海南自由貿易港、12月18日に島全体で独立通関へ
海南自由貿易港(Hainan Free Trade Port、以下 海南FTP)が2025年12月18日に島全体で独立通関を開始します。中国のより高い水準の対外開放を象徴するこの動きは、世界の貿易と投資の流れにどんな変化をもたらすのでしょうか。
12月18日、海南島で始まる「島全体の独立通関」とは
中国国務院新聞弁公室が水曜日に開いた記者会見によりますと、海南FTPは今月18日から島全域で独立通関体制を本格的に稼働させます。これは、中国が掲げる高水準の対外開放に向けた重要な節目と位置づけられています。
今回の独立通関に合わせて、貿易と税制の大幅な自由化策が導入され、海南島への投資促進、貿易拡大、産業発展を後押しすることが狙いとされています。南国リゾートとして知られる海南島が、今後は国際ビジネスの拠点としての顔も強めていく可能性があります。
「第一線の自由化、第二線の管理、島内の自由」という設計
シンガポール国立大学東アジア研究所の上級研究員であるユー・ホン氏は、中国の英語メディアCGTNのインタビューで、海南FTPの独立通関の核心は「第一線の自由化、第二線の管理、島内の自由」という設計にあると説明しています。
第一線(海外と海南): 関税ゼロと出入境の円滑化
第一線とは、海外と海南島の間のラインを指します。海外から海南に入る貨物は、ネガティブリストに載る品目を除き、関税が免除されます。また、越境投資や人の往来も大きく円滑化される方向です。
第二線(海南と中国本土): 管理を通じたセーフティーネット
第二線は、海南と中国本土の間のラインです。海南から中国本土に向かう貨物は、原則として輸入品として課税されますが、島内での加工価値が30%を超える貨物については関税免除の扱いが認められます。これは、海南島内で付加価値を生み出す生産活動を促す設計といえます。
島内の自由: モノ・カネ・ヒトが自由に動く空間へ
海南島の内部では、貨物・資本・人の移動は、追加的な制限なしに自由な流れを実現することが構想されています。これにより、島内全体が一体となった経済圏として機能しやすくなります。
ハードだけでなく「ソフト」の接続がカギに
ユー氏は、独立通関の実現には港湾や物流といったハード面の整備だけでなく、制度やデータを含むソフト面の接続がより重要だと指摘します。
具体的には、次のような分野で監督・規制の仕組みを再設計し、連携させる必要があります。
- 通関手続きの簡素化と高度化
- 検査・検疫の効率化
- 税務・課税プロセスの整備
- 出入境審査と許可の円滑化
- 金融監督と資本移動ルールの整備
- データ管理と越境データの取り扱い
こうした分野での制度連携があって初めて、第一線での自由化と第二線での管理、島内の自由な経済活動が矛盾なく機能することになります。
2018年以降の制度イノベーションと法整備
2018年以降、海南の地方当局は、中国中央政府と関係する中央の部門の支援を受けながら、独立通関に向けた制度イノベーションを積み重ねてきました。
その代表的な動きとして、全国人民代表大会が海南自由貿易港法を制定・施行し、海南の地方当局に自由貿易港の発展を推進するためのより大きな裁量を与えたことが挙げられます。
また、通関のスマート監督を実現するため、ビッグデータやブロックチェーン技術を活用し、貨物の流れを全体として追跡できる仕組みの整備が進められています。あわせて、ビザなしで海南に入域できる国や地域のリストも拡大されてきました。
ゼロ関税とネガティブリスト管理の導入
海南FTPでは、ゼロ関税政策の運用方法にも大きな変化が予定されています。これまではゼロ関税の対象となる品目を列挙するポジティブリスト方式でしたが、今後は輸入時に課税される品目をまとめたリストを作成し、それ以外を原則ゼロ関税とするネガティブリスト方式に移行します。
この新しい考え方のもとで、海南自由貿易港輸出入禁止・制限品目リスト(英語名: List of Prohibited and Restricted Import and Export Goods and Items of Hainan FTP)が公表されています。これにより、どの品目が制限・課税の対象となるかが明確になり、企業にとって制度の予見可能性が高まることが期待されます。
開放とリスク管理のバランスをどう取るか
海南FTPの独立通関は、開放とリスク管理の両立を意識した制度設計になっています。第一線では関税免除や出入境の円滑化を進めつつ、第二線での管理を通じて中国本土側の金融・税制・産業政策との整合性を保つ形です。
さらに、ビッグデータやブロックチェーンによる全件追跡と、関係部門間の情報連携を組み合わせることで、通関を迅速化しながら、不正やリスクを可視化していくアプローチが取られています。ユー氏は、こうした制度設計こそが独立通関の実効性を支えると強調しています。
世界貿易への統合を深める「ゲートウェー」として
ユー氏は、海南FTPの発展は、海南が世界の貿易・経済システムにより深く組み込まれていくことにつながり、中国が国内市場を世界に開いていくという強い意志を具体的な行動で示すものだと述べています。
そのうえで、海南には、この対外開放のための重要なゲートウェーとなる潜在力があると指摘します。ゼロ関税と高度な通関システム、ビザ緩和、透明性と公平性を重視したビジネス環境づくりが組み合わさることで、高品質な国際企業を引きつけることを目指しているからです。
日本やアジアの読者が押さえておきたい視点
今回の独立通関開始に向けた動きから、日本やアジアの企業・読者が意識しておきたいポイントを整理すると、次のようになります。
- ゼロ関税とネガティブリストを通じた貿易・投資の新しい枠組み
- ビザなし入域の拡大など、人の往来を促す制度整備
- ビッグデータやブロックチェーンを用いたスマート通関の実験場としての側面
12月18日に島全体での独立通関が始まった後、海南FTPがどのようなスピードで世界の貿易と投資のハブとして存在感を高めていくのか。アジアの一員として、その動きを継続的にフォローしていく価値がありそうです。
Reference(s):
Expert insight: Hainan FTP to boost deeper global trade integration
cgtn.com








