石と海が語る600年 中国・浙江「石塘」の石造漁村を歩く
中国浙江省の海辺の町・石塘(したん)には、600年以上前から続く石造りの家々が並び、「中国のノートルダム」とも呼ばれてきました。国際ニュースを日本語で読む読者にとっても、海とともに生きてきたこの町の物語は、今の暮らしを考えるヒントになります。
海と石がつくった「中国のノートルダム」
石塘は、中国東部・浙江省にある漁村です。ここでは、福建から移住してきた漁民たちが、600年以上前から地元で取れる石を積み上げ、台風や海賊に耐えられる家を築いてきました。
石の家々は山の斜面に沿って立ち並び、「家が山を抱き、山が家を抱く」ような独特の景観を生み出しています。この姿から、石塘は「中国のノートルダム」とも呼ばれ、その風景そのものが一つの巨大な建築作品のようだと評されてきました。
台風と海に向き合う、石の建築デザイン
石塘の家々の特徴は、その厚い石壁です。壁の厚さはおよそ60センチとされ、外から見るとどっしりとした安定感があります。
- 台風の強い風や飛来物から家を守る
- 潮風や湿気から内部を守る
- 夏は涼しく、冬は冷えをやわらげる
こうした実用的な理由から、石を積み上げた家が生まれました。石段を一段ずつ上がるたびに、長い年月の重みと、海と向き合ってきた人びとの暮らしが静かに伝わってきます。
「石と海の対話」という風景
石塘を象徴する表現として、「古くから続く石と海の対話」という言葉があります。すべての石の階段や石壁が、台風の夜、穏やかな朝、出漁と帰港の瞬間を何度も見てきました。
人びとは海の恵みを受け取りつつ、ときに厳しい自然の力にさらされます。その中で、石の家は海と人をつなぐ「通訳」のような存在として、600年以上にわたる歴史を静かに記憶してきたとも言えるでしょう。
山と家が抱き合う集落のかたち
石塘の風景を一言で表すなら、「家が山を抱き、山が家を抱く」集落です。急な斜面に沿って石造りの家が重なるように並び、その背後には山がそびえ、前には海が広がります。
この地形は、いくつかの意味を持ちます。
- 山が強い季節風をさえぎり、家を守る
- 高台に家を建てることで、高潮や波から距離をとる
- 斜面を利用して、狭い土地でも多くの家が建てられる
自然の地形と石造建築が組み合わさることで、石塘ならではの「抱き合う」風景が生まれたと考えられます。
古い漁村が投げかける、2025年への問い
急速な都市化が進む東アジアの沿岸部において、600年以上の歴史を持つ石造の漁村が今も語りかけてくるものは何でしょうか。
- 気候変動で台風が強大化するなか、自然と共存する住まいとは何か
- 移住してきた漁民が築いた町の記憶を、どのように未来へつなぐのか
- 観光や開発と、生活の場としての静けさをどう両立させるのか
石塘の石の階段は、単なる「古い建物」ではなく、人びとが何世代にもわたって海と向き合い、暮らし方を工夫してきた歴史そのものです。石と海が続けてきた静かな対話に耳を澄ませることは、海に囲まれた日本に暮らす私たちにとっても、自分たちの町や海との付き合い方を見直すきっかけになるかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








