- 大気の状態
といった要因が同時に影響し合い、その複雑さが高精度な推定の大きな壁になってきました。
にぎやかなパーティーをイメージすると分かりやすい
NIEERの研究者であるJin Rui氏は、この新しいアプローチを、にぎやかなパーティーにたとえて説明します。音楽、会話、食器の音など、さまざまな音が同時に聞こえる状況から、特定の音だけを聞き分けるのがBSSのイメージです。
今回の手法では、こうした「音の聞き分け」に相当する処理をリモートセンシング信号に対して行い、混ざり合った情報の中から土壌水分に関わる成分だけを取り出そうとしています。
時間変化と複数チャネルを組み合わせたアプローチ
研究チームは、マイクロ波輝度温度信号が時間とともにどのように変化するかという構造的な特徴を丁寧に解析しました。そのうえで、
- 単一チャネルのBSS技術
- 複数チャネルを組み合わせたBSS技術
を組み合わせることで、信号の分解精度を高めています。
このアプローチにより、分離されたソース信号と土壌水分との間に、安定した対応関係(マッピング)を構築することに成功しました。その結果、従来は地表面の粗さや植生被覆などの影響を強く受けていた土壌水分推定を、高い精度で行えるようになったといいます。
Qinghai-Xizang高原で実証 非線形で複雑な信号にも対応
新手法は、Qinghai-Xizang高原での実験によって検証されました。この地域で取得されたマイクロ波データを用いた結果、提案手法は適用可能であり、安定して動作することが示されています。
研究によると、この手法は、非定常かつ非線形で、複数の要因が混ざり合った信号を効率的に「ほどく」能力に優れています。そのため、土壌水分だけでなく、他の地球物理量を推定する際にも応用できる可能性があるとされています。
なぜ重要か:環境モニタリングと災害リスク管理への波及
土壌水分の高精度な把握は、
- 干ばつや洪水リスクの早期把握
- 農作物の生育管理や収量予測
- 陸域の水循環やエネルギーバランスの解析
など、多くの分野に直結します。衛星などのリモートセンシングデータから、より正確に土壌水分を推定できれば、広域かつ継続的なモニタリングが現実味を帯びます。
今回の研究についてITPのLi Xin氏は、土壌水分推定の新たな理論的枠組みと手法を提示しただけでなく、他の地球物理量の推定にも広く応用可能な解決策を示していると評価しています。
リモートセンシング技術と高度な信号処理を組み合わせることで、地球表層の状態をより精密に読み解こうとする動きは、今後も国際ニュースの重要なトピックとして注目されそうです。
Reference(s):
cgtn.com








