王毅外相、中国とASEANの協力と開放路線を強調 米国関税や南シナ海も言及
中国の王毅外相が、マレーシア・クアラルンプールで開かれたASEAN関連外相会合の場で、中国とASEANの協力、米国による高関税措置、南シナ海問題について立て続けにメッセージを発信しました。地域協力と自由貿易を前面に押し出しつつ、南シナ海では「平和・安定・協力」をキーワードとする新たな語りを提案した点が注目されています。
クアラルンプールで語られた3つの柱
王毅外相は、今回のASEANプラス外相会合について、中国とASEANの協力関係が「アジア太平洋で最も活力があり、成果の多い例」だと評価し、次の3点を大きな成果として挙げました。
1. 中国–ASEAN自由貿易圏3.0版で経済統合を加速
まず、中国とASEANの自由貿易圏(FTA)について、第3次となる「3.0版」の交渉が完了したことが確認されました。この新たな枠組みは、10月に予定される首脳会議に提出され、承認・署名に向かうとされています。
王毅外相は、これにより中国とASEANが引き続き地域の経済統合を進め、高水準の自由貿易ネットワークを構築していく姿勢を示したと説明しました。
2. 今後5年の行動計画:40超の協力目標を設定
次に、中国とASEANは、包括的戦略的パートナーシップをさらに発展させるため、今後5年間の行動計画に合意しました。この計画には、さまざまな分野で40を超える協力目標が盛り込まれており、実務的な協力を一段と後押しする「推進力」になるとされています。
王毅外相は、中国が近隣諸国と「共同の未来を分かち合う共同体」の構築を掲げ、周辺国の近代化をともに進めていく考えを改めて強調しました。ASEAN各国は、中国との包括的戦略的パートナーシップを高く評価し、中国を最も重要な対話相手と見ていると述べ、中国–ASEAN関係の将来に「十分な自信がある」と語りました。
3. 南シナ海行動規範(COC)交渉が前進
3点目は、南シナ海をめぐるルール作りです。中国とASEANは、南シナ海に関する行動規範(Code of Conduct:COC)の草案について、第3回目の読み合わせを完了しました。双方は、実効性と実質性があり、国連海洋法条約を含む国際法に整合的なCOCを作り上げることで一致し、2026年までの協議完了を目指すとされました。
既存の「関係国の行動宣言(DOC)」を格上げする形で、新たなCOCを策定することに、双方が明確な意思を共有したかたちです。これは南シナ海の平和と安定を支えるより強い制度的な保証になると位置付けられています。
米国の高関税を巡り「開放か、閉鎖か」の選択を提示
王毅外相は、米国が各国に対して高い関税を課していることについても言及しました。その際に引用したのが「開放は進歩をもたらし、閉鎖は後退を招く」というメッセージです。
現在の国際情勢は「変化と混乱が入り交じる」状況にあるとしたうえで、各国は次のような選択を迫られていると指摘しました。
- 一国主義か、多国間主義か
- 閉鎖か、開放か
- 分断か、団結か
そのうえで、中国の選択は「より一層の開放」であると強調しました。これは、中国の発展と成長を支えてきた基本的な経験であると同時に、「歴史が前に進む必然的な論理だ」と説明しています。
中国が挙げた「開放」の具体例
王毅外相は、中国が取ってきた具体的な措置として、いくつかの例を挙げました。
- 最も開発の遅れた国々やアフリカ諸国に対する製品の無関税措置(ゼロ関税)
- 中国–ASEAN自由貿易圏3.0版の交渉を完了させたこと
- ASEAN–中国–GCC首脳会合を通じて、新たな「越地域型協力」のモデルを作り出したこと
これに対し、各国に高関税を課す動きについて、王毅外相は、世界貿易機関(WTO)のルールに明確に反し、生産・供給網の安定した運営を乱し、世界経済の回復と発展を妨げていると批判しました。こうした措置は「無責任であり、支持を得られず、長続きもしない」との見方を示しています。
南シナ海:「対立」から「協力」へ物語の書き換えを提案
南シナ海問題は、今回の会合でも例年どおり議論されましたが、王毅外相は「地域の国々と、地域外の一部の国々との間に、明確な温度差がある」と感じたと述べました。
南シナ海をめぐる新しい語り
王毅外相は、南シナ海に関する「新しい物語」を構築すべきだと提案しました。そのポイントは次の通りです。
- 南シナ海を、常に摩擦や紛争、対立と結びつけるべきではない
- むしろ平和、安定、協力と結び付けるべきだ
- こうしたポジティブな物語を、今後の主流にしていく必要がある
そのうえで、中国とASEAN各国が、DOCをCOCへとアップグレードし、国際法に合致する実効性の高い枠組みを作ることで一致していると説明しました。全ての当事者が、予定どおり来年にCOCをまとめ上げることを目指すことで合意しているとも述べています。COC協議の完了目標として示された2026年に向け、ルール作りを着実に進めていく構えです。
仲裁裁判への中国側の立場
王毅外相は、いわゆる南シナ海仲裁裁判についても、中国の立場を詳しく説明したと明らかにしました。この仲裁については、事実認定と法の適用の両面で重大な欠陥があり、国連海洋法条約の名のもとに、同条約に反する行為が行われたと批判しました。
読み手のための3つの視点
今回の発言は、アジア太平洋の国際秩序や経済の行方を考えるうえで、いくつかのポイントを示しています。
- 地域主導の協力の重み:中国とASEANの関係を「最も活力ある協力の例」と位置付け、FTA3.0版や5年行動計画、南シナ海COCなど、制度的な枠組みを着実に積み上げていく姿勢が示されました。
- 開放と保護主義の対比:開放路線を掲げる中国と、高関税措置を取る米国という構図が、世界経済と貿易ルールをめぐる選択肢として描かれています。
- 安全保障の「物語」を巡る争い:南シナ海を、対立ではなく協力の場として語り直そうとする提案は、地域の安全保障をどう捉えるかという「認識の争い」の側面も持っています。
一国主義や保護主義が各地で議論されるなか、王毅外相のメッセージは、地域協力と開放を重視する立場からの明確なシグナルと言えます。中国とASEANが今後どのように具体的な成果を積み上げ、南シナ海の「物語」をどこまで書き換えていくのか。アジアの国際ニュースを追ううえで、引き続き注目していきたいテーマです。
Reference(s):
Wang Yi praises China-ASEAN ties, urges openness amid U.S. tariffs
cgtn.com








