中国が知財協力を80超の国・地域に拡大 AI審査と特許産業化が進展
中国が知的財産を軸にした国際協力を一段と広げています。第14次五カ年計画期(2021〜2025年)の取り組みとして、80を超える国や地域とパートナーシップを築き、AIを活用した特許審査や特許の産業化も加速しています。本記事では、その全体像と国際ビジネスへの意味を整理します。
80超の国・地域と知財パートナーシップ
中国国家知識産権局の申長雨局長は、木曜日の記者会見で、中国が知的財産分野で80以上の国や地域と協力パートナーシップを構築したと明らかにしました。知的財産(IP)協力は、次のような幅広い相手と強化されています。
- 米国や欧州連合(EU)
- 日本や韓国
- BRICSメンバー国
- ASEAN諸国
- 中央アジア諸国やアフリカ諸国
こうしたネットワークが、高水準の対外開放を支える基盤となっていると説明されています。技術やブランドを海外とやりとりする際には、特許や商標、意匠の保護が欠かせません。そのルールづくりに積極的に関与していることが、今回の発表から見えてきます。
グローバルな知財ルールづくりで存在感
国際ニュースの視点で見ると、中国は知的財産をめぐる国際ルール形成の場面でも存在感を高めています。第14次五カ年計画期の主な動きとして、次のようなポイントが挙げられました。
- 2021年 中国とEUが地理的表示の保護と協力に関する協定に署名し、対象となる産品の相互認定と保護を実現
- 2022年 工業意匠(デザイン)登録を扱うハーグ協定に加盟し、世界的なデザイン保護の枠組みに参加
- 世界知的所有権機関(WIPO)における、知的財産と遺伝資源、関連する伝統的知識を扱う条約の取りまとめを推進
- リヤド・デザイン法条約の締結に向けた取り組みにも参加
2024年には、WIPOが公表するグローバル・イノベーション指数で世界11位となり、上位100の科学技術クラスターのうち26が中国関連のクラスターだったとされています。イノベーションの「量」だけでなく、「質」や国際的な評価でも存在感を強めていることがうかがえます。
特許を数字から産業の力へ 進む「特許の産業化」
特許は出願件数だけでは意味がなく、どれだけ事業や産業に結びつくかが重要です。今回の説明では、中国が特許の実用化と産業化を重視している様子が具体的な数字で示されました。
- 企業の発明特許の産業化率は、2020年の44.9%から2024年には53.3%へ上昇
- 特許集約型産業の付加価値は、GDPに占める割合が2020年の11.97%から2023年には13.04%に拡大
さらに、次のような先端分野で多数の中核技術特許が生まれているとされています。
- 人工知能(AI)
- 情報通信
- 新エネルギー車
- 量子技術
- バイオ医薬
- 太陽光発電(光伏)
これらの分野は、エネルギー転換やデジタル化、医療、次世代モビリティなど、各国が成長戦略の中心に据える領域です。知的財産を通じて、科学技術の自立と、新たな生産力の育成を支えているという位置づけが強調されています。
また、6月時点で有効な国内の発明特許数は501万件に達し、前年同期比で13.2%増となりました。1万人当たりの高価値発明特許数は15.3件と、第14次五カ年計画で掲げられていた目標値12件を上回っています。
AIが支える特許審査 人と機械の役割分担
知財制度の実効性を高めるうえで、特許審査のスピードと質は重要な要素です。中国では、AIを活用した特許審査の高度化も進んでいます。
2023年1月に、新しい審査システムが正式に稼働しました。このシステムには、次のような機能が組み込まれています。
- オンライン翻訳
- 画像認識
- 知財文書などの知的財産情報の自動比較(インテリジェント比較)
これらのツールにより、審査官の反復的な作業が減り、より専門的な判断に時間を振り向けられるようになったと説明されています。結果として、審査の質と効率の双方を高めることが狙いです。
さらに、大規模言語モデルと呼ばれるAIは、審査プロセスのさまざまな場面で活用が進んでいます。
- 関連する特許の検索
- 技術的な概念の理解支援
- 法的な適用関係の整理
一方で、申長雨局長は、AIはあくまで補助ツールであり、AIが出した推論結果をそのまま審査意見として用いることはできないと明確にしています。最終的な判断は人が行うという前提を維持しつつ、AIの利点を取り入れる姿勢が示されました。
国際ビジネスと日本への示唆
知的財産とイノベーションをめぐる中国の動きは、海外企業や投資家にとっても無関係ではありません。80以上の国や地域との協力枠組みや、国際条約への積極的な参加は、国境をまたぐビジネスのルールづくりとも直結します。
日本企業にとっては、次のような視点が重要になりそうです。
- 中国市場での特許や商標の保護戦略を、最新の制度や協定に合わせてアップデートすること
- AI、量子技術、新エネルギー車など、成長分野での共同研究や技術提携の場をどう位置づけるか
- AIを活用した審査や検索の環境変化を踏まえ、自社の出願戦略やポートフォリオの組み方を見直すこと
知的財産は、単なる法律や手続きの話ではなく、企業や国家の競争力を左右するインフラになりつつあります。今回示された中国の動きは、アジアや世界のイノベーション地図がどのように変わっていくのかを考えるうえで、一つの重要なヒントと言えるでしょう。
これから何が問われるのか
第14次五カ年計画の終盤を迎えるなかで、今後は次の点が一層注目されそうです。
- 国際協力の枠組みが、具体的な技術交流や産業プロジェクトにどこまで結びついていくか
- AIを活用しつつ、審査の公正さや透明性をどう確保していくか
- 特許の「数」だけでなく、産業や社会にもたらす「質的な効果」をどう測っていくか
ニュースを追う私たちにとっても、知的財産は少しとっつきにくいテーマかもしれません。しかし、スマートフォンから電気自動車、医薬品、コンテンツまで、日々使っている多くのものが特許やブランドのルールの上に成り立っています。今回の動きをきっかけに、アジアと世界のイノベーションの行方を、自分なりの視点で考えてみるタイミングと言えそうです。
Reference(s):
cgtn.com








