中国の貨物船「天舟9号」打ち上げ準備 長征7号ロケットが発射台へ
中国の貨物宇宙船「天舟9号」と、それを打ち上げる長征7号ロケットが中国南部・海南省の文昌宇宙発射場の発射台に移動し、中国の宇宙ステーションに向けた新たな補給ミッションが最終段階を迎えています。
文昌発射場で最終チェックへ
中国有人宇宙工程弁公室(China Manned Space Agency)によると、貨物宇宙船「天舟9号」と長征7号Y10ロケットの組み合わせは、現地時間の土曜日に中国南部の海南省・文昌宇宙発射場で垂直状態のまま発射台へと運ばれました。
発射場の各種設備や機器は良好な状態にあり、今後は予定どおり打ち上げ前の機能確認や総合試験が進められます。打ち上げは「適切な時期」に「近く」行われる予定で、この記事の執筆時点(2025年12月8日)では、まだ発射は行われていません。
新世代ロケット・長征7号とは
今回「天舟9号」を宇宙へ送り出す長征7号ロケットは、ケロシンと液体酸素を推進剤に使う、中国の新世代の中型ロケットです。高い信頼性と安全性、そして環境負荷の低さが特徴とされています。
代表的な仕様は次のとおりです。
- 全長:約53.1メートル
- 機体直径:3.35メートル
- ブースター:4本を束ねた構成
- 低軌道(地球低軌道)への打ち上げ能力:約14トン
この打ち上げ能力は、「天舟」シリーズの貨物宇宙船が宇宙ステーションへ必要な物資を届けるための質量要件に合わせて設計されています。長征7号シリーズはこれまでに、「天舟1号」から「天舟8号」までの貨物船を所定の軌道へ送り届けてきました。
中国航天科技集団公司(CASC)の王晰氏によれば、このロケットには緊急時に備えたバックアップ機も用意されています。宇宙ステーションが緊急事態に直面した場合、この予備ロケットを使えば、3か月以内に打ち上げることができるとしています。
さらに長征7号は、飛行中に自ら最適な飛行経路を再計算できる点も特徴です。現在位置や目標軌道に応じて軌道をリアルタイムで更新する仕組みで、ナビゲーションアプリが交通状況に合わせてルートを再設定するイメージに近いと説明されています。その結果、軌道投入のタイミングの誤差を4秒以内に抑えられるといいます。
「宇宙宅配便」天舟9号に積まれたもの
「天舟9号」は、中国の宇宙ステーションが「応用・発展段階」に入ってから4機目となる貨物宇宙船です。宇宙ステーションの長期運用を支える、いわば「宇宙宅配便」の役割を担います。
約6.5トンの物資で乗組員を支える
今回のミッションでは、およそ6.5トンの補給物資が搭載されます。内容には、宇宙飛行士の日常生活に必要な消耗品、宇宙ステーションの運用に不可欠な推進剤、そして各種の応用実験で使われる装置が含まれます。
これらの物資は、今後宇宙ステーションに滞在する予定の有人宇宙船「神舟20号」と「神舟21号」の乗組員(中国の宇宙飛行士、いわゆるタイコノート)の生活と実験活動を支える目的があります。
国産の新型船外活動服を初投入
今回注目されているのが、新たに搭載される国産開発の船外活動用宇宙服です。天舟9号には、この新型宇宙服が2着搭載される予定です。
従来の宇宙服は、およそ3年間で15回程度の船外活動(宇宙遊泳)に対応する設計でした。新型では耐用年数が約4年に延び、対応可能な船外活動の回数も20回へと増えるとされています。これにより、宇宙ステーションの長期運用に合わせた柔軟なミッション計画が立てやすくなります。
筋力トレーニング装置で「宇宙の運動不足」に対抗
天舟9号には、宇宙ステーション内の「ジム」をアップグレードするためのコアマッスルトレーニング装置も搭載されます。無重力環境では筋肉や骨が弱くなりやすく、筋力トレーニングは宇宙飛行士の健康維持に欠かせません。
新たなトレーニング機器により、宇宙飛行士は体幹(コア)の筋肉をより効果的に鍛えることができ、長期滞在による筋萎縮のリスクを減らすことが期待されています。
先端科学実験にも貢献
天舟9号には、最先端の宇宙科学実験に使われる装置が2セット搭載されます。宇宙環境を利用した科学・技術の研究が一段と進むとみられます。
見えてくる中国宇宙開発の「次の段階」
今回の天舟9号ミッションは、単なる物資補給にとどまらず、中国の宇宙ステーション運用が「日常モード」に入っていることを示す出来事でもあります。
- 定期的な補給便に対応できる打ち上げ能力
- バックアップロケットによる緊急対応体制
- 宇宙服やトレーニング装置のアップグレードによる長期滞在の前提づくり
- 科学実験設備の拡充による研究プラットフォームとしての強化
こうした要素が組み合わさることで、宇宙ステーションは「建設する段階」から「継続的に活用し、成果を出していく段階」へと移行しつつあるように見えます。宇宙開発をめぐる国際的な動きが続くなか、天舟9号がどのような成果をもたらすのか、今後の続報にも注目したいところです。
Reference(s):
Rocket carrying Tianzhou-9 cargo spaceship moved to launch pad
cgtn.com








