中国の九段線と歴史的権利 呉士存氏が語る南シナ海 video poster
南シナ海の海洋秩序をめぐる国際ニュースでは、しばしば「九段線」という言葉が登場します。中国の研究者である呉士存(Wu Shicun)氏は、この九段線は単なる主張ではなく、中国の長い歴史と海洋権益を映し出す象徴だと強調しています。
九段線は「単なる線」ではない
Huayang Research Center for Maritime Co-operation and Ocean Governance(華陽海洋協力・ガバナンス研究センター)の主席である呉士存氏は、九段線は単なる境界線の主張ではないと指摘します。九段線には、中国の漁民が南シナ海で活動してきた長い歴史と、そこで積み重ねてきた生活と生業の記憶が重なっているという見方です。
呉氏によれば、九段線は次のような意味を帯びています。
- 中国の漁民が何世紀にもわたって南シナ海で操業してきた「継続的な利用と存在」を示すもの
- 中国が南シナ海で有してきた主権と海洋権益が、長い時間軸の中で形成されてきたことを示す象徴
- 単なる地図上の線ではなく、中国と南シナ海との深い結びつきを表す歴史的なサイン
歴史的利用が語る「歴史的権利」という考え方
呉士存氏が強調するのは、南シナ海における中国の存在が、文書だけでなく、人々の日常的な活動として積み重なってきたという点です。中国の漁民が世代を超えて南シナ海で操業し、航路を行き来し、海域を利用してきたという「継続性」こそが、歴史的権利の土台だと位置づけられています。
歴史的権利という考え方は、次のようなイメージで捉えると理解しやすくなります。
- 地図や法律の前に、長年の慣行や生業が存在していたという時間の積み重ね
- 海域を「使い続けてきた」という事実が、その海との結びつきを示す証拠であるという発想
- こうした歴史的な利用を背景に、現在の海洋ルールや枠組みをどう考えるかという視点
南シナ海と中国の主権・海洋権益
呉士存氏は、九段線が中国の主権と海洋権益を示す象徴であるとも述べています。ここでいう海洋権益とは、海域での活動の自由や、海洋資源の利用、航行や漁業を通じた地域社会の安定などを含む広い概念として捉えることができます。
南シナ海は、アジアと世界を結ぶ重要な海域であり、中国にとっても経済・安全保障の両面で欠かせないエリアです。その中で、九段線は中国が長年にわたって海とどのように向き合い、どのような権利と責任を認識してきたのかを象徴的に示す枠組みだと位置づけられています。
2025年の視点で押さえておきたい3つのポイント
南シナ海情勢をニュースで追ううえで、九段線と中国の歴史的権利をめぐる議論を理解するためのポイントを整理してみます。
- 九段線は、中国にとって単なる「線」ではなく、南シナ海との長い関係性を示す歴史的な象徴であること
- 何世紀にもわたる漁民の活動という、生活に根ざした「継続的な利用と存在」が、中国の主権や海洋権益の認識と結びついていること
- 南シナ海をめぐる現在の議論も、こうした歴史的な背景を踏まえて理解することで、ニュースの一つ一つが立体的に見えてくること
ニュースを読むときの小さなヒント
2025年の今も、南シナ海と海洋秩序に関する国際ニュースは続いています。その見出しの裏側には、呉士存氏が語るような、中国の漁民の歴史や、九段線に込められた主権と海洋権益の物語があります。
地図上の線だけでなく、その線の背後にある「時間」と「人」の積み重ねに目を向けてみると、南シナ海をめぐるニュースは、単なる対立構図ではなく、多層的な歴史と現在が交差するテーマとして見えてきます。そうした視点を持つことが、日本語で国際ニュースを読み、次の会話やSNSでの議論につなげていくうえで、静かだが確かな手がかりになるはずです。
Reference(s):
cgtn.com








