世界の屋根に新望遠鏡 中国・Xizangでビッグバン最古のさざ波探し
世界の屋根に開いた「宇宙の眼」
標高5,250メートル。世界の屋根とも呼ばれる中国南西部のXizang自治区の尾根に、新しい宇宙望遠鏡が姿を現しました。ビッグバン直後の「宇宙最古のさざ波」をとらえようとするこの望遠鏡は、宇宙がまだ「赤ちゃん」だった時代をのぞき込む新しい眼として、2025年現在、本格的な観測を始めています。
ビッグバンの「最古のさざ波」とは何か
ニュースのキーワードとなっているのが、ビッグバンの「最古のさざ波」です。ここで言うさざ波とは、宇宙が生まれた直後に残された、ごくわずかな温度や密度のゆらぎを指します。これは、ビッグバンで一気に膨張した宇宙の名残であり、現在でも宇宙空間全体を満たしていると考えられている微弱な信号です。
こうした信号を詳しく観測することで、次のような疑問に迫ることができます。
- 宇宙が生まれた直後、どのような状態だったのか
- 銀河や星がどのようにして生まれていったのか
- 宇宙に存在する物質やエネルギーの内訳はどうなっているのか
私たちが夜空に見ている星々よりも、はるかに昔の「宇宙の記憶」を読み解くのが、この観測計画のねらいです。
なぜXizangの標高5,250メートルなのか
今回の望遠鏡が設置されたのは、中国南西部のXizang自治区の高地にある標高5,250メートルの尾根です。世界でも有数の高所にあたるこの場所が選ばれたのには、はっきりとした理由があります。
- 空気が薄く、乾燥している:大気中の水蒸気が少ないため、宇宙から来る微弱な信号が地上に届きやすくなります。
- 大気の揺らぎが少ない:空気の層が薄いことで、星や宇宙背景からの信号が大気によって乱されにくくなります。
- 光害が少ない:都市部から遠く離れた山岳地帯のため、地上の人工的な光に邪魔されにくい環境です。
宇宙からのかすかな「ささやき」を聞き取るためには、雑音の少ない静かな場所が必要です。Xizangの高地は、その条件を満たす「天然の観測室」と言えます。
新望遠鏡が目指す科学的なゴール
この「世界の屋根」に設置された望遠鏡は、宇宙の中でも特に古く弱い信号を狙っています。具体的には、次のようなテーマが期待されています。
- 宇宙誕生直後の物理法則の手がかり:ビッグバン直後に宇宙がどのように膨張したのかを探ることで、自然界の基本法則の理解が深まる可能性があります。
- 宇宙の「ゆらぎ」から構造形成を読み解く:初期の小さなゆらぎが、のちの銀河や銀河団のもとになったと考えられています。その起源をたどることで、宇宙の大きな構造がどのように生まれたかを説明しやすくなります。
- 未知の成分の存在を探る:観測結果によっては、暗黒物質や暗黒エネルギーと呼ばれる、まだ正体がよくわかっていない成分についての手がかりが得られる可能性もあります。
いずれもすぐに答えが出るテーマではありませんが、長期的な観測を積み重ねることで、少しずつ謎が解きほぐされていくことが期待されています。
アジア発の宇宙観測が広げる視野
今回の望遠鏡は、中国南西部のXizang自治区という、地理的にも象徴的にも「世界の屋根」とされる場所に設置されました。こうした高精度の宇宙観測がアジアの山岳地域で行われることは、国際的な宇宙研究の地理的な広がりという点でも意味があります。
宇宙観測は、一つの国だけで完結するものではなく、世界各地の観測所が補い合うことで全体像が見えてきます。空の条件や観測できる時間帯、観測対象などが場所によって異なるからです。Xizangの高地に新しい拠点が加わることで、地球規模で宇宙を見つめるネットワークがさらに厚みを増すことになります。
私たちの日常と「宇宙最古のさざ波」
ビッグバンの最古のさざ波と聞くと、「スケールが大きすぎて、自分の生活とは関係がなさそう」と感じるかもしれません。しかし、こうした基礎研究は、長い目で見ると、社会や技術のあり方にも静かに影響を与えてきました。
- 精密な測定技術やセンサー技術が、医療や通信、気象観測などに応用される
- 膨大な観測データを処理するための計算技術が、さまざまな産業で活用される
- 宇宙の起源をめぐる物語が、教育や文化の中で共有され、新しい問いを生み出す
「自分たちはどこから来て、どこへ向かっているのか」という根源的な問いは、国や世代を超えて共有されるテーマです。世界の屋根に開いた新しい「宇宙の眼」は、そうした問いに少しずつ光を当てる試みでもあります。
これからの観測に注目したいポイント
今回の望遠鏡は、ビッグバンの最古のさざ波を追いながら、今後、長期にわたって膨大なデータを集めていくとみられます。今後注目したいのは、次のような点です。
- どの程度の精度で、宇宙初期のゆらぎを描き出せるのか
- 他地域の観測結果と組み合わせることで、どのような新しい宇宙像が見えてくるのか
- 国際的な研究協力やデータ共有がどのように進んでいくのか
スマートフォン一つで世界中のニュースにアクセスできる今だからこそ、地球の遥か上空、そして時間的にも遥か昔の宇宙に向けられた視線に、少し意識を向けてみる価値がありそうです。
Reference(s):
Telescope on world's roof starts hunt for Big Bang's oldest ripples
cgtn.com








