中国本土で安全事故と自然災害が減少 2025年第3四半期リスクは?
2025年上半期、中国本土では安全事故と自然災害の双方で被害が明確に減少しました。一方で、中国の応急管理部(Ministry of Emergency Management, MEM)は、第3四半期に向けて事故と災害リスクの高まりに警戒を強めており、今年の中国本土の安全状況は「前進と課題」が同時に見える形となっています。
2025年上半期:安全事故は「量も被害も」減少
MEMの最新報告によると、2025年上半期の中国本土における工業分野の事故件数は8,562件で、前年同期比22.9%の減少となりました。事故による死亡者数も17.8%減少し、8,079人と報告されています。
このうち、規模の大きな事故として位置づけられるものが4件、大型事故が172件発生しており、依然として重大なリスクは残るものの、全体としては安全対策の強化が数字に表れた形です。
高リスク産業に残る「古いリスク」
事故全体が減少する一方で、特定の高リスク産業では、長年指摘されてきたリスクが依然として重大事故につながっています。報告書では、次のような課題が挙げられています。
- 火災リスク:ショッピングモールなど人が密集する商業施設で大規模火災が発生し、避難経路や防火基準の徹底が改めて問われています。
- 交通・輸送:内陸河川での船舶事故に加え、トラックや農業用車両による違法な旅客輸送が重大事故の要因となっています。
- 化学・花火産業:化学工場や花火関連施設での爆発事故が続いており、危険物の違法製造や不適切な管理が安全上の大きな課題とされています。
- 建設・鉱山:国有企業が関わる建設現場での崩落や転落などの事故が複数発生しているほか、鉱山分野では違法採掘がなおも事故多発の背景にあります。
- 製造業:密閉空間での作業事故や、粉じん爆発などのリスクが再び増加傾向にあると指摘されています。
こうした状況から、安全対策のルールや法令が整備されても、現場レベルでの徹底や、長年の慣行を変えていくことが、今後の焦点になっていることがうかがえます。
自然災害:被害は縮小も、局地的には深刻
自然災害についても、2025年上半期の中国本土では、全体としての被害は縮小傾向にありました。一方で、地域や災害の種類によっては大きな被害が生じています。国家レベルの防災機関であるNational Disaster Reduction and Relief Committee(国家減災・救援委員会)によると、地震、洪水、地質災害などが各地で発生しました。
地震:Xizangでマグニチュード6.8
1月初旬、中国西部のXizang地域でマグニチュード6.8の地震が発生し、大きな被害をもたらしました。ただし、2月から6月にかけての地震活動は、歴史的な平均水準と比べると比較的落ち着いていたとされています。
洪水と干ばつ:南部の洪水と各地の渇水
洪水被害全体は比較的軽微だった一方で、南部の地域では激しい降雨に伴う深刻な洪水が発生しました。また、北部と南部の一部地域では干ばつに見舞われましたが、報告によれば、その後は徐々に緩和しつつあります。
地質災害:四川・貴州で土砂災害が多発
中国南西部の四川省と貴州省では、土砂崩れや地滑りといった地質災害が多発し、人命と財産に大きな損失をもたらしました。地形条件や豪雨が重なるこれらの地域では、引き続き土砂災害への備えが重要とされています。
森林火災と低温災害
森林火災については、散発的な発生にとどまり、大規模な草原火災は報告されていません。また、今年の雪害や寒波の強さは、過去の年に比べて明らかに低かったとされています。
総じて、さまざまな自然災害により2,500万人以上が影響を受け、307人が死亡、6万2,000人が安全な場所へ避難しました。経済的損失は541.1億元(約75億ドル)に達したと報告されています。
第3四半期:なぜ事故と災害のリスクが高まるのか
MEMは、毎年の中でも第3四半期(7〜9月)を「重大事故と自然災害が発生しやすい時期」と位置づけており、2025年についてもこの期間のリスクに特に注意を払う姿勢を示しました。
National Flood Control and Drought Relief Headquarters(国家洪水・干ばつ防止総指揮本部)の副局長であり、MEMの防汛・抗旱部門の責任者でもあるXu Xianbiao氏は、記者説明会で、全体として洪水状況が比較的安定しているものの、これからが気象監視と災害対応において最も重要な局面だと説明しました。
中国本土では、7〜8月の洪水シーズンにかけて、集中的な大雨や台風、猛暑が重なりやすく、それが事故や自然災害のリスクを押し上げます。特に南部および北部の地域で、豪雨や洪水、台風に伴う被害リスクが高まると分析されています。
- 極端な気象現象:集中豪雨、台風、猛暑が同時期に発生し、河川の増水や土砂災害、インフラへの負荷が増大する。
- 地域ごとの洪水リスク:南部の水害リスクに加え、北部でも局地的な豪雨が予想され、広い範囲で警戒が必要となる。
- 人の移動と経済活動の集中:夏の旅行シーズンと生産活動のピークが重なり、交通、宿泊、観光など人が集まる分野で事故リスクが高まりやすい。
こうした背景から、中国の中央および地方当局は、第3四半期に向けて監視体制や緊急対応の強化を進めているとされています。
数字が示すもの:安全対策の成果と次の課題
2025年上半期の統計を見ると、中国本土では安全事故と自然災害の双方で被害が明確に減少しており、安全対策や防災政策の成果が表れているといえます。一方で、火災、輸送、化学、花火、建設、鉱山、製造業といった高リスク分野では、長年指摘されてきたリスクが依然として事故につながっていることも浮かび上がりました。
今回の報告から、次のような論点が見えてきます。
- 統計に表れた安全対策の効果
事故件数や死亡者数の減少は、ルール整備や監督強化が一定の成果を上げていることを示しています。ただし、数字が改善したからこそ、監視や取り締まりを緩めず継続することが求められます。 - 高リスク産業での構造的な課題
火災、化学・花火産業、違法な旅客輸送、違法採掘など、長年の慣行やビジネスモデルに根ざしたリスクは、法令だけでなく、現場の安全文化や企業経営のあり方と一体で見直していく必要があります。 - 地域差の大きい自然災害への備え
地震、洪水、地質災害などは地域ごとにリスクが異なります。早期警戒システム、避難計画、インフラ整備などを通じて、地域間の防災力の差を縮めていくことが、中長期の課題として浮かび上がっています。
2025年の中国本土の安全事故と自然災害の状況は、被害の縮小という明るい兆しと、依然として残るハイリスク分野・季節要因の両方を映し出しています。日本を含むアジアの国と地域にとっても、こうした国際ニュースをフォローすることは、気候変動時代のリスク管理や防災を考えるうえで、多くの示唆を与えてくれます。
Reference(s):
Report: China sees higher risks of disasters in 3rd quarter of 2025
cgtn.com








