徳化の陶磁器がひらく世界 グローバル文明対話の現場から video poster
中国福建省の徳化県で受け継がれてきた陶磁器が、2025年に開かれた国際会議「Global Civilizations Dialogue(グローバル文明対話)」の場で改めて注目を集めました。国際ニュース専門チャンネルのCGTNは、会議のサイドフォーラムで徳化県党委書記のFang Junqin(ファン・ジュンチン)氏にインタビューし、その歴史と無形文化遺産としての伝承・発信のあり方について話を聞きました。
福建省・徳化県とは:陶磁器のまちの現在地
徳化県は、中国福建省にある陶磁器の産地として知られています。長い時間をかけて培われた技とデザインは、地域の暮らしと密接に結びつきながら発展してきました。
インタビューでは、徳化の陶磁器が単なる生活用品ではなく、地域の歴史や信仰、職人の美意識を映し出す「文化の器」として位置づけられている点が強調されました。こうした背景から、徳化の陶磁器は無形文化遺産として保護・継承するべき重要な文化資源とみなされています。
グローバル文明対話のサイドフォーラムで語られたこと
Global Civilizations Dialogueは、さまざまな文明や文化の経験を持ち寄り、共存や対話の可能性を探る国際会議です。そのサイドフォーラムで、地域の具体的な事例として取り上げられたのが、徳化の陶磁器でした。
CGTNとの対話の中で、Fang Junqin氏は、徳化の陶磁器の歴史をたどりながら、次のようなポイントを軸に説明しました。
- 地域の自然環境とともに育まれてきた陶磁器文化
- 職人の技術が世代を超えて受け継がれてきたプロセス
- 国内外との交流の中で変化し続けるデザインと用途
こうした説明を通じて、徳化の陶磁器が「過去の遺産」ではなく、今も更新され続ける「生きた文化」であることが浮かび上がります。
無形文化遺産としての徳化の陶磁器
無形文化遺産という言葉は、音楽や舞踊、祭礼などをイメージしがちですが、伝統工芸の技や制作の知恵もその重要な一部です。徳化の陶磁器の場合、価値の中心にあるのは「もの」そのものだけでなく、その制作に関わる技術体系と、地域のコミュニティが持つ記憶です。
インタビューでは、無形文化遺産を守るために、次のような視点が紹介されました。
- 職人の技を体系的に記録し、教育の場で次世代に伝えること
- 地域の生活や祭りと陶磁器文化を結びつけ、日常の中で活かし続けること
- 国内外の来訪者に対して、単なる「お土産」以上の背景や物語を伝えること
無形文化遺産の保護は、博物館の中に作品を収めるだけでは完結しません。作り手と使い手、地域と外部の人々の間に、新しい関係を築いていくプロセスそのものが大切だという視点がにじみます。
世界にどう伝えるか:プロモーションから「対話」へ
徳化の陶磁器を世界に伝える取り組みについても、Fang氏は方向性を語りました。キーワードは「プロモーション」よりも「対話」に近いものです。
考えられるアプローチとしては、例えば次のようなものがあります。
- 海外の美術館やギャラリーとの協力による企画展示
- 国際会議や見本市でのデモンストレーションやワークショップ
- 海外のデザイナーやアーティストとのコラボレーション作品の制作
- オンライン配信や映像制作を通じた、制作現場の可視化
これらは単に「知名度を上げる」ためだけではなく、徳化の陶磁器をきっかけに、他地域の人々が自国の伝統工芸を見つめ直したり、異なる文化の美意識を比較したりする機会にもなり得ます。
デジタル時代の無形文化遺産
2025年現在、無形文化遺産の世界でもデジタル技術の活用は避けて通れません。徳化の陶磁器についても、映像やライブ配信、バーチャル展示といった形での紹介が進みつつあります。
デジタル化には次のような利点があります。
- 世界各地の人が、距離に関係なく制作のプロセスを知ることができる
- 職人の高度な技術を細部まで記録し、将来に残せる
- 若い世代が日常的に使うデバイスを通じて、伝統文化に自然に触れられる
一方で、画面越しの情報だけでは、質感や温度感といった「ものと向き合う体験」は伝えきれません。その意味で、現地を訪れ作品に触れる体験と、オンラインでの発信は、互いを補い合う関係にあるといえます。
「もの」から「物語」へ:文化交流のかたち
Global Civilizations Dialogueのサイドフォーラムで徳化の陶磁器が取り上げられたことは、国際ニュースとして見ると小さなトピックかもしれません。しかし、背景には、異なる文化同士がどのように互いを理解し合うかという大きなテーマがあります。
陶磁器は、言葉が通じなくても手に取って眺めることができる身近な文化財です。その一つひとつに、作り手の技術と美意識、地域の歴史や日常の暮らしの断片が詰まっています。こうした「物語」を丁寧に伝えていくことが、静かだが確かな文化交流につながっていきます。
日本でも、各地に陶磁器をはじめとした多様な工芸文化があります。徳化の事例は、そうした地域の文化をどのように世界に開き、同時に地域に根づかせ続けるかを考える上で、一つの参考例として受け止められそうです。
徳化の陶磁器をめぐる対話は、グローバルな場において、ローカルな文化がどのように自らの声を発し、世界と向き合っていくのか。その可能性と課題を静かに映し出しています。
Reference(s):
cgtn.com








