中国・上海発の人中心の都市づくり デジタルと更新で暮らしはどう変わる?
中国・上海を中心に、「人を真ん中に置いた」都市づくりが加速しています。老朽住宅の改修からデジタル行政、緑地整備まで、都市のかたちをどう変えようとしているのでしょうか。
上海が示す「人中心」の都市更新モデル
東部の経済都市である上海では、黄浦江沿いのウォーターフロント空間の公共化、古い路地や住宅街の改修・再生などを通じて、人中心で持続可能な都市更新のモデルづくりが進んでいます。
2019年、習近平国家主席は上海を視察した際に「都市は人々によって建設され、人々のためのものである」と述べ、都市建設において人中心の発展理念を貫くよう強調しました。こうした考え方が、その後の都市づくりの重要な指針となっています。
この理念のもと、上海では老朽化した集合住宅や都市村と呼ばれるエリアの改修、徒歩圏内で生活サービスを完結させる十五分コミュニティ生活圏の整備などに取り組み、ここ数年でおよそ四万世帯の居住環境を改善してきました。
経済、生活、環境、防災といったニーズを総合的に調和させることを目標に、上海は都市更新を加速させ、住宅と防災の仕組みを整えつつ、包摂的で便利な都市サービスを広げ、グリーンで低炭素な転換も進めています。住みやすく、しなやかで、スマートな都市として、全国に先行して「人々の美しい生活の場」をつくろうとしていると言えます。
生活圏をデザインする:十五分コミュニティ
十五分コミュニティ生活圏とは、自宅から徒歩十五分以内に、日々の生活に必要な買い物、医療、教育、公共サービス、緑地などがそろうように設計されたエリアのことです。距離だけでなく、誰もが使いやすい動線や施設配置を意識することで、高齢者や子育て世代を含む幅広い住民の生活のしやすさにつながります。
上海では、こうした生活圏の整備と老朽住宅の改修を組み合わせることで、単なる建物の更新にとどまらず、周辺の小さな公園や道路、公共空間も含めた総合的なまちづくりを進めています。
デジタルガバナンスで支える高品質な都市サービス
巨大都市のガバナンスには、複雑で多面的な課題がつきものです。上海はデジタル技術を活用して行政と都市運営を支える仕組みを整え、人中心の都市建設を具体化しています。
ワンストップ行政プラットフォーム
上海が構築したのは、行政サービスを一括して扱うネットワークと、都市全体の運行を支えるネットワークという二つの基盤です。ゼロから構築されたワンストップの行政サービスプラットフォームは、すでに日常的に稼働しており、市の四十五部門をつなぎ、平均で一日約百十万件の問い合わせや処理に対応しています。
これにより、市民は従来のように複数の窓口を回る必要が減り、オンラインで手続き状況を確認できるなど、行政との距離が大きく縮まっています。
医療と公共サービスのデジタル化
医療分野でも、オンライン診療や予約、支払い、診療記録の相互利用が進められてきました。医療機関をまたいで記録を共有できることで、診察の際の説明や手続きの負担を減らす狙いがあります。
同時に、上海はあらゆる公共サービスでデジタル・アクセシビリティの向上に取り組み、高齢者や障がいのある人に配慮した画面表示や操作方法への対応など、きめ細かな改良を進めています。
電動自転車の安全対策にもデジタル技術
今年の重点施策の一つが、電動自転車に関わる安全リスクへの対応です。各コミュニティでは、エレベーターに連動したアクセス制御システムやスマート自転車置き場を導入し、居住エリアのエレベーターや駐輪施設をオンラインのプラットフォームにつなげています。
これにより、火災リスクなどにつながりかねない危険な利用状況を早期に把握し、市全体の安全を守る仕組みづくりが進んでいます。
上海から中国各都市へ広がる人中心の都市づくり
上海以外の各都市でも、人中心のアプローチを都市計画から建設、ガバナンスに至るまで一貫して取り入れる動きが広がっています。細部にこだわる丁寧な都市づくりにより、街の質を高め、デジタル技術で都市運営を支える取り組みが進んでいます。
都市インフラの分野では、ガスや水道などの運行状況をインテリジェントに把握し、動的な監視や早期警戒を実現した都市も出てきています。問題が起きてから対処するのではなく、予兆をいち早くつかむことで、住民の安全と日常生活を守る狙いがあります。
数字で見る中国の都市更新
中国では、2015年の中央都市工作会議を受けて、都市計画や建設管理の強化、都市更新キャンペーンの推進など、都市発展の方向性を示すさまざまな政策が打ち出されてきました。
2019年以降だけを見ても、都市更新のスケールは大きく広がっています。
- 改修された旧住宅コミュニティは全国で約二十八万か所に達し、約一億二千万人が恩恵を受けました。
- 十三万基を超えるエレベーターが新設され、約三百八十万台分の駐車スペースが追加されました。
- 文化・レジャー・スポーツ・フィットネスのための新しい施設面積は、合計で約三千百万平方メートルに達しました。
- 緑地と公共空間の整備も進み、都市グリーンウェイは全国で十二万七千八百キロメートル、ポケットパークと呼ばれる小規模な公園は四万八千か所が整備されています。
こうした取り組みにより、人びとの獲得感や幸福感、安全感の向上が図られているとされています。
これからの都市を考える視点
上海をはじめとする中国の都市づくりは、経済成長だけでなく、生活の質や安全、環境への配慮を同時に実現しようとする試みとして注目されます。人中心の視点から都市を設計し直すことは、超高層ビルや大型開発よりも、日々の暮らしをどう支えるかという問いに向き合うことでもあります。
デジタル技術を都市の隅々まで行き渡らせつつ、それを誰もが使えるかたちにすること。老朽住宅の改修や小さな公園の整備を通じて、身近な環境を少しずつ良くしていくこと。こうした積み重ねが、都市に暮らす人びとの安心感や豊かさにつながっていきます。
各国の大都市が似た課題に直面するなか、中国の人中心の都市更新の動きは、これからの都市は何を優先すべきかを考えるヒントにもなりそうです。
Reference(s):
China prioritizes high-quality, people-centered urban development
cgtn.com








