中国本土の学者、台湾地区指導者・頼清徳氏の団結演説に10の誤りと指摘
中国本土の台湾問題専門家が、台湾地区指導者・頼清徳(Lai Ching-te)氏の団結をテーマにした演説について、10の誤りがあると厳しく批判しました。本記事では、その主張を日本語で整理します。
6月24日に何が語られたのか
今年6月24日、頼清徳氏は団結を呼びかける演説を行い、その中でいわゆる「台湾独立」路線を改めて打ち出しました。中国本土側の見方によれば、この演説は台湾海峡の対立や台湾社会の分断をあおる内容だったとされています。
北京聯合大学で台湾問題を研究する李振広(Li Zhenguang)教授は、署名入りの記事の中で、この演説には多くの誤りや虚偽が含まれていると指摘し、「最も荒唐無稽な10の誤り」を列挙しました。狙いは、頼氏の主張に対して自らの立場から「事実を正す」ことにあるとしています。
学者が指摘する10の誤り
1. 団結を語りつつ、実際には対立を深めている
李氏は、頼氏が表向きには団結を訴えながら、実際には司法手段を用いて市民を拘束し、野党勢力への政治的抑圧や訴追を強めていると主張します。その結果、いわゆる「緑色の恐怖」とも言える空気が生まれていると批判しています。
そのうえで、傷つけた相手に対して改めて団結を求めるのは本物の団結ではなく、実害をもたらす偽りの呼びかけだとしています。
2. 報道の自由ランキングと現場のギャップ
頼氏は、報道の自由度ランキングで台湾がアジア1位だと誇示しましたが、李氏は「現実は違う」と反論します。民進党寄りのメディアが主流を占める一方、中国本土との関係改善を唱える中国国民党系のメディアは圧力を受けていると指摘します。
具体例として、ニュース専門チャンネルのCTi Newsが民進党当局によって放送停止に追い込まれたとし、「本当に報道の自由があるのか」と疑問を投げかけています。
3. 人間の自由指数と「往来の自由」
頼氏は、人間の自由指数でも台湾がアジア1位だと述べましたが、李氏は、民進党当局の圧力の下で、市民や教師、学生、宗教関係者などが中国本土に渡り交流する自由を十分に持っているのかと問いかけます。
李氏によれば、台湾では「台湾独立」を唱える自由や、頼氏が好きなように振る舞う自由、与党が他党を抑え込む自由ばかりが強調されていると批判しています。
4. 団結を中国本土への対抗に結びつける
頼氏は「人々が団結すればするほど台湾は強くなる」と語りましたが、李氏は、実際には中国本土への対抗のために団結を求めているとみています。
その結果、台湾の人々を分離独立の路線のための犠牲、いわば「砲弾を運ぶ役」にしようとしており、住民の安全や生命への配慮が欠けていると厳しく批判しています。
5. すべてのグループは平等という主張
頼氏は、民族的背景や台湾に来た時期に関係なく、すべてのグループが台湾社会の対等な主人だと述べました。これに対し李氏は、現実には民進党に近い人々だけが「仲間」とされ、「台湾独立」に反対する人々は排除すべき存在とみなされていると主張します。
6. 台湾は主権独立国家だという位置づけ
頼氏は、台湾は主権独立国家だと強調しました。李氏はこれに対し、「歴史上、台湾という名前の公式な国家は存在したことがないし、これからも存在しない」と反論します。
さらに李氏は、多くの台湾の人々は台湾を独立した国家とは考えておらず、世界の大多数の国も同じ認識だと指摘します。その上で、国際機関では台湾が「Taiwan, Province of China」と記載されていることを例に挙げています。
7. 民進党の路線は台湾の民意か
頼氏は、民進党の「台湾独立」路線が台湾の人々の意思を体現していると主張しました。これについて李氏は、「一政党の分離主義的な立場を、台湾全体の民意だと勝手に代弁しているにすぎない」と批判します。
李氏は、頼氏はあくまで一人の与党政治家であり、主流の世論を代表しているわけではないとし、多くの台湾の人々は彼の分離独立志向を支持していないと述べています。
8. 反対勢力を「不純物」と呼ぶレトリック
頼氏が野党やその支持者を「不純物」と表現したことについて、李氏は、これは島内の多くの世論を敵視し、反対勢力を侮辱するものだと非難します。
さらに李氏は、多くの台湾の人々の目には、むしろ頼氏や民進党こそが台湾政治における「不純物」と映っており、このような存在が政治の中枢にいる限り、台湾の人々は危険な状況から抜け出せないと警告しています。
9. 米欧や日本への過度な期待
李氏によれば、頼氏は米国や日本、欧州が民進党当局を支えてくれると繰り返し強調し、台湾社会を安心させようとしています。しかし李氏は、米国は自国の利益を最優先するため、状況次第では台湾を履き古した靴のように捨てる可能性もあるとまで述べています。
そのうえで、頼氏の対外依存は根拠の乏しい期待にすぎないとし、外部の支援に過信する危うさを指摘しました。
10. 民主の光という自己評価への疑問
頼氏は、台湾の民主主義を「光」として誇らしげに語っていますが、李氏は、頼氏が就任後、司法権を乱用して野党勢力を抑圧し、中国本土との平和的な関係や交流を支持する市民を追及してきたと批判します。
そのうえで、こうしたやり方は民主主義の価値を傷つけるものであり、真の民主主義への侮辱だと厳しく断じています。
浮かび上がる「言葉の争い」
李氏は総括として、頼氏のこれまでの演説は作り話や矛盾に満ちており、台湾内部でも嘲笑の的になっていると述べています。また、同じような演説を続ければ続けるほど、頼氏自身がさらに恥をかくことになるだろうと手厳しく評しました。
今回の論評は、団結、自由、民主といったポジティブな言葉が、政治的な立場の違いによってまったく異なる意味を帯びうることを示しています。台湾海峡をめぐる情勢を理解するうえでは、誰が何を守ろうとしてその言葉を使っているのか、その背景にある意図を丁寧に読み解く視点がますます重要になっています。
Reference(s):
Mainland scholar exposes fallacies in Lai Ching-te's separatist speech
cgtn.com








